■ the 5th session ■ (2)


 そのままベッドに里崎を誘導して、勢いで押し倒す。早くその身体に触れたくて気が急いた。
 里崎はちょっと意外そうに、でもまったく抗うことはなく、ベッドに横たわっている。俺はその眼鏡だけ外して、ヘッドボードに置いた。その体勢から口唇を寄せる。
「…ん…」
 小さく身動いで、里崎は口唇を開く。ゆっくり舐めてから、その口の中に舌を差し込むと、里崎は甘えるようにちゅっと吸い付いた。そんないちいちが可愛くて、俺は夢中で貪り、同時にシャツの裾から手のひらをすべり込ませる。痩せて骨ばった脇腹から、背中も、胸も、その感触をじっくり味わうようにさする。
 自分も腹の下が熱くなっていくのを感じて、のし掛かったまま下半身を密着させると、お互いの硬くなった部分が布越しにこすれ合った。
「…当たってる…」
 わずかに口唇を離して、里崎がささやく。
「わざとに決まってるでしょ。」
 言いながら、さらに腰を押し付けると、里崎は小さく声を上げた。だけど、その両腕はしっかりと俺の腰に巻き付いている。そして、自分からもなまめかしく腰を揺らした。
「…やらし…」
 耳元にささやくと、里崎はいたずらを咎められた子どものようにぷいっと顔を背けた。
「江利さんだって…」
 不満そうに言う里崎に、
「だって、おまえが可愛いから。」
 さっきまでよりもっと腰を押し付ける。里崎はまたかすかな声を上げた。
 シャツを胸元までめくり上げて、ぷつんと飛び出ている突起を爪で弾く。また里崎は小さく叫んで身体をよじった。
「逃げんなよ。」
 押し込むように突起をこする。腰を揺らしながら、耳たぶに歯を立てる。
「…ん…あ…ぁ…」
「すっごい勃ってんだけど、大丈夫か、おまえ。」
 からかうように言うと、里崎はギリッと俺をにらんで、
「ふざけんなよ…」
と、怒ったようにつぶやいた。
「誰のせいだと思ってんだよ。」
「俺に決まってるじゃん。」
 腰を揺らすのを止めることができない。
「でも、それって、おまえが可愛いせいだから、自業自得だな。」
「…バカじゃねえの?」
 呆れ声で言う里崎にやんわり笑い掛けて、
「それより、俺もう我慢できないんだけど。」
とささやくと、少し間をおいて、里崎もうなづいて応えた。

 お互いの服を脱がせて、身体中を触り合った。手のひらで、口唇で、腕や脚や腹、全身を使って、身体の表面の触ってない場所はないくらい。
 でも、里崎の口唇が、昂った俺のそこを包んだとき、俺はあわてて腰を引いた。
「ダメ?」
 けげんそうに、里崎が訊く。
「すぐイきそうだから。」
 うわずった声が出てしまった。里崎は含み笑いすると、
「俺の中でイきたい?」
と訊いてきた。
「うん。」
「挿れたい?」
「…今すぐにでも。」
「俺が欲しいの?」
「当たり前だろ!」
 俺は力づくで里崎の肩を押して、その上に覆い被さった。額をくっつけて、じっとその目をのぞき込むと、里崎は潤んだ瞳で俺を見つめ返した。
「欲しいよ。おまえの中に挿入って、めちゃくちゃにしたい。」
 そう言うと、里崎は俺の首に腕を回してきゅっと締めた。
「もっと、言ってほしい。」
「…なに…?」
「俺が欲しいって。」
 その声は泣きそうにかすれていた。瞬間、愛おしいと思う気持ちと、こんなにいじらしい里崎をうんと甘やかして、どろどろに溶かしたい欲望が際限なくわき上がった。
 俺はその背中をぎゅうっと抱きしめて、耳元に口づけた。
「やめてくれって言われても、もう止めらんないよ?ホントにもう、我慢の限界なんだから。全部、俺のものにするって決めたから。」
「江利さんの…?」
「そうだよ、裕真。」
 甘い吐息を口唇でふさいで、背中から滑らせた指で、俺は里崎の後ろを探り始めた…。

 それ専用の用意がなかったので、ハンドクリームを使って、ゆっくり、たっぷり、里崎の中をほぐしていく。ゆるく開いた内腿が、俺の指の動きに、ぴくん、とひきつるように震える。俺が、こいつをこんなにしてるんだ…という征服欲が満たされていく高揚感に、我を忘れそうになる。
「もう、挿れるよ?」
 顔を上げると、里崎はそっぽを向いたまま小さくうなづいた。
 俺の、限界まで張りつめた場所をそっとあてがって、ゆっくり腰を進める。里崎は苦しそうにうめきながらも、俺をすべて受け入れた。
 そのまましばらく、中が慣れるのを待つ。きつく包まれて、頭がおかしくなりそうだった。
「動いても大丈夫か?」
 俺の声に、里崎はまたうなづいて応えた。しどけなく開いた口元に、理性が焼き切れた。深くしたり、浅くしたりしながら、俺は里崎の中を突き立て続けた。身体の内側も外側もびくびくと震わせて、俺を離そうとしない。ふたりの腹の間に挟まれた里崎のそれも、とろとろと濡れていて目を奪われる。
 と、
「…江利さん…」
 突然、里崎は俺を呼び止めた。動きを止めて顔をのぞき込むと、すがるように俺を見上げたその顔がくしゃりと歪んだ。
「…あんま、見ないで…」
 里崎は両腕で自分の顔を覆い隠した。
「…他の、誰かと、比べないで…」
 泣くのをこらえているような震えた声に、俺は胸の底をぎゅっと掴まれたような気がした。
「比べてないよ。」
 里崎の頭をきゅっと抱きしめて、
「比べられるわけない。こんなに可愛い奴、どこにもいねえもん。」
 耳元で何度もささやく。すきだよ。裕真がだいすきだよ。ずっとずっと、一緒に暮らそう。
 ちょっと驚いた顔になった里崎は、だけど、目を伏せた拍子に涙をぽろっとこぼした。その雫を舌先ですくって、俺はさっきより激しい律動を始めていた。
 もう、俺だけでいいじゃん。絶対、大事にするから。
 切れ切れに聞こえる甘い息が俺をどんどん昂らせていく。何度も何度も愛しいその名を呼びながら、俺は達した。
 弾んだ息のまま、ぎゅうっと里崎を抱きしめたら、ふたりの腹が里崎の放ったもので濡れているのに気付いて、俺は改めて抱いた腕に力を込めた。


 こうして、なんだかんだありつつも、今も俺はこの家で里崎と暮らしている。
 もう少ししたら新しい店子を入れたいな、と思ってはいるけど、今はふたりで暮らしたい。
「新婚気分だよ。」
と里崎に言うと、あからさまに呆れ返った顔をして、でも、ぷっと吹き出して、
「なに言ってんだよ。」
と笑い返してくれる。
 そんな小さな積み重ねが俺の幸せなんだな、と改めて胸に落ちて、俺は里崎を力任せに抱きしめた。


■了■



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