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平成24年度 研究概要 (第1部門)

H24-1-1
題  目 長野県南部地方におけるカワムツ Zacco temminncki の分布域拡大に関する研究
研究者 大原 均
概  要 西日本からの移入魚「カワムツ」が天竜川水系で生息が最初に確認されてからほぼ30年が過ぎている。その後、彼らは生息域を広げていることは今までの研究で明らかにしてきた。そこで、今回は過年度の調査で生息が確認されていない駒ヶ根以北と木曽川水系を中心に採捕調査を行ってきた。その結果から次のようなことが明らかになってきた。(1)今回、初めて駒ヶ根市下平地籍で採捕したことにより、カワムツの分布域が駒ヶ根市まで広がったといえる。しかし、宮田以北の河川では採捕することがなかったので、天竜川水系における現在のカワムツの分布域の北限は駒ヶ根市大田切川付近といえる。(2)木曽川での調査や千曲川の報告から県内でのカワムツの生息は天竜川水系に限られている。(3)飯田市周辺の河川では、依然としてカワムツの優占率は高いままま維持されている。
H24-1-2
題  目 千曲川‐信濃川の水生昆虫類を対象としたメタデータ解析による群集構造および優占種群における遺伝的構造の追究
研究者 斎藤 梨絵
概  要 まず、河川水辺国勢調査のデータを利用しNMDS解析 (非計量多次元尺度構成法)を行い、千曲川−信濃川の調査地点間における水生昆虫群集の流程内の変遷と流程に沿った相互類似性を評価した。その結果、千曲川-信濃川における底生動物群集相は大きく4つのグループに分類され、流程に沿った出現水生昆虫群集の変化が示された。次に、千曲川−信濃川水系を対象にチラカゲロウの水系内の個体群構造・遺伝的構造を追究した。本川に加えて梓川−犀川などの主要支川に約10km間隔の調査地を設け、定量調査とミトコンドリアDNA(COI領域)の遺伝子解析を行った。その結果、水系内広域的な遺伝子流動が生じていることが判明した。出水などの撹乱が生じた場合には、ダメージが小さく現存量の大きな生息地が供給源となることで、水系内全体としての個体群構造を維持しているような「メタ個体群構造」をとっていることが示唆された。
H24-1-3
題  目 日本のふるさと再生。発泡鉱石を用いた放射性物質の除染・遮へい・回収方法の研究
研究者 下平 利和
概  要 パーライト(黒曜石を焼成加工して発泡した軽量骨材)などの発泡鉱石は従来より、土壌改良材として緑化や園芸の他、過湿地や滞水地盤の排水層、廃棄物処分場やヘドロ地盤の断絶層などに広く活用されてきた。本発明・研究活動は、(1)パーライト(発泡黒曜石)などを用いて、放射性物質の除染・遮へい効果の基礎的実験(浮上、沈殿、付着、ろ過など)、及び(2)放射性物質除染技術の現状における課題を調査し、対応策としてパーライトを用いた方法の研究、を行った。その結果、発明・研究成果内容(平成24年度)の「パーライトを用いた対応策(手法)」に示すような、多くの新たな知見を得ることができた。この成果を環境省や福島県、eco japan cupなど多くの場所で提案(発表)して、現在直面する放射性物質除染対策(特に低濃度汚染域)に有効な方法のひとつとして提供し、「日本のふるさと再生」に貢献したい。
H24-1-4
題  目 木崎湖周辺域の古環境復元−稲尾沢川の河川争奪と居谷里湿原の成立−
研究者 杉原 保幸
概  要 2012年11月、居谷里湿原の17mの全層ボーリングコアの採取を無事完了した。泥炭層の厚さは2mにも達せず、最深部で礫径10cmを超える砂礫層が厚く見られた。しかし、有機質シルトをはじめ、火山灰土や炭化物を含むシルト層が途中6層に及び散在していた。花粉他大型植物遺物の存在も期待でき、古環境の復元に重要なコア資料が得られた。居谷里湿原の成立について、作業仮説「更新世の最終間氷期に居谷里谷を下刻した旧稲尾沢川は、その後のウィルム氷期に堆積物を10数mと厚く残した後、木崎湖方面への流路変更(河川争奪)が起こり、居谷里谷は完新世の激しい浸食を逃れ、更新世堆積物の上に泥炭層を数mと薄くもつ湿原を形成した。」を支持する、深度4.35mのコアサンプルで2万8千年前に噴火した姶良丹沢火山灰特有のバブル型火山ガラスの観察結果を得ている。
H24-1-5
題  目 父親が卵の世話をする昆虫・コオイムシAppasus japonicus の長野県松本市稲倉個体群における父性調査およびコオイムシ類における父育システム進化の究明
研究者 鈴木 智也
概  要 コオイムシ類はオス親が卵を背負いながら世話 (父育) をする動物界でも極めて珍しい行動をする昆虫類である。本研究では長野県松本市稲倉におけるコオイムシを材料にマイクロサテライト法を用いた親子推定を行い、コオイムシにおける父性の確実性を検証し、コオイムシ類のユニークな父育システム進化の究明を目的とする。本年度はその前段階として、日本広域、朝鮮半島および極東ロシアに生息するコオイムシ類における遺伝的構造および分断パターンを明らかにした。既存のマイクロサテライトプライマーは茨城県大子町産個体群において作製されたものであることから、長野県松本市産個体群においても適用できるか否かを検証するために、日本産コオイムシ類における遺伝的構造の解明は重要であると言える。また、日本産コオイムシ類は環境省や各都道府県版レッドリストにおいて、希少種として登録されていることからも、その遺伝的構造の理解は重要である。
H24-1-6
題  目 戸隠高原における送粉共生系についての研究
研究者 中村 千賀
概  要 戸隠スキー場ゲレンデの草原において、植物の開花と花を訪れる昆虫との関係を把握するために、調査ルート沿いで虫媒花の開花花数と昆虫の訪花頻度を記録するセンサス調査を行った。その結果、草原生植物を中心に126種の虫媒花植物が春から秋まで咲き続くこと、それらの花に主にハチ目、ハエ目、チョウ目、甲虫目、カメムシ目の昆虫類が訪れることを確認した。ハナバチ類やチョウ類の中には環境省や長野県が定める希少種も含まれていた。甲虫類や小型のハナバチ類が主に訪れていた植物は、花の形態が皿状やブラシ状のものが多く、ハナバチ類とチョウ類に主に訪れていた植物は、花筒が長いものが多かった。こうした対応関係が確認された一方で、大型のハナバチ類が少なく、対応関係が確認できない植物もあった。現在の草刈り管理によって草原を維持し、希少種の生育地を維持するとともに、積極的に虫媒花植物を増やす管理も必要だろう。
H24-1-7
題  目 長野県原産の石斧石材の全国流通に関する研究[その2]
研究者 中村 由克
概  要 原始時代に使われた石器で、ナイフややり先(尖頭器)などに使われる黒曜石など鋭く割れやすい石材とは対照的に、石斧に使われる石材は、重くて丈夫で割れにくい石材が選択された。長野県には旧石器〜縄文時代に多く使われた松川-姫川流域の透閃石岩(かっては蛇紋岩と言われていた)と弥生時代の長野市・須坂市の輝緑岩の2つが石斧の石材として広く流通していた。縄文時代にはこの石材の石斧が中部・関東地方まで広がっていたことがわかっていたが、旧石器時代の約3万年前に、野尻湖遺跡群で仕上げ加工された局部磨製石斧が日本海沿岸に沿って富山県から秋田県までもたらされたことが明らかになった。透閃石岩の石斧は、関東地方など太平洋側には行っていないことから、すでに3万年前から石器石材には地域性が誕生していたと思われる。また、弥生時代の輝緑岩は、特徴的な外観の石材であり、実体顕微鏡で観察することで鑑定可能であることが判明した。
H24-1-8
題  目 ニッポンアミカモドキの生物学的研究 V
研究者 西尾 規孝
概  要 ニッポンアミカモドキは大変小型で幼虫が山岳地帯の激流部にすむ希少昆虫である。交尾行動はまったく未知であったので松本市奈川と大町市乳川で観察に努めた。早朝のスウォーム(群飛)中で瞬間的に交尾することがほぼ確かめられた。乳川ではオス出現率は水温で左右され、高温ほどオスはよく出現した。全国的に奈川と乳川にのみオスが出現するが、豊富な生息数を持つ大きなハビタットにオスが残存しているのだろう。奈川と乳川で発生回数も調べたが、年3-4であった。未知である野外の産卵場所については解明できなかった。
H24-1-9
題  目 巣をもたない社会性昆虫、真社会性アブラムシにおけるコロニーの集団遺伝解析
研究者 服部 充
概  要 様々な生物で、子供を産まない個体(不妊個体)が同種の他個体の繁殖・生存を助けるという利他的な協力行動(真社会性)が進化している。真社会性をもつアブラムシのコロニー(同種個体が集まって生活する場)は、これまで血縁個体のみで構成されていると考えられてきた。しかし、真社会性アブラムシを除くすべての真社会性昆虫が血縁個体以外の個体の侵入を防ぐことのできる「巣」を作るのに対し、真社会性アブラムシは「巣」を作らずに生活する期間をもつ。そのため、これまで考えられてきた常識とは異なりコロニー内の遺伝的多様性が高い可能性がある。そこで本研究は、長野県内の真社会性を示すササコナフキツノアブラムシにおいてAFLP(amplified fragment length polymorphism)法による集団遺伝解析を行った。その結果、コロニーが高い遺伝的多様性をもつことがわかった。また、子供を産む個体(成虫)と不妊個体の遺伝的多様性を比べると不妊個体の遺伝的多様性が高いことがわかった。

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