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平成25年度 研究概要 (第1部門)

H25-1-1
題  目 シレイコタルサナギ属の分子系統分類学的研究
研究者 パルゲルゲイ パルナ/Pa'll-Gergely Barna
概  要 本研究は、種数に占める左巻の割合が高いトルコ半島の有肺類に着眼し、トルコ半島に固有のシレイコタルサナギ属の系統進化の歴史を知ることを目的として行った。軟体動物門の有肺類は、カタツムリとナメクジから成るが、ほとんどは殻をもち、右巻きか左巻きに巻いている。世界の多くの地域で左巻の種数は1%前後であるのに対し、トルコ半島では5.3%に至る。これまで、本属のような尖り型の種群の場合、その交尾様式ゆえに、空間的に隔離された小集団が左巻遺伝子に固定するだけでは生殖的隔離は完成せず、遺伝的に分化した系統の進化には結びつかないと、数理モデル解析により予測されてきた。しかし、本研究の結果、左巻遺伝子に固定することにより遺伝的に別個の系統が新種として進化することが少なくとも2回生じていることが本属の分子系統解析により判明した。発生の左右を決める単一遺伝子が種分化遺伝子として機能していることが明らかである。
H25-1-2
題  目 有肺類の左右反転変異に関する進化生態学的研究
研究者 石崎 悠人
概  要 本研究は、左右反転変異体の交尾成功率を実測し、野生型との交尾成功率の差異に起因する自然淘汰圧を知ることを目的として行った。カタツムリ・ナメクジなどの有肺類では、交尾器は、体の正中線にはなく、首の横にある。右巻の場合には、交尾器は右側にある。左右逆に発生して左巻になると、交尾器の位置も左右反転し、左側に位置する。このため、カタツムリでは右巻と左巻の交尾は物理的に難しいことがわかっている。だが、水中では陸上よりも、相手の交尾器の位置に合わせた行動をとることが容易である可能性が高い。この場合、逆巻に発生した変異体の交尾成功率が相対的に高いことになり、左右反転に起因する自然淘汰圧が低いことになる。本研究の結果、陸上で交尾する種類と比べ、逆巻変異に対する選択圧は低いことがわかった。しかし、水界の集団であっても左右反転変異は正の頻度依存淘汰圧を受けており、中立な変異ではないことが明らかである。
H25-1-3
題  目 花粉媒介者の違いはウツボグサの花形質に地域変異をもたらすのか?複数山域における検証
研究者 江川 信
概  要 本研究では、ウツボグサの花サイズの違いが、送粉者マルハナバチ相の地理的な違いに対応して生じているかどうかを、複数の山域で確かめることを目的とした。  ウツボグサの花サイズと送粉者を4山域23地点で調べた。その結果、高標高ほど花筒長が小型化する傾向が見られ、高標高で小型のハチ種が優占する結果と合致した。しかし各地点のマルハナバチ類の平均口器長とウツボグサの花筒長には有意な相関が認められなかった。他年次での調査ではウツボグサの花筒長と訪花するマルハナバチの口器長については有意な相関が得られていること、および2010年に小型のハチ種が優占していた複数の地点において、2013年には大型のハチ種が多く見られたことから、送粉者相の年次変動が、2013年に花サイズとハチサイズが不一致であった理由の一つと考えられる。このことから、花サイズの違いがハチ相の違いで生じるかを評価するには、送粉者相の年次変動を考慮する必要が示唆された。
H25-1-4
題  目 山岳源流域に固有の原始的昆虫類(カゲロウ類・カワゲラ類)を対象とした分子系統地理学的研究
研究者 加藤 雄登
概  要 本研究で対象とした源流棲の昆虫種群が利用するハビタットは、概して小規模で不連続となることが多く、孤立散在する傾向が強い。つまり、遺伝子流動が生じる範囲も孤立・散在的であり、極めて限定的なパッチ状の個体群構造をとりがちとなる。また、各個体群の規模が小さいことは遺伝的固定化を促進し、遺伝的浮動の影響を強く受けるため、個体群レベルでの遺伝的分化の傾向が強まるものと予想される。このような種群を対象とした個体群レベルでの遺伝的構造は、地史や系統進化史を大きく反映している可能性が高く、本研究で対象としたオビカゲロウBleptus fasciatus、ノギカワゲラ類 Yoraperla spp. Cryptoperla spp. における分子系統地理学的解析の結果、予想されたような地域個体群レベルでの大きな遺伝的分化が認められるとともに、日本列島の形成史とも深く関連するような興味深い結果が得られた。
H25-1-5
題  目 歯周病治療に漢方薬を応用するための基礎的研究
研究者 喜多村 洋幸
概  要 歯周病などの口腔領域の炎症症状を改善するために漢方薬を使用する例が報告されているが、そのメカニズムは不明な点が多い。本研究では歯肉線維芽細胞を用いた実験系で、代表的な漢方薬である葛根湯の抗炎症作用のメカニズムを検討した。 ヒト歯肉線維芽細胞をLPSおよび葛根湯を組み合せて24時間刺激し、産生されたプロスタグランジンE2(PGE2)量を測定した。葛根湯はLPS刺激によるPGE2産生量を濃度依存的に減少させた。葛根湯はCOX活性およびアラキドン酸カスケードの分子発現に対しほとんど影響を示さなかったが、細胞内情報伝達系の1つであるERKの活性化を抑制した。活性化型ERKはホスホリパーゼA2を活性化し、結果的にPGE2産生量を増加させる。したがって葛根湯の抗炎症作用はERK(およびその上流)の活性化を抑制することであると考えられた。 以上の結果から、葛根湯が歯周病の炎症症状を改善することが期待される。
H25-1-6
題  目 千曲川中流域における冬季のワンド等における魚類の越冬状況と水温の関係
研究者 齋藤 信
概  要 千曲川中流域の魚類の越冬場所を明らかにし、どのような環境が魚類の冬期間の越冬場所となっているかを明らかにするための調査を実施した。 調査の対象としたのは、千曲市の大正橋(89km)から、坂城町の鼠橋(87km)にかけての千曲川であり、「うけ」をかけ魚を捕獲した。また、捕獲場所を中心とした水深と水温等を測定した。  調査の結果、10種4,432個体の魚類が捕獲された。捕獲された魚の推定合計湿重量は、137.15kgであった。越冬場所となっていたのは、いずれも湧水が湧き出している水温が本流よりも高い場所で、かつ適当な隠れ場があり、流れがないかあっても緩い場所であることが分かった。また、これら3つの条件を満たしている場所は、その場所の水深等の環境条件により当歳魚、稚魚、成魚が使い分けていることが分かった。
H25-1-7
題  目 天体観望会に関する県内調査と本物の星空を見上げる教育普及活動における可能性の検証
研究者 齊藤 秀樹
概  要 現在、都市部では星空を見ることができないと思っている人が多い。そのため山の中にある公開天文台などの社会教育施設を利用する人も珍しくない。しかし、公開天文台は立派な設備を持ちながらも地理的な条件から十分に活用されているとはいいがたい。一方で、望遠鏡を備えている科学館や博物館などは都市部にある例が多く、見学者は多いのに天体画像取得には悪条件にある。そのような現状がある中で、近年の天体観望会の動向として、街中での天体観望会が盛んに行われてきている。観望対象は限られるが、アクセスが良い都市部であるからこそ多くの人と会え、人が集まるという利点を活かした魅力がある。ここでは、これまで私が関わってきた、天体観望会について紹介する。人と人とのつながり、連携スタイルを考え、天体観望会が誰でもできる、魅力ある生涯学習であることを紹介したい。
H25-1-8
題  目 熱戻り反応型蛍光性メカノクロミック分子設計指針の確立
研究者 狭川 雄大
概  要 近年、有機固体において、力学的作用による分子配列の変化に起因した蛍光色変化を示す蛍光性メカノクロミズム(ML)について多くの研究が報告されている。しかしながら、比較的弱い相互作用で形成されている有機固体中における反応動力学に関する知見は充分に得られていない。本研究では、ML分子としてジベンゾイルメタンホウ素(BF2)錯体に着目し、アモルファス(無秩序)相から結晶(秩序)相への相転移における反応速度解析および熱分析に基づいて反応座標図を作成し、熱戻り反応過程の詳細を明らかにすることを目的とした。熱戻り反応速度の温度依存性からArrheniusおよびEyringプロットに基づき遷移状態の活性化エンタルピー(△H≠)とエントロピー(△S≠)を算出した。また、示差走査熱量測定から結晶化エンタルピー(ΔHc)とエントロピー(ΔSc)を算出した。これらの熱力学量変化から熱戻り反応過程において水素結合および積層構造は重要な因子であると結論づけた。
H25-1-9
題  目 スケールの異なる環境傾度に応じたシダ植物の無配生殖種の分布パタンの解析
研究者 田中 崇行
概  要 シダ植物の多様性と進化にとって、無配生殖(無性生殖の一つ)という繁殖様式は重要な役割を持つ。しかし無配生殖の多様性に影響を与える要因は明確ではなかった。これまで申請者は、長野県の標高に沿った無配生殖の多様性調査から、暖温帯という気候が無配生殖の多様性に影響する可能性を示した。本研究では異なる山岳域でも同様の影響があるかを調べるため、亜熱帯要素を含む山岳域の調査を行い、亜熱帯要素を含む標高では無配生殖率が下がり、暖温帯域の標高で最も無配生殖率が高いことを示した。また、多様性に関わる要因は調査するスケールで異なるため、より狭域の調査を実施した。街中の乾燥した孤立林と近くの山麓に比べた結果、無配生殖の種数は同じだが、個体数は孤立林の方が多い傾向を明らかにした。これらの結果から無配生殖の多様性には、広域では暖温帯という気候が、狭域では乾燥した条件(土地利用)が関係していることが明らかになった。
H25-1-10
題  目 長野県北西部で発生した中世巨大地すべり群の発生原因と年代対比
研究者 畠山 幸司
概  要 巨大地すべりの発生原因は大地震か豪雨に限られる。また、地すべり堆積物に含まれる木片等の14C年代を測定すれば、その発生年代を知ることができる。これまでの研究で、鬼無里-小谷地域には多数の巨大地すべりが存在し、その多くが中世に発生していること、地震が原因の可能性が高いことが判っている。ただし、得られた年代値に約200年の差異があるため、発生年代が同一かどうかは確かめられていない。年代値が一致しない原因は、測定試料の多くが表層の失われた埋木のため、埋没年を正確に反映していない可能性がある。この研究の目的は、埋没年を反映しやすい葉や小枝の試料で年代を測定して年代精度を高め、年代測定例を増やして対比し、発生年代が同一かどうかを確かめることにある。2つの地すべりで14C年代を測定した結果、新たに調査した地すべりは残念ながら発生年がごく新しいことが判った。もう一方からは越後南西部地震(1502年)に近い年代値が得られた。
H25-1-11
題  目 長野県内のニホンツキノワグマの遺伝的構造:山塊間での遺伝的多様性の評価
研究者 早川 美波
概  要 本研究では、長野県ツキノワグマUrsus thibetanus個体群の遺伝的構造を究明することを目的に研究を進めてきた。日本におけるツキノワグマ集団は、西日本では生息地の孤立分断によって絶滅が危惧されている一方、東日本では基本的に分布域が連続し安定した個体群が維持されていると考えられている。特に長野県は約3600頭のツキノワグマが生息すると推定されており、ツキノワグマの重要な生息地の一つであると考えられる。一方、農林漁業被害や人身事故など多くの軋轢も生じており、特定鳥獣保護管理計画に基づく多くの取組が行われてきている。しかしながら、保護管理計画では、遺伝的背景に基づいたデータは用いられていないのが現状である。本研究では、nDNA MHC DQB領域 (270-bp) を対象として、長野県ツキノワグマ個体群の遺伝的構造の究明を試みた。
H25-1-12
題  目 日本から産出する新生代後期のサイ科化石の分類学
研究者 半田 直人
概  要 日本における新生代後期 (新第三紀〜第四紀) のサイ科化石を明らかにするため、静岡県浜松市および岐阜県可児市より産出したサイ科化石を調査した。これらの標本を記載し、国内外のサイ科との比較を行った。その結果、静岡県産のサイ科はRhinoceros属に比較される種類であると判明した。また岐阜県産の標本を再検討し、属種不明のサイ科およびサイ科以外の大型哺乳類と同定した。  日本の新第三紀には、中新世を通じてBrachypotherium属あるいはそれを含むTeleoceratini族の産出が認められた。また、鮮新世の化石記録がかなり不足していることが明らかになった。一方、第四紀には前期〜中期更新世に化石記録があり、Rhinoceros属およびDicerorhinus属の産出が確認された。これらの種類は同時期の中国大陸でも産出しており、当時の日本と大陸との間でサイ科の種構成が類似していたことが示唆される。
H25-1-13
題  目 掌蹠メラノサイト系病変におけるカドヘリン発現の解析
研究者 皆川 茜
概  要 掌蹠(手のひらと足の裏)の悪性黒色腫と色素細胞母斑の鑑別には、皮膚表面を拡大して観察するダーモスコピーという診断法が役立つ。悪性黒色腫では指紋の凸(皮丘)に色の濃いパターン、色素細胞母斑では指紋の凹(皮溝)に色の濃いパターンが観察される。その機序を解明するため、細胞接着因子のひとつであるEカドヘリンの発現に注目して解析を行った。結果、早期の悪性黒色腫と色素細胞母斑の両者で腫瘍細胞の表面にEカドヘリンの発現が見られた。ただし、色素細胞母斑のうち小児期に発症したものではEカドヘリンの発現がやや減弱していた。また、皮溝に一致する表皮では表皮全層で表皮細胞にEカドヘリンの発現が見られたのに対し、皮丘に一致する表皮では基底層付近でEカドヘリンの発現が見られない箇所があった。腫瘍細胞の性質や、腫瘍細胞とそれを取り巻く表皮細胞との関係によって、ダーモスコピー所見が形作られていると考えられた。
H26-1-14
H26-1-15
H26-1-16
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