X-p資料提供 城下医院

下腿骨骨幹部骨折の発生頻度と整復法

井出和光1)、小林 明2)

1)井出接骨院  2)湯田中温泉整骨院

Key words: 下腿骨骨幹部骨折、骨折形態、整復法

 

はじめに

 下腿骨骨折はスキーで多く発生する外傷であり、第13回日本柔道整復接骨医学会にて高橋1)、日向野ら2)が下腿骨骨幹部骨折の発生機転および整復法について報告した。1つのスキー場においてスキーおよびスノーボード外傷の発症頻度や受傷機転についての報告はあるが、下腿骨骨折について詳細に述べた報告は少ない。さらに約10年前頃よりスノーボードの導入によりスキー場の環境の変化、受傷機転や骨折の形態が変わってきたと考えた。今回、われわれは長期にわたり同一スキー場でスキーおよびスノーボード外傷を診療してきたので下腿骨骨折、特に骨幹部骨折に焦点をおいて調査したので報告する。なお、今回の研究は平成17年度第2回柔道整復学研究助成金を活用させていただいた。

 

目 的

 今回われわれは北志賀竜王スキー場におけるスキーおよびスノーボードによる下腿骨骨折の発生頻度および骨折の形態を調査し検討すること。また、それらの症例を供覧し整復法や後療法について検討することである。

対象および方法

 198612月(昭和61年度)から20064月(平成17年度)までの期間、北志賀竜王スキー場においてスキーおよびスノーボードにより受傷した4951例を対象とした。以下の項目について調査し、検討した。

@ 下腿骨骨折の発生頻度。

A スノーボードの導入前後における下腿骨骨折の発生頻度。

B 下腿骨骨折と診断した患者の内訳。

C Bで分類した症例をスノーボードの導入前後で比較。

D 下腿骨骨幹部骨折の骨折線を、横骨折、縦骨折および螺旋状骨

折と分類しその割合。

E 螺旋状骨折を脛骨近位外側から脛骨遠位内側に及ぶ骨折線を

内旋骨折とし、脛骨近位内側から脛骨遠位外側に及ぶ骨折線を

外旋骨折と2つに分類し、比較した。

F 下腿骨骨幹部骨折のうち脛骨骨折のみ、腓骨骨折のみおよび脛骨・腓骨の両方の骨折に分けその割合。

 

なお、ACでは北志賀竜王スキー場でのスノーボード導入時期は1996年(平成8年度)で比較した。DEFはレントゲン画像により分類したが、レントゲン画像は近医のドクターに撮影していただいたものを用い調査した。

 つぎに、代表症例を供覧し、整復方法および後療法について紹介する。

 

結 果

 20年間で診察、施術した患者数4951例中、下腿骨骨折と診断した症例は457例で、全体の9.2%にあたる。年度により患者数の変動はあるが、年度ごとの下腿骨骨折の発生頻度はおおむね一定していた。また下腿骨骨折が来ない年は無かった(図1)。

 スノーボードの導入前後における下腿骨骨折の発生頻度は、導入前は13.3%、導入後は6.6%で下腿骨骨折の割合は若干減少した(図2)。

 視診、触診により下腿骨骨折と診断した患者を骨幹部骨折と果部骨折にわけると、20年間の平均で骨幹部骨折は51.9%、果部骨折は48.1%であり、およそ半数ずつであるといえる(図3)。

 骨幹部骨折と果部骨折をスノーボード導入前後で比較すると、導入前の骨幹部骨折と果部骨折の割合はそれぞれ54.5%45.5%で、導入後の割合はそれぞれ48.5%51.5%であった。20年間の平均がそれぞれ51.9%48.1%でおおよそ骨幹部と果部で半数ずつであった(図4)。

 下腿骨幹部骨折の骨折線による分類でその割合は、螺旋状骨折が87.8%、横骨折が11.6%、縦骨折が0.6%、であった。圧倒的に螺旋状骨折が多く発生していることがわかった(図5)。

 螺旋状骨折を細分化し比較したが、内旋骨折が57.2% 外旋骨折が41.0% 分類不能が1.8%で、内旋骨折が外旋骨折よりやや多かった(図6)。

 下腿骨骨幹部骨折のうち脛骨骨折のみが55.5%、腓骨骨折のみが4.1%、脛・腓両骨骨折が40.4%であった。つまりほとんどの骨幹部骨折は脛骨骨折を伴い、腓骨の単独骨折はまれであることがわかった(図7)。

 つぎに下腿骨骨折の3人整復法を示す。最初に患者を仰臥位にし、患側の股関節および膝関節を屈曲させる。

 第一助手:患者の腹部をまたぎ両手でしっかりと大腿遠位部を把握する。患側と同じ足は(患側が左なら左足)正座様に座り体重をかける。反対側の足は患者の健側下肢を外転するように伸ばす。術者の末梢側への牽引にあわせて中枢側へ対牽引する。この際に良肢位でしっかり行なうようにしないと整復位とならないので注意する(図8)。

第二助手:患肢をまたいで末梢側を向いて起立位。両手掌部を下腿骨近位部の内外側に当てる。下腿軸の側方転位を矯正するために、内外側より強力に圧迫を加えながら中枢側から末梢側へ1~2回圧迫する。転位が大きい場合は、両側の膝で圧迫を加えている手部を挟むようにしてさらに圧迫力を強める(図9)。同様に前後面も1~2回圧迫する。前後面の整復は脛骨前面に圧迫を加えるため、左下腿骨の整復は右手が脛骨前面からで左手は腓腹部から圧迫する。右下腿の場合は逆となる(図10)。

術  者:患側と同側の手部で患肢の踵部を支持して、反対の手部で足背を把握して強力に末梢側へ牽引しながら遠位骨片に内旋・外旋を加える。この際、第二助手の手の動き、圧迫する位置を観察しながら脛骨の長軸を合わせる。(図11)前後面の整復も同様に観察しながら、足関節を良肢位に持っていき整復位の良好なことを確認後、クラーメル副子で固定し整復終了とする。(図12

 症例を供覧する。22歳、男性。左下腿両骨螺旋状骨折(図1314)。スキー滑走中に転倒し受傷。「手術はしたくない、少しぐらい変形が残ってもいいので無血で治療したい」という患者の強い希望があり、数週間入室し後療法を行った。受傷後1年で、レントゲンを撮ってもらったところ、やや外反および屈曲方向への変形は認めるものの骨癒合も良好だった(図15)。つづいて症例4の後療法について述べる。

(1)患部の安静および挙上(整復後〜2週)

   骨折部を心臓より高く上げるために座布団45枚重ね、患部が動かないように砂袋(長さ50cm重さ8g)で患部の両側を固定し、座布団ごと2箇所で縛る。つま先に布団がかからないように箱に穴を開けて保護した。患部の水泡、腫脹がひどく、生薬を飲んだり、患部に湿布をしたりした。

(2)座位の許可(2週〜4週)

腫脹・疼痛が落ちついてきたので、座位を許可した。長期安静・臥床により起き上がると眩暈を起こすことがあり特に注意する。側方に付けたクラーメル副子を除去した。

(3)下肢筋力訓練開始(4週〜)

骨折部を固定のまま患側の挙上運動(大腿四頭筋訓練)を行なった。この運動が十分に出来るようになり、足をあげて両手を後ろについて、お尻にて移動すること(いざり訓練)を許可した。

(4)歩行訓練開始(56週〜)

疼痛および腫脹が軽減し、固定を付けたまま自力で足を挙上できるようになり、クラ−メル副子を短くし膝下の固定とし免荷での松葉杖歩行を許可した、5週間ほど私の所に入室させていましたが、疼痛も軽減し移動もできるようになってきたため、地元に帰って治療することにした。

(5)荷重歩行開始(8週〜)

クラーメル副子を除去し厚紙副子に変更し、部分荷重から全荷重へとすすめた。

(6)治癒期(12週〜)

厚紙副子の固定を取り包帯のみとし整復から15週後で治癒とした。

 

考 察

今回われわれは長期間にわたりスキー場におけるスキーおよびスノーボード外傷について調査したが、下腿骨骨折は全受傷者のうち9.2%でありこの頻度は20年間を通してほぼ一定していたが、スノーボードの導入後は下腿骨骨折の発症頻度は減少していた。これは、スノーボードによる外傷はスキーと比べ上肢の外傷が多いことが報告されていることや3)4)、スノーボード人口が多いことが考えられる。

 下腿骨骨折を骨幹部骨折と果部骨折にわけてみたが、スキーは長い板を付けており転倒により下腿に回旋力が加わり受傷するため骨幹部骨折の方が多いと予想されたが、骨幹部骨折と果部骨折の頻度はほぼ同じであったことから受傷機転について詳細に調べる必要があると思われた。また、スノーボードの導入後においても骨幹部骨折と果部骨折の頻度はほぼ同じであり、下腿骨骨折の受傷機転はスキーおよびスノーボードも類似している可能性が考えられる。

 下腿骨骨幹部骨折の骨折線による分類では約90%が螺旋状骨折であったが、これは転倒の際に下腿部を回旋して受傷するためねじれによって引き起こされる結果といえる。

脛骨・腓骨の骨折の割合は脛骨単独骨折、脛骨・腓骨両骨骨折がほとんどで腓骨単独骨折は少なかった。この要因については今後検討していきたい。 

下腿骨骨折の3人整復法の整復操作は高度な手技でありほとんどの骨幹部骨折に適応できる。整復操作をする上で末梢牽引と脛骨軸の整復が重要なため、あえて末梢側を持つ方を術者とした。また第一助手・第二助手とも術者同等の整復技術を心得て三人の呼吸が合わなければ良い整復は出来ない。

 

まとめ

1)20年間のスキーおよびスノーボードによる下腿骨骨折の発生頻

度および骨折の形態を調査した。

2)下腿骨骨折の発生件数平均22.85件(9.2%)であった。

3)下腿骨骨折発生部位は半数の割合で骨幹部骨折・果部骨折に分

かれ、骨幹部骨折では螺旋状骨折が約90%をしめていた。

4)脛骨単独骨折、脛骨・腓骨両骨骨折がほとんどで、腓骨単独骨

折は少なかった。

5)下腿骨骨折の3人整復法は、ほとんどの骨幹部骨折に適応でき

るが、整復操作の際には末消側の牽引と脛骨軸の整復が重要である。

 

最後に資料作成にご尽力いただいた城下医院(故)城下 知夫先生、大塚接骨院 大塚甚造先生および林整骨院 林 雅義先生に深謝いたします。

 

文 献

 1)高橋正重: 骨折治療のバイオメカニクスT. 日本柔道整復接骨医学, 2005;133号p214  : .

2)日向野真一:骨折治療のバイオメカニクスU日本柔道整復接骨医学, 2005;133号p215  : .

3)塩谷英司: スノーボード外傷の発生機序. 藤巻悦夫, スキー・スノーボード外傷. 2000, 279-293.

4) 東 裕隆ら: スキーとスノーボードによる下肢外傷とその治療.  整形・災害外科, 2002; 45: 1263-1272.

 

 

図1

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