□ in early days / HIBARI age17 □
どうせこんなもんだと思えばガッカリもしない。
17歳の俺が体得した処世術は、同じ年頃の高校生に比べれば醒めたものだったのかもしれない。
重浦は、生活では俺に不自由をさせなかった。
昼間はゆっくり起きて、部屋でのんびりしたりたまには買い物や遊びに出掛けたり、すき勝手に過ごした。そして、夜の闇が深くなるのに比例して繁華街の灯が眩しくなるころ、俺は客を取らされた。
多分、外が明るいうちはそこそこ名のある会社でそこそこな仕事をしているだろう、いい歳した恰幅のいい男たち。それが、夜も深い時間には年端もいかねえガキ相手に狂態を演じてる。マジでバカなんじゃねえの。
けど、そこから金を搾り取ってるこっちもご同類だ。
そんなこんなで世の中は廻ってる。
どうせそんなもんなんだよ。
仕事から戻ると、重浦は必ず俺の身体を点検した。
殴られたり傷を付けられたりしてないか。注射痕なんかはないか。一通り調べ終わると、次は、どんなことをされたか、何を話したかをこと細かに訊いてきた。
俺は奴の商売道具だからな。商品価値を維持したいんだろう。ちゃんと手入れすれば長持ちするし。
そんなあるときのこと。
「今日の客って、先週もやった客だっただろ、よくそんな金が自由になるなって訊いたら、なんか客の金がどーとか言ってたぜ。あのジジイ、ヤバいんじゃねえの。」
ふと洩らした俺の言葉に、重浦は一瞬動きを止めると、真顔になって俺を凝視した。
「あ?なんだよ。」
「おまえ…そうか、そんなこと言ってたか、あの野郎。」
そして、口元だけでニヤッと笑うと、急に俺の肩を引き寄せて耳元でささやいた。
「よくやった。今からうんと可愛がってやる。」
「いらねえよ。」
手のひらで重浦の頬を押し返そうとしたけど、奴は強引に俺をベッドに押し倒した。
「マジかよ、俺、疲れてんだけど?」
「いいから黙って転がってろ。」
重浦は慣れた手順で俺の身体を愛撫する。分かってるけど、分かってるから、重浦にされるのは気が楽でもある。
別に、なにも感じない。触られれば身体は反応するし、射精すればキモチよくスッキリするけど、それだけ。だから何?って感じ。
俺がイッて、重浦もイッて、ベッドに仰向けのままホッとひと息ついたところで、重浦は言った。
「おまえ、客と寝るとき、相手が何を喋ったか全部覚えてこい。」
「は?全部って?」
「メシの種が増えたってことだよ。」
天井を見ながら重浦は続けた。
「今日の野郎は、客の金を横領してるって言ったんだろ?」
「…ゆすりかよ…」
「だってこんなおいしいネタ、放っとけねえだろ。」
「訴えられんじゃねえの。」
「は?未成年の男を買春してゆすられましたってか?」
重浦の意図するところが解かって、俺は溜息を吐いた。
「ったく、テメーはなんでもソレだな…」
「他になにがあんだよ。世の中そんなもんだよ。」
「…だよな。」
何故そこで確信を持ってしまったのか。でもそれが、そのときの俺そのものを表していたんだろうと思う。
…そこから3年… 俺は重浦の言うとおり動く、『重浦の商売道具』として生きていた。
その後の人生に、何があるかなんて知りもしないで。
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