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平成24年度 研究概要 (第3部門)

H24-3-1
題  目 miRNAと血糖調節
研究者 浅野 公介
概  要 本研究では、高炭水化物食摂食後に肝臓で発現が制御される miRNA に着目して、これらの miRNA の発現が生体の血糖調節に関与するかどうかを明らかにすることを目的とした。本研究の解明により、インスリンで発現が制御される miRNA を糖尿病モデルマウスでノックダウンした場合、血糖値が低下することが期待される。最初に、マウス初代培養肝細胞において、miRNA の分解がルシフェラーゼ活性でモニターできる系を確立することを目指し、以下のプラスミドの作製を行った。まず、miRNA の標的遺伝子配列をデータベースから検索した。次に、ウミシイタケルシフェラーゼの翻訳領域の下流に、その標的遺伝子配列を挿入し、 psiCHECK2-標的遺伝子プラスミドを作製した。現在、このプラスミドを細胞へトランスフェクションする最適条件について検討中である。
H24-3-2
題  目 漢方薬に歯周病治療を目的とした基礎的エビデンスの集積
研究者 荒 敏昭
概  要 歯周病が感染性心内膜炎、動脈硬化、糖尿病、癌などの発症リスクを高めることが明らかになり、歯周組織の炎症反応が全身に影響を及ぼすことが認識されている。歯周病などの口腔領域の炎症症状を改善するために漢方薬を使用する例が報告されている。本研究では、歯肉線維芽細胞を用いた実験系で漢方薬が歯周病の炎症症状を改善するメカニズムを明らかにすることで、歯周病治療に対する漢方薬療法の基礎的エビデンスを集積することを目的とした。ヒト歯肉線維芽細胞をLPSおよび漢方薬を組み合せて24時間刺激し、産生されたプロスタグランジンE2(PGE2)量をELISAで測定した。実験に用いた漢方薬のうち、実証に使用される葛根湯、大柴胡湯、中間証に使用される黄連解毒湯、虚証に使用される真武湯、人参湯はLPS刺激によるPGE2産生量を低下させた。これらの結果から、各証の患者に対して漢方薬が歯周病を改善することが期待された。
H24-3-3
題  目 高校生の登校回避感情の特徴と登校回避感情に影響を与える要因
研究者 有賀 美恵子
概  要 本研究は、高校生の登校回避感情の特徴と登校回避感情に影響を与える要因を明らかにし、不登校や学校不適応を予防するための方策と支援の可能性を検討することを目的とした。高校1年生3,985人を対象とし、3年間の追跡調査を行った。本研究の結果より、対人恐怖心性、不定愁訴、精神の不調による受診経験、低い自尊感情、過去の不登校経験、いじめられた経験、学校外の友人からのサポート不足、インターネット上での友人からのサポート、学業場面における不適応感、低い学習の理解度、養護的ではない親の養育態度、早期に携帯電話を持つこと、運動部活動未加入、飲酒経験、喫煙経験が、高校生の登校回避感情の発現と消失に影響を与えることが明らかとなった。次年度以降も引き続き検討を行う予定である。
H24-3-4
題  目 酸素耐性ヒドロゲナーゼの改良と、光水素発生複合体への応用
研究者 伊原 正喜
概  要 本研究は、藻類によるバイオエネルギー生産において、実用化へのボトルネックとなっているヒドロゲナーゼの安定性問題の解決を目的としている。このために、ヒドロゲナーゼのアミノ酸配列の改変が必要となるが、従来法では、アミノ酸改変体の作製に数カ月を必要とするために研究を効率よく進めることが困難であった。そこで当研究室において、小型の広宿主域ベクターと水素細菌を利用した宿主ベクター系による組換えヒドロゲナーゼ作製法の開発を行っている。これまでに、組換えヒドロゲナーゼ作製にかかる期間を約10日と、大幅に短縮することに成功したが、収量が低いことが問題であった。そこで、遺伝子発現の強弱を決定するプロモーターと呼ばれるDNA配列を改変することで、ヒドロゲナーゼ収量を改善に成功した。
H24-3-5
題  目 三叉神経痛により誘発される機械性痛覚過敏におけるイオンチャンネルの関与
研究者 浦野 浩子
概  要 三叉神経痛において機械性の刺激に対しての異常疼痛が惹起することが臨床的に認められるがそのメカニズムは不明である。本研究は治療に難渋する三叉神経痛の疼痛機構の解明と疼痛治療の新たな分子基盤の開発である。そのために三叉神経因性疼痛モデル動物を用いて、機械性痛覚過敏の惹起に三叉神経節での侵害刺激受容に関与するイオンチャネルの多彩な発現変化が重要であることを明らかにする。研究計画は、ラット眼窩下神経枝を部分結紮する三叉神経因性疼痛モデル動物を用いて、行動学的手法を用いて機械性痛覚過敏の惹起を評価する。さらに本モデルの機械性痛覚過敏が惹起する機序に、三叉神経節内の侵害刺激受容に関与するイオンチャネルであるTRPV1、TRPV2、ASIC3の発現数の変化と発現分布の変化を免疫組織学的評価によって解析し、三叉神経痛における侵害刺激受容に関与するイオンチャネルの機能と役割を検討する。
H24-3-6
題  目 アミノ酸がマウスの摂食行動に及ぼす影響の検討
研究者 木下 善弘
概  要 本研究は、NMDA型グルタミン酸受容体(以下NMDA受容体)を介して、神経伝達物質として機能する種々のアミノ酸(グリシン、グルタミン酸、D-セリン)の投与がマウスの摂食行動に及ぼす影響を検討することを目的として実施される。具体的には、“グリシン、グルタミン酸、D-セリン等のアミノ酸が、NMDA受容体を介してマウスの摂食行動を抑制する”という仮説を検証することが本研究の主目的である。これまでに、マウスに種々の濃度のグリシンおよびD-セリン水溶液を経口投与し、摂食量、飲水量を測定した。また、対照群として、マウスに水およびL-セリン水溶液を経口投与し、摂食量、飲水量を測定した。現在結果を解析中である。グルタミン酸に関しては、今後同様の実験を実施する予定である。
H24-3-7
題  目 シカの食害が縞枯れ林の維持およびシラビソ・オオシラビソの共存に与える影響
研究者 鈴木 智之
概  要 「縞枯れ」は、風による枯死と再生の繰り返しによって森林が縞状に枯れた状態が長期的に維持されているものであり、限られた地域のみで見られる珍しい現象である。しかし、近年、シカ食害が増えているため、枯死と再生のバランスが崩れつつあること懸念される。そこで、本研究では、北八ヶ岳縞枯山の縞枯れ林において、10年前と現在のシカ食害の現状を比較し、縞枯れ林の存続に及ぼすシカの影響を検証した。10年前のデータには、縞枯れ林の斜面の下から上に向けた530mの調査帯に沿って2002年に行われた南信森林管理署の調査結果を利用した。2012年に同じ調査帯に沿って調査を行った。その結果、樹皮剥ぎのある幹の割合は10年間で急激に増えていた。樹皮剥ぎやシカ糞が多く見られた斜面下部では、稚樹の量も非常に少なくなっており、次世代の再生が阻害されていることが示された。縞枯れの維持のためには、早急な対策が必要である。
H24-3-8
題  目 テレセントリック照明を用いたエンドミルの高精度位置検出
研究者 鈴木 伸哉
概  要 切削工具の位置を求めるために、撮影による測定器が用いられる。しかし、光線の反射・散乱のために誤差が生じる。厚みのある物体の撮像計測では、円筒形状を対象とした実験式が与えられているが、切削工具には実験式がなく、誤差量が明らかにされていない。そこで、本研究では、テレセントリック照明を構成し、サブミクロンオーダーの高精度な位置検出を目的とした。本研究では、ボールエンドミルを例にとり、まず、シミュレーションによって誤差を予測し、次に実験装置を構成して実際の像を得て、シミュレーションと比較した。両者は、同様の結果が得られ、NA0。6以下のテレセントリック光学系で、撮影されたボールエンドミルの像の誤差は、サブミクロンオーダーまで減少可能であることを明らかにした。ボールエンドミルの場合、撮影して計測 する箇所の断面がV字形状で構成されているのが誤差の少なくなる原因であることがわかった。
H24-3-9
題  目 省エネルギ化を目的とした脈動流発生装置の作製
研究者 相馬 顕子
概  要 水やガスなどの流体を輸送するためにパイプラインが用いられている。パイプラインにはファンやポンプといった機械が取り付けられており、これらが流体を押す事で流体が輸送される。液体輸送に必要な動力(エネルギ)を消減する手法の一つに脈動流がある。脈動流とは血液の流れのように、周期的に流れが速くなったり、遅くなったりを繰り返す流れである。通常、パイプラインでの流れは脈動流ではなくほぼ一定の速さを保っているが、効果的な脈動流を作り出して流体を輸送させると、流体輸送に必要なエネルギを半分以下にまで減らす事ができる。しかし、実用化にはまだまだ課題が多く残されている。そのため、助成金を用いて簡易的なパイプラインを作成、パソコンを用いてポンプをリアルタイムで制御し、実験室の中で脈動流を発生させ、実験を行った。この装置により、研究者のアイデア次第で無限大の種類の脈動流を作り出すことが可能となった。
H24-3-10
題  目 諏訪湖における沈水植物と浮葉植物ヒシの分布状況
研究者 武居 薫
概  要 諏訪湖では近年ヒシが異常に繁茂し、それに伴うものか、エビモやクロモに代表される沈水植物の減少傾向が見られている。筆者は1991年以来、沈水植物についての調査を行い、2005年からはヒシについても並行して調査を行ってきた。ヒシの異常繁茂による沈水植物分布への影響について2006年からの調査結果を用いて検討した。ヒシと沈水植物の分布面積の間にはr2=0.47、現存量についてはr2=0.46で負の相関がそれぞれ認められた。ヒシの異常繁茂によって沈水植物が減少し水生植物帯における生物多様性の低下を引き起こしていること、その結果として漁獲量の減少がもたらされていることが予想される。
H24-3-11
題  目 リゾリン脂質依存的に発現変動する糖尿病および肥満症に関連する新規蛋白質の同定
研究者 塚原 完
概  要 核内受容体の1つであるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ (PPARγ)は生活習慣病に関連する疾患に極めて重要な役割を持つ分子である。その核内受容体リガンドは多彩な細胞内現象を引き起こすことが報告されており、リガンド関連疾患の病態を明らかにする事は新しい治療法の開発につながることが期待される。申請者は生理活性リゾリン脂質の1つである環状フォスファチジン酸(cPA)がPPARγの活性化依存的に大腸癌細胞の増殖を制御する事を最近報告した。大腸癌細胞および患部組織にはPPARγが高発現している事が報告されているが、その詳細なメカニズムについては不明である。本研究では主に大腸癌細胞に焦点を絞りながら、PPARγに結合する新規タンパク質を同定し、これら候補分子の生体内における生理的機能を解析評価した
H24-3-12
題  目 Elizabethkingia miricolaの保有するClassB型β-lactamase遺伝子の解析
研究者 根岸 達哉
概  要 <研究の動機>近年、抗菌薬の効かないβラクタマーゼ産生菌が医療現場において問題となっており、その遺伝子発現機構の解明が望まれている。今回我々は、βラクタマーゼ産生菌であるElizabethkingia miricolaのβラクタマーゼの発現機構の解析を試みている。
<研究の方法・成果>今回我々はElizabethkingia miricolaのβラクタマーゼ産生遺伝子を大腸菌に組み込み、その酵素活性の測定を行おうと研究を進めている。我々が解読した本遺伝子を、TAクローニングを用いてTAベクターに導入し、現在大腸菌に本遺伝子を導入することまで成功している状況である。今後は、大腸菌に目的タンパク質を発現させ、酵素活性を測定する予定である。
H24-3-13
題  目 (S)-Equol によるインスリン誘導性転写因子 SHARP-2 の発現調節機構の解析
研究者 羽石 歩美
概  要 糖尿病患者とその予備軍の増加は、世界的に深刻な問題となっている。本研究では、血糖低下に関与しているインスリン誘導性転写因子 enhancer of split- and hairy-related protein-2 (SHARP-2) をマーカーとし、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインの代謝産物である (S)-Equol に注目し、その作用メカニズムの解析を行った。その結果、(S)-Equol が phosphoinositide 3-kinase を介し、その下流の atypical protein kinase C (PKC)・・と別の経路であるclassical PKCαを早期に活性化すること、SHARP-2 mRNA の誘導には新規のタンパク質合成を必要とし、SHARP-2 遺伝子転写開始点上流 4687〜4133 の塩基配列を介してSHARP-2 遺伝子のプロモーター活性を促進することを明らかとした。
H24-3-14
題  目 母親の食行動が子どもの食行動と身体状況に与える影響について
研究者 百武 愛子
概  要 【背景・目的】学童期は食行動の基礎の形成期であり、成人期の食行動に大きな影響を与える。また、学童期の食行動・食態度に影響を及ぼすものとして、母親の存在は大きいと考えられる。そこで本研究の目的は、母親の食行動・食態度・栄養素摂取状況を含む食習慣が、子どもの食習慣と身体状況に与える影響について明らかにすることとする。【方法】対象者は松本市の小学生とその母親とし、調査協力90%で母子300組の登録を目指して調査を実施する。母子の栄養摂取状況はBDHQ(10Y)を使用し把握を行う。食行動・態度については富岡(1998)らの質問紙を参考に独自に作成を行う。生活習慣の把握には国民健康栄養調査の項目を用いる。 【統計解析】食習慣は食品群摂取状況に因子分析を行い食事パターンを特定する。食行動・食態度についても因子分析を行い、パターンごとのスコアを算出し、母子間で相関分析を実施する。共分散構造分析を用いて、各項目の関連を包括的に評価する。
H24-3-15
題  目 茶臼山高原の植物調査
研究者 廣江 伸作
概  要 研究の目的が「茶臼山の植物相」を明らかにすることであることから、まず標本作成に重点を置いて取り組んできた。植物採取にあたっては、特に開花時期にねらいを定めて行ってきた結果、双子葉植物330種、単子葉植物49種の植物を標本にすることができた。これらの標本は、長野県環境保全研究所の大塚孝一氏や横井力氏、長野県植物研究会長の中山洌氏、神奈川県立生命の星・地球博物館の勝山輝男氏、国立科学博物館の門田裕一氏、日本植物分類学会会員の浅野一男氏の協力を得て同定していくことができた。なお、調査の過程において、長野県において、貴重な植物もいくらか発見することができた。県内で初めてのものとして、ミヤマナミキ(シソ科)やナガサキオトギリ(オトギリソウ科)であり、貴重種として、アオホオズキ(ナス科)、トヨボタニソバ(タデ科)、オオフトイ(カヤツリグサ科)、ヒロハテンナンショウ(サトイモ科)である。
H24-3-16
題  目 歯周炎が関節リウマチ患者の合併症を悪化させる機序の解明
研究者 武藤 昭紀
概  要 関節リウマチ(RA)は、遺伝的要因に環境因子が加わり自己免疫疾患が惹起され、慢性炎症性病態が関節に生じ、関節滑膜において血管新生、滑膜表層細胞の増生、炎症性細胞の活性化、骨・軟骨の破壊などが起こる進行性破壊性関節炎である。マウスの歯周組織に歯周病により産生するサイトカインであるIL-6を注入、局所の炎症を惹起させたところ、血中SAA蛋白の上昇を確認した。歯周病とRAの多様な相互メカニズムは以前より示唆されているが、歯周病由来SAA産生上昇によるRAの悪化程度は解明されていない。そこで、RAモデルマウスの口蓋にリコンビナントIL-6を注射したところ、血清SAAが上昇し、AAアミロイド陽性部位が、コントロール群と比較して、IL-6投与群で高い傾向を示した。以上より、歯周炎が原因で、血中に高濃度SAA存在下の状態が継続することにより、アミロイドーシスの悪化をきたす可能性が示唆された。
H24-3-17
題  目 パノラマエックス線写真を用いた高年齢者における全身疾患スクリーニング法の開発
研究者 山田 真一郎
概  要 松本歯科大学病院を受診した高年齢者に対し、質問紙調査を行った。2007年〜2012年に歯科治療のためパノラマX線写真を撮影した50歳以上の患者1195名に調査票を送り、回答が得られた601名を分析した。このうち研究への参加同意者601名を解析対象とした。長野県では幾つかの住民コホートが設定されているが、本研究におけるコホートは、長野県における初めての歯科病院ベース多目的コホートである。本研究では未だ世界では4例しか報告されていないパノラマX線写真による「骨折リスク」スクリーニングの解析を主眼としている。人種および環境の異なる日本人での初めてのデータが報告できうる極めて興味深い研究といえる。骨粗鬆症スクリーニング指標と骨粗鬆症診断歴および大腿骨骨折歴との関係について調査した。パノラマX線写真の皮質骨指標は未骨折の骨粗鬆症患者診断と関連がみられた。しかしながら、大腿骨骨折との関連は認めなかった。
H24-3-18
題  目 黒毛和種牛の牛肉品質に関与する遺伝子多型の機能解析
研究者 米倉 真一
概  要 牛肉脂肪中の不飽和脂肪酸含量は美味しさに大きく影響している。近年、FABP4にはI74Vの多型が存在しており、FABP4I/I型の肉はFABP4V/V型のものに比べ、不飽和脂肪酸含量が高いことが明らかとなったが、分子機構は全く不明である。本研究ではウシ筋肉内脂肪前駆細胞株であるBIP細胞を用い、GFPを付加したFABP4I/I及びFABP4V/Vを過剰発現させ、両発現細胞の違いを検討した。両発現細胞における不飽和脂肪酸割合を調べたところ、FABP4I/IはFABP4V/Vに比べ、不飽和脂肪酸量 / 飽和脂肪酸量が優位に高く、in vivo結果と一致した。また、FABP4の遺伝子型により、核移行量に違いが生じていることが明らかとなった。すなわち、遺伝子型により不飽和脂肪酸合成に関連する遺伝子の転写活性能に差が生じ、その結果、不飽和脂肪酸含量の違いを生み出す可能性が示唆された。

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