□ 99_before "July" @the 2nd year □


 自分には必要ないと思ってた。
 仲良さげなカップル。家族連れの笑い声。夜、帰る家には灯りが点いていて、待っててくれるひとがいて。
 通り過ぎていくそれらに興味すら持てずにいたのは、そんなものは俺には無縁だし、たとえ望んでも決して手が届かないって分かっていたから。
 25年間、そうやって生きてきた。それでいいと思ってた。
 ぬくもりを知るまでは。


 墜ちていく。
 息ができなくてもがく。
 思わず伸ばした腕を掴まれて、しっかりと抱きとめられる。
 唇が合わさる。
 その背中に手を回して、体温を確かめる。
 身体が芯から融けていく。
 熱くて、甘くて、苦しくて、指先が痺れる。
 耳元で俺の名を呼ぶ声が聞こえる。
 強くて激しくて、でも涙が出そうなくらい優しくて。
 もう一度、俺はしがみつく。
 溺れている俺を、繋ぎとめていてくれる腕に。
「ひばり…」
 何度も何度も呼ばれる。そのたびに俺は、終わりのない波の音を聞いている気持ちになる。


 俺をこんなふうにした責任、最後まで取れよな。
 もう、以前の俺には戻れない。





to be continue…

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