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令和2年度 研究概要 (第3部門)

NPS2020301
題  目 血液透析患者の自己管理行動と血液透析導入期の腎代替療法選択における shared decision making (SDM) の認知との関連
研究者 飯田 美沙
概  要 本研究は、血液透析患者の自己管理行動を獲得・維持するための看護ケアの構築のために、腎代替療法選択におけるSDMの認知と自己管理行動との関連について検討する。12施設の血液透析患者409名を対象に質問紙調査を行い、9つの観測変数と自己管理行動に関連があった対象者背景を加えた関係モデルを作成して共分散構造分析で検討した。結果、血液透析患者の自己管理行動には、SDMと疾患に対する対処行動の積極性、自律的動機づけを介した関連ルートが確認された。すなわち、血液透析導入期には、療養生活をイメージできるような腎代替療法の具体的な情報提供とともに、血液透析患者の療養行動の積極性を阻害するような恐怖心や苦痛となる要因をアセスメントし、レディネスを見極めること、さらには、自律的な動機づけを阻害するような支配的な言動を避け、血液透析患者が主体となれるよう個別性を重視した関わりを持つことが望ましいことが示唆された。
NPS2020302
題  目 子宮内膜癌およびその関連病変(子宮内膜増殖症、子宮内膜異型増殖症、類内膜癌)におけるDNA複製タンパクの免疫組織化学的検索
研究者 浦田 巧
概  要 近年増加傾向にある子宮内膜癌の約8割は類内膜癌である。類内膜癌では細胞周期関連タンパクの過剰発現が報告されている。本研究ではDNA複製関連タンパクに着目し、それらを免疫組織化学的に検索することで、類内膜癌におけるDNA複製関連タンパク間における関係性について検討を行った。免疫組織化学的検索では、陽性細胞率(Labeling index: LI)および呈色強度(Optical density: OD)を算出し、統計学的有意差検定や機械学習-判別分析を行った。DNA複製タンパクのLIはki67、MCM7、geminin、cdt1およびcdc6でそれぞれ有意差を認め、ODはki67、MCM7およびgemininでそれぞれ有意差を認めた。DNA複製タンパクのLIとODを用いた判別分析では、類内膜癌G1とG2の判別率が86.8%、類内膜癌G1とG3の判別率が90.0%であった。類内膜癌が低分化であるほど増殖状態にある細胞が多く、DNAの複製が盛んに行われていると推察される。
NPS2020303
題  目 質量分析計で同定不能な通性嫌気性グラム陰性桿菌の解析
研究者 大川内 沙織
概  要 質量分析計を用いた微生物の菌種同定が近年多くの施設で導入され始めている。本方法は従来の方法では同定困難であった菌種の多くが同定可能であり、感染症検査の領域において非常に有用と考えられている。当施設も質量分析計を用いているが、一部の通性嫌気性グラム陰性桿菌で菌種同定に至らない例を経験した。そこで、質量分析計にて同定不能となった通性嫌気性グラム陰性桿菌9 例を対象とし、菌種同定のゴールドスタンダードである 1 6S rRNA 遺伝子解析にて菌種同定を行った。また、質量分析計が導入されていない施設の多くで使用されている生化学的性状を用いた自動分析装置による測定を行った。その結果、すべての菌株で遺伝子解析とは異なる菌名が同定結果として示された。このことから、これらの菌種は、多くの施設で使用されている自動 分析装置においても、近年普及し始めた質量分析計においても、誤同定もしくは同定不能とされていることが示唆された。
NPS2020304
題  目 スキー場草原における過去の森林化が草原性植物のβ多様性に与える影響
研究者 大西 麻衣
概  要 近代的土地利用の一つであるスキー場は、高山草原や森林植生へ負の影響を与えていると言われているが、一部のスキー場では絶滅危惧種を含む草原性植物の代替生育地となっていることを示す研究結果も得られてきている。本研究で、菅平高原において、草原を利用したスキー場および森林伐採を経たスキー場間で、αおよびβ多様性の比較を行った。またα・β多様性を定量化する際の調査面積依存性についても検討した。スキー場タイプ 間の比較結果からは、調査面積によってα・β多様性の高低が入れ替わりうることが明らかになった。これは、構成種の被度分布の違いに起因する可能性がある。森林伐採後に70年以上、草原管理したスキー場では多様な草原性植物が回復している可能性が示唆された一方、伐採後40年程度では絶滅危惧種の生育を含む旧来の植生がみられず、スキー場管理に依存した草原植生の再生には非常に長い年月がかかることが明らかになった。
NPS2020305
題  目 腸内細菌を介した腸炎症状軽減効果の検証
研究者 荻田 佑
概  要 炎症性腸疾患(IBD)は世界規模で罹患者が増加しており、日本でも現在、罹患者数が20万人を超えている。IBDは、緩解・再燃を繰り返す、難治性の腸疾患であるため、緩解を早め、再燃を抑え、生活の質(QOL)の低下を抑える様々な治療方法が模索されている。本研究で私は、腸細菌Flavonifractor plautii(FP株)が腸炎症を軽減できるか、IBDモデルマウスを用いて調査した。具体的にはまず、マウス免疫細胞を用いた実験系でFP株によるIL-17産生の減少を確認すると共に、FP株のIL-17産生抑制因子が菌体構成成分のリポテイコ酸であることを明らかにした。続いて、実際にIBDモデルマウスにFP株を投与し、腸炎症状の経過を観察したところ、腸炎症状は軽減し、大腸組織のIL-17産生量が減少していた。以上の結果から、FP株のIL-17産生抑制により、腸炎症状が軽減することが示唆された。
NPS2020306
題  目 諏訪湖周辺で塒をとるカワウにおけるワカサギ漁解禁前後の食性の解明
研究者 笠原 里恵
概  要 長野県中南部に位置する諏訪湖において、主要な商用魚であるワカサギに対する、大型魚食性鳥類のカワウの影響の有無を検討した。ワカサギ漁解禁前の8月初旬と解禁後の9月下旬にカワウの塒の下で採取した糞から抽出したDNAを用いて、12SrRNA領域を対象としたDNAメタバーコーディングを実施した。得られた塩基配列が、登録データベースと98以上一致した場合に種を同定した。27試料の分析結果から、8月と9月に検出された魚類はそれぞれ約18種と14種であった。8月に検出された魚種の一般的な生息場所は河川から湖まで多様であった一方、 9月に検出された魚種の生息場所はおもに湖であり、カワウの食性や採食場所の時期による変化が示唆された。両月に共通して複数のDNA試料から検出されたのはワカサギやフナ類、オオクチバスなどであり、カワウがワカサギを採食していることが示された。今後は年間を通した調査やアユの放流時期などで調査を行う必要がある。
NPS2020307
題  目 新生児期に起こる、心筋細胞の分裂増殖の分子メカニズム
研究者 川岸 裕幸
概  要 哺乳類は生後、心臓が大きく成長していく過程で、心臓を構成する心筋細胞が一定回数分裂する。gp130は、細胞の増殖や生存に重要なシグナル伝達を行う受容体であり、その阻害薬を新生児マウスに投与すると、心筋細胞の分裂が抑制されるという知見をこれまでに得ていた。本研究では、遺伝子改変マウスを用いて、gp130を欠いた心筋細胞を持つマウスを作製した。そのマウスの心室筋細胞の分裂頻度を評価したところ、gp130阻害薬を投与した際と同様に、顕著に低下していた。また、新生児マウスから単離した心室筋細胞を用いて、gp130受容体に結合する複数の分子のうち、どれが心筋細胞の分裂に必要であるか検証した。その結果、インターロイキン6(IL6)を添加した際に、細胞の分裂頻度が著しく上昇した。これらの結果から、IL6-gp130というシグナル伝達が、新生児期の心筋細胞の生理的分裂に必要であることが明らかになった。
NPS2020308
題  目 アニオン性ホウ素クラスターを基盤とした革新的イオン伝導材料の創製
研究者 北沢 裕
概  要 本研究では、アニオン性ホウ素クラスターに着目し、(1) ホウ素クラスターを基盤とした新奇ナノ構造の構築、(2) 次世代型電解質の合成と機能創出、という 2つの研究項目について、研究を実施した。(1) については、配位高分子的手法を用いてアニオン性ホウ素クラスターを規則配列できることを見出した。(2) については、マグネシウムイオン電解質の創製に成功した。具体的には、アニオン性ホウ素クラスターのホウ素頂点を修飾化することでアニオンの化学的・電気的安定性、溶解性を向上可能であることを見出した。多価型カチオンのイオン伝導度は一般的に難易度が高いと考えられてきたので、今後のイオン伝導材料の設計に新たな指針を与える成果と考える。
NPS2020309
題  目 長野県におけるツキノワグマ捕殺個体数の年次推移が次世代集団の遺伝的多様性に与える影響の評価
研究者 小井土 凛々子
概  要 遭遇時に人命を脅かす脅威から、出没数に応じて個体数調整の規模が大きく増減するツキノワグマUrsus thibetanusは、多い年で年間5千頭以上の個体が捕殺されており、こうした管理が本種の野生集団の維持に負の影響を与えている可能性が危惧されている。そこで本研究では、個体数調整がツキノワグマ集団に与えてきた影響の解明を目的とし、本種の生息数の多い長野県内で継続的な試料の蓄積のある上田市に着目した集団遺伝学的研究を行った。結果、市内から7つ程度の遺伝構造が検出され、この遺伝構造の過去から現在にかけて時間的変動は見られなかった。また長野県内の捕殺頭数推移と、上田市内のツキノワグマの誕生年集団ごとの遺伝的多様性の増減を比較したところ、明確な関係は見られなかった。しかし、これは誕生年集団ごとのサンプリング範囲に影響していることが示唆され、今後より多地点・広範囲での試料収集により詳細な誕生年集団の遺伝的多様性の解明を目指す。
NPS2020310
題  目 KRAS 変異型大腸癌に対する新規治療法 MEK阻害剤+BCL-XL 阻害剤併用療法の開発
研究者 小山 誠
概  要 【研究の動機】KRAS遺伝子変異型大腸癌に有効な治療法は確立されていない。我々はKRAS遺伝子変異導入大腸癌細胞が、リン酸化ERKと抗アポトーシスタンパクBCL−XLの発現が先進することを確認した。これらのシグナルを標的とした、MEK阻害剤+BCL−XL阻害剤併用療法がKRAS変異型大腸癌に対する新規治療法となるという仮説を立て、本研究を遂行した。【方法】KRAS遺伝子変異導入、大腸癌細胞株CAC0−2を用いて、invitroでシグナルをmRNA、タンパクレベルで評価し、さらにMEK阻害剤+BCL−XL阻害剤併用療法の抗腫瘍効果を検討した。Invivoでは大腸癌細胞の皮下移植モデルを作成し、薬剤投与による腫瘍増殖抑制効果を検討した。【成果】MEK阻害剤+BCL−XL阻害剤併用療法は、invitro、invivoにおいてKRAS変異型細胞に特異的に抗腫瘍効果を示すことを確認した。
NPS2020311
題  目 千曲川上流域の東日本台風被災河川を対象とした治水対策の検討
研究者 近藤 孝洸
概  要 令和元年東日本台風は、千曲川上流の群馬県境近くの斜面に流域最大の豪雨をもたらした。特に、佐久市内で千曲川に合流する滑津川の被害は甚大であった。洪水被害を防ぐために策定される治水計画には流量観測データが必要だが、滑津川のような中小河川では流量観測が実施されていない。本研究は、滑津川を対象にして、文献など非数値情報を活用し現在より高精度の流出モデルを構築し、被災時流量の推定と治水対策効果の評価を目的とする。最初に、滑津川流域の4事象の水害発生年を特定し、その時の氾濫発生位置を確認した。次に、この氾濫を再現できる流出モデルを構築した。この流出モデル計算により、令和元年東日本台風時の滑津川下流端におけるピーク流量は801m3/s、香坂ダムがなければ23m3/s 増加すると推定された。
NPS2020312
題  目 骨格筋の運動適応における遺伝子抑制機構の役割解明
研究者 清水 純也
概  要 【1.目的】骨格筋における運動効果の限界点を定める機構は未解明である。その機構を明らかにするために、本研究では運動によって付加される骨格筋中のH3K27me3修飾(遺伝子発現抑制型のヒストン修飾)に着目し、その役割を解明する。【2.方法】マウス腹腔にEZH2(EZH1と並ぶ、H3K27me3付加酵素の1つ)阻害薬を投与し、30分間のトレッドミル走運動をさせ、前脛骨筋を取得した。その後、取得した筋を用いて、タンパク質・遺伝子の発現量を定量的に分析し、また、その遺伝子座におけるH3K27me3修飾レベルを調査した。【3.成果】EZH2阻害剤を投与した群の筋中で、運動終了直後、H3K27me3修飾レベル・遺伝子発現量が有意に増加した。加えて、慢性運動終了3日後の筋ではミトコンドリア関連たんぱく質の発現が有意に増加していたことから、骨格筋中でのH3K27me3修飾増加は運動効果発現を促すと考えられる。また、H3K27me3修飾はEZH2を介さない経路(EZH1によって触媒される修飾)でより強力に起こることが示唆された。
NPS2020313
題  目 実無線環境における安価なデバイスを用いた高信頼無線通信実現に向けた検討
研究者 征矢 隼人
概  要 IoT技術の普及拡大が予想される中、稼働状況監視等の通信品質が比較的低くても支障が生じにくいユースケースを想定し、低コストかつ簡易な無線システムの提案が行われている。しかしながら、簡易な無線システムにおける通信品質は十分な評価がされておらず、必要十分なシステム構築のための基礎データが無い。そこで本研究では、信号強度から利用状況を測定し、ユーザーの利用時間に対する利用状況を分析する。簡易な無線システムのモデルとして、安価な送信機(ESP32マイコン)から、受信機(Raspberrry Pi)へデータを送信する。中継器としてはWiFiルータを使用する。通信状況を測定するための測定器としてスペクトラムアナライザ(WiSpy)を使用し、受信信号強度を測定した上で、周波数使用率を計算により求め、評価を行った。その結果、送信機端末数が2以上になると周波数使用率が急激に増加し、それ以降は端末数に比例して使用率が増加する傾向を確認した。
NPS2020314
題  目 光触媒粉末ベースの光電極から成る高効率なノンバイアス水分解系の構築
研究者 高木 文彰
概  要 ZnSeとCuIn0.7Ga0.3Se2の固溶体であるZnSe:CIGSは、近赤外光まで吸収可能な半導体光触媒であり、水からの光電気化学的水素生成反応に活性である。将来的な大規模展開を志向した場合、粉末材料の利用が有望であるが、その活性は薄膜材料に及ばず、改善の余地が残る。本研究では、ZnSe:CIGS粉末光カソードの性能向上の戦略として、単粒子層から成る粉末電極表面の粒子1つ1つに対して、厚さ方向へのGaとInの組成比変調を検討した。GaとInの組成傾斜によるバンド設計が可能となれば、半導体内部での電荷分離の促進による活性向上が期待できる。Gaリッチな粉末上に、Inを含む前駆体合金を堆積・セレン化することで粉末上でのGaとInの組成変調を試みた。前駆体合金の堆積量によって活性を制御可能であることを見出しつつあり、更なる高活性な材料開発の端緒を得た。
NPS2020315
題  目 長野県上伊那地方の水路網における水生植物群落の分布の変化と保全に関する研究
研究者 高澤 隆仁
概  要 我が国の水生植物は約4割が絶滅危惧種に指定されており、特に流水環境としての水路網は貴重な生育地であるが、保全のための現状把握が急務となっている。そこで本研究では長野県上伊那地方の水路網における水生植物群落の現状と立地環境条件を把握し、約10年前の先行研究(御池ほか2011)と比較することで分布等の変化を捉え、保全策を検討することを目的とした。全調査で水生植物は27種が出現し、イトトリゲモやシャジクモ、ナガエミクリなどで消失または分布の縮小が確認された。外来種ではオオカナダモの侵入が新たに確認された。本地域では初めての記録であると考えられ、今後在来種との競合が懸念された。立地環境条件では水質や土地利用に変化があり、種の消失との関係性が考えられた。今後、希少な水生植物を保全していくためには、さらに詳細な分布が明らかにされ、地域住民や自治体等にその存在や希少性が理解される必要があると考えられた。
NPS2020316
題  目 高齢者の生理機能障害の病態解明と、サルコペニア・フレイル治療法*
研究者 田中 愛
概  要 我々は生理活性ペプチド、アドレノメデュリン(AM)と、その受容体活性調節タンパクRAMP2が、諸臓器の恒常性維持に必須であることを報告してきた。本研究ではマウス筋萎縮モデルを作成し、骨格筋におけるAM-RAMP2系の意義を検討した。筋傷害薬カルジオトキシン(CTX)を、野生型マウス(WT)に筋肉内投与すると、筋重量は7日で最低となり、14日で回復した。AM-RAMP関連因子は、CTX投与3日目に発現が上昇し、その後経時的に低下した。次にRAMP2ヘテロノックアウトマウス(RAMP2+/-)に対してCTX投与を行なうと、炎症の消退遅延、骨格筋の再生遅延が認められた。一方、AMを外因性に投与すると、これらの所見の改善が認められた。これらの結果は、AM-RAMP2系が、サルコペニアの進展に抑制的に働く可能性を示しており、新規標的として有用であると期待される。
NPS2020317
題  目 ヤノクチナガオオアブラムシの口吻の長さが師管液吸汁量及び甘露排泄量に及ぼす影響
研究者 中村 駿介
概  要 クチナガオオアブラムシ属は最も長い口吻を持つアブラムシ属で、アリと絶対共生する。アリと共生するアブラムシは甘露排泄量が少ないとアリに捕食されるため、多くの甘露排泄を行う必要がある。そこで、本研究では本属における口吻の長大化が師管液吸汁量と甘露排泄量の増加に繋がっていると考え、ヤノクチナガオオアブラムシを材料としてその口吻長、師管液吸汁量、甘露排泄量を計測し、それらの関係を調査した。その結果、本種は幼虫では口吻長の増加に伴って師管液吸汁量が増加し、これに伴って甘露排泄量が増加することが分かった。また成虫では口吻長と師管液吸汁量、甘露排泄量は互いに相関しないことが分かった。これらの結果から、ヤノクチナガオオアブラムシでは口吻長が師管液吸汁量や甘露排泄量に及ぼす影響は幼虫と成虫で異なることが明らかになり、幼虫における口吻の長大化がアリからの捕食を回避することに繋がる可能性が示唆された。
NPS2020318
題  目 歯槽膿漏を標的とした長野県産新規機能性レタスの開発
研究者 西田 優花
概  要 我々は,レタスの遺伝資源の中から,既存の品種よりもポリフェノール類(主としてチコリ酸,クロロゲン酸[CGA]およびケルセチン-3-マロニルグリコシド)を豊富に含む品種を見つけた。これらポリフェ ノール類には,我々の身体にとって役に立つ様々な働きがあり,例えば,CGAは活性酸素を消去する力が強く,炎症を抑える効果のあることが報告されている。したがって,この新品種レタスのポリフェノール量率を改良すれば,我々の健康に,より有用な機能性レタスの開発に繋がると考えた。特に,歯周病(歯槽膿漏)は世界で最も罹患者数が多いとされる炎症性の疾患であり,歯周病に効果があれば我々の健康に非常に有意義であると考えられたため,今回,CGAに焦点を絞り,歯周病に対する抑制効果と治癒促進効果を検討した。その結果,未だ検討数が少なく途中経過ではあるが,計画よりも少量のCGAで歯周病の発症が抑制される傾向が認められている。
NPS2020319
題  目 新規プラーク画像処理ソフトを用いた人工知能による脳梗塞発症予測システムの開発
研究者 花岡 吉亀
概  要 頚動脈狭窄症は、広範囲に脳梗塞を引き起こす可能性がある重大な疾患であり、その発症には狭窄率だけでなくプラークの性状や形状の関与が指摘されている。しかし、現状ではプラークに着目した脳梗塞発症リスクや治療選択に関する具体的な指標は全く存在しない。適切な治療を選択するためには、各プラークに即した脳梗塞発症率を明らかにする必要がある。本研究の目的は、過去に脳梗塞を発症した「症候性頚動脈狭窄」症例と、脳梗塞を発症していない「無症候性頚動脈狭窄」症例のプラークの違いを人工知能に学習させることにより、各「無症候性頚動脈狭窄」症例の将来における脳梗塞発症率を予測するシステムを開発することである。本研究は、画像情報から疾患の将来予測を行う独創的な研究であり、テーラーメード診断を可能にするだけでなく、脳動脈瘤や大動脈瘤の破裂率など、その他の疾患にも転用可能な革新的な研究である。
NPS2020320
題  目 門脈塞栓・結紮後代償性肝再生を応用した新たなインスリン産生細胞再生療法の確立
研究者 林 輝
概  要 【動機】膵頭移植は 1型糖尿病の唯一の根治的治療戦略であるが、膵島組織量の不足や長期的な免疫抑制療法の必要性から、治療法として十分に浸透していない。そこで、肝由来細胞に対する膵β細胞導入技術を用いて、門脈結紮術により幹細胞が誘導された肝臓において、転写因子群を発現する物質及び分化転換細胞の成熟を促進する因子を投与することで、肝内局所でインスリン産生細胞が分化転換しうるのではと発想した。【方法】糖尿病モデルマウスに対して門脈結紮術を行い、膵発生関連転写因子及び液性因子を投与することで血糖値及びインスリン産生細胞誘導性の変化を評価する。【成果】転写因子及び液性因子を付与することによりインスリン分泌能の獲得と膵β細胞特異的な遺伝子発現が誘導された。分化転換細胞の糖尿病モデルマウスへの移植で、速やかな血糖値の改善とインスリン産生能の一定期間の維持を確認した。
NPS2020321
題  目 菌寄生菌が菌類子実体に与える影響
研究者 前川 直人
概  要 本研究は菌類の生育に適する場所が多く、きのこ食分化が発達している長野県において、菌類子実体に寄生する菌寄生菌の種類や、宿主への寄生方法等の生態を詳しく調べることで、菌寄生菌と宿主間の関係や影響を明らかにすべく行った。まず、菅平高原及びその周辺地域において菌寄生菌の探索、観察、分離培養を行った。この結果、2020年6月〜12月までに計10種の菌寄生菌が観察でき、4種の菌株の確保に成功した。このうち食用きのこに寄生していたものは Dicranophora fluvaの一種であった。また、本種は国内において報告のない日本 新産種であった。実験材料としての適性を 培養の容易さや宿主の準備の容易さで4項目による比較をしたところ、実験に適していると予想される種は10種中4種であった。今後 Dicranophora fluva を新産報告するとともに、これらの4種を用いて寄生菌の子実体への接種実験、非寄生個体と寄生個体の観察による比較、実験や観察における菌寄生菌のライフサイクルの調査、寄生部位の電子顕微鏡観察、宿主の菌糸との共培養等を行い菌寄生菌が宿主にどのように寄生しどのような影響を与えているのかということを明らかにしていきたい。
NPS2020322
題  目 肺癌におけるペメトレキセド耐性化とFGF2-FGFR経路の関連の解明
研究者 三浦 健太郎
概  要 【緒言】ペメトレキセドは進行再発非小細胞肺癌、特に肺腺癌に対するkey drugの一つであるが、他の薬剤と同様にほぼ必ず耐性化をきたす。我々はこれまでに、耐性化にはFGF2(fibrobiast growth factor 2)−FGFRl(fibrobiast growth factorreceptorl)経路が関与することを明らかにしてきた。さらなるペメトレキセド耐性化機序の解明のため、まずは肺癌の切除検体に対して抗FGFRl抗体による免疫染色を行った。【対象と方法】当院における過去の肺癌の切除検体38例(腺癌9例、扁平上皮癌4例、多形癌8例、大細胞癌5例、小細胞癌4例、カルチノイド7例)を抽出し免疫染色を行った。染色の有無によって陽性群と陰性群に分けて解析を行った。【結果】腺癌の陽性率は10脱(9/9例)であった一方で、腺癌以外の癌腫の陽性率は40.硝(11/27例)であった。【今後の展望】実臨床において、FGFRl発現の強度によってペメトレキセドの耐性化の起こりやすさやペメトレキセドそのものの効果に差があるか検討が必要である。
NPS2020323
題  目 抗生物質の濃度依存的作用の解析とその生物学的役割の解明
研究者 向井 慶一郎
概  要 放線菌は抗生物質をはじめとする様々な二次代謝産物を生産する細菌群である。研究代表者らは, 低濃度のリボソームを標的とする抗生物質が放線菌の二次代謝能を劇的に高めることを明らかにしている。この現象は, 抗生物質元来の定義では説明がつかないことから, 抗生物質の本質的理解に繋がる重要な知見である。本研究では, 抗生物質が放線菌の二次代謝能を高める現象の仕組みを生化学・分子生物学的な面から解析することに加え, 抗生物質のポジティブな作用を活用した応用研究を展開することで, 自然界における抗生物質の本来の役割を明らかにすることを目的とした。リボソームを標的とする抗生物質による放線菌の二次代謝活性化は, リボソームが長時間にわたって安定的かつ活発になることが鍵であることを見出した。加えて, 抗生物質の濃度依存的な作用を活用することで, 放線菌に秘められた潜在的な二次代謝産物生産能を引き出すことにも成功した。
NPS2020324
題  目 γ-ツヤプリシンおよびヒノキチオールをもちいた発光性物質の合成と特性評価
研究者 山崎 あかり
概  要 アズレンは、ベンゼン系芳香族化合物とは異なる性質を持つ化合物であり、その特性に興味がもたれている。また、アズレン誘導体はこれまで医薬品として用いられてきたが、近年では液晶や有機半導体等の有機エレクトロニクス材料への応用も期待されている。本研究では、長野県産木曽ヒノキの抽出成分であるγ-ツヤプリシン及びヒノキチオール (β-ツヤプリシン)を出発物質とした、縮環アズレン誘導体の効率的な合成法の開発と光学特性の解明を目的とした。γ-ツヤプリシン及びヒノキチオールを出発物質として、ナフト[1,2-a]アズレン誘導体の新たな合成法の開発を達成した。ナフトアズレン誘導体の光学特性を、紫外可視及び蛍光スペクトルにより検討した結果、これらの誘導体が酸性条件でのみ特異的な発光(ハロクロミック発光) を示すことが明らかとなった。このハロクロミック発光を利用することで新規な蛍光材料や生体細胞の発光プローブへの応用が期待される
NPS2020325
題  目 バッタ目の腸内外生キクセラ目様菌類の生活史の解明及び分類学的研究
研究者 李 知彦
概  要 キクセラ目に属す新種のバッタ目昆虫腸内外生菌類は、胞子に爪様の修飾構造をもち、この構造によって腸内に付着・増殖し、糞上では菌糸成長するという先例のない生態をもつ。この内、宿主がカマドウマ科昆虫の種1とコオロギ上科昆虫の種2が確認されており、両菌は爪の形態が異なる。本菌類の生活史の更なる解明を目的として、異なる爪の形態と宿主の関係に着目し、フタホシコオロギに両菌を摂食させ、腸内の付着胞子数を確認する室内実験を行った。すると、本来の宿主と異なるペアの場合に付着胞子数が著しく減少することがわかった。また、腸内での付着の様子を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。種1は胞子嚢の壁が残存するのに対し、種2は胞子嚢の上半分の壁が消失することを発見した。よって、両菌は腸内での形態の変化において異なる性質をもち、異なる腸内への付着戦略をとることが判明した。今後はこの性質と腸内の付着胞子数の関係を検証したい。

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