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平成25年度 研究概要 (第3部門)

H25-3-1
題  目 異常フェブリノゲンSumida(A α 472Cys→Ser)の機能解析
研究者 新井 慎平
概  要 <動機> Fbg異常症は出血症状や習慣性流産、創傷治癒不全など様々な臨床症状を呈し、患者予後・QOLを高めるためにも詳細な機能解析をすることは重要である。今回、我々はFbgAα鎖472番アミノ酸のCys(TGT)がSer(TCT)に変異したヘテロ型異常Fbg症例の機能解析を試みている。
<方法・成果等> 本症例の変異plasmidをCHO細胞に形質導入して異常Fbg産生細胞を樹立した。細胞培養上清と細胞破砕上清のFbg濃度を測定したところ正常Fbg産生細胞に比べ亢進していた。また、SDS-PAGEによる蛋白解析より、アルブミンと結合したものとFbgの二量体が存在することが判明した。トロンビンによるフィブリン重合試験では正常Fbgに比べて重合能の低下が認められた。今後は走査型電子顕微鏡を用いてフィブリンfibar径を観察し、正常Fbgと比較する予定である。
H25-3-2
題  目 骨形成能力獲得のためのポリエーテル・ケトン表面構造の改良
研究者 伊東 清志
概  要 本研究の目的は、高分子化合物であるポリエーテル・エーテル0ケトン樹月旨(Poly Ether EtherKetone:PEEK)に骨形成能力をもたせ、それを脊椎変性疾患のインプラントに応用することであ る。PEEKはチタン等金属と比べて放射線透過性に優れ、また骨に岡1性が近いことから各種の医療用インプラントに応用され始めている。しかし従来からのインプラントと比較して自己骨の形成が悪い。この知見に基づきPEEKの表面構造を変化させることで骨形成能力をもたせ、最終的にチタンに替る「高自己骨形成性PEEKlを開発することを目標としている。 (1)PEEKが骨形成能を持つように、電荷をもたせるなどの方法で表面の物性を変化させる。 (2)それらの方法の中で、骨誘導に最も有利な方法を探索する。現在(1)を施行している。もともとPEEKは、非常に安定したプラスチックであるため、表面の化学的な加工が非常に難しいことが分かつた。表面の荷電方法および側鎖の置換によるCa2+集積方法は確立された。
H25-3-3
題  目 大腸の恒常性を維持するしくみにおける活性酸素産生酵素Nox1の役割の解析
研究者 加藤 真良
概  要 活性酸素産生酵素NADPH oxidase (Nox) 1は大腸での発現が特徴的なタンパク質であり、その生成物活性酸素を介して細胞増殖、生存を正に制御する。Nox1は大腸においてその機能を異常に発揮することで、大腸の癌化に寄与すると考えられている。大腸は恒常性が乱されやすく、大腸炎や大腸癌といった疾患になりやすい。大腸の恒常性をより深く理解することは大腸疾患の予防や治療につながると考えられる。本研究はNox1欠損マウスを使い、大腸炎の回復過程を調べることでNox1の生理的役割を見出し、大腸の恒常性のしくみをより深く理解することを目的として行われた。その成果として、Nox1欠損下では大腸での細胞増殖が抑えられ、細胞死が起こりやすくなることが分かった。また細胞運動性も低く、細胞分化が遅れることも分かった。これらのことから、大腸炎の治癒時の組織回復に必要な細胞増殖、生存力、分化能にNox1が寄与することが示唆された。
H25-3-4
題  目 上高地の小流域における河川水質変動と河川水質に与える地質の影響
研究者 倉元 隆之
概  要 上高地地域の水循環を正しく理解するためには、湧水および河川水質の形成機構を把握することが重要となる。本研究では流域が近接し地質の異なる河川において、河川水の通年観測を実施し、各流域の河川水質の季節変化明らかにするとともに、流域間での河川水質や流出特性の違いを明らかにすることを目的とした。 調査対象流域は、善六沢と清水川である。2013年4月から2014年2月に定期的に調査を実施した。採取した試料は、pHと電気伝導度、主要イオン濃度を測定した。 善六沢と清水川の河川水質組成を検討した結果、両河川の水質組成は大きく異なっており、善六沢は、陰イオンに占めるSO42-が最も大きく清水川ではHCO3-の割合が最も大きくなっていた。両流域にもたらされる降水の化学特性などが大きく異なるとは考えにくい。清水川が湧水起源であることを考慮すると、河川水質に影響を与える要素として、表層地質の違いが大きいのではないかと考えられる。
H25-3-5
題  目 コムシ目の分類学的研究 −多様性把握のための手法確立を目指して−
研究者 関谷 薫
概  要 コムシ目は土壌生活性の原始的な六脚類(広義の昆虫類)の一群である。日本のコムシ目相については、 Silvestri 1928, 1931 の二つを除いてほとんど研究が行われてこなかった。また、長野県内のコムシ目相の記録は存在しない。本研究では県内から得られた標本を元に種同定を行い、長野県からコムシ目ハサミコムシ亜目ハサミコムシ科 1 属 2 種、ナガコムシ亜目ナガコムシ科 3 属 8種(うち、未記載属 1 属、未記載種 7 種)を確認した。本研究によって多数の未記載種が発見されたことから、コムシ目の多様性がこれまで考えられているよりも遥かに大きいことが示唆された。また、コムシ目のDNAバーコーディングを目的に、“非破壊的 DNA 抽出法” の確立を目指し研究を行い、コムシ目に最適なプロトコルを作成することができた。これにより、形態を損傷することなく DNA 抽出し、形態標本を作成することが可能となった。
H25-3-6
題  目 クルミポリフェノールの各種消化酵素
(アミラーゼ、グルコシダーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ)に対する影響
研究者 戸井田 英子
概  要 本研究は申請者のこれまでの研究をもとに、クルミのポリフェノール成分の各種消化酵素に対する影響について、in vitoroで明らかにするとともに、クルミのポリフェノールの機能性を生活習慣病の予防・治療や健康増進に貢献するための基礎的データを得ることを目的とする。試料は国産クルミ(ペルシャクルミの変種、シナノクルミ)、輸入クルミ(ペルシャクルミ)、輸入むきクルミとした。粉砕したクルミは脱脂し、70%メタノール溶液で抽出し、粗ポリフェノール抽出液を得た。α−グルコシダーゼ阻害活性測定はラット小腸アセトン粉末を0.1M リン酸カリウムバッファーに懸濁し、調製を行い、AGH溶液を得た。 粗抽出液のIC50値を求めたところ、国産クルミ、輸入クルミの酵素阻害活性は大きな差が見られなかった。むきクルミは他の試料区と比べて阻害が弱い。今後は再現性を試すことと、他の各種消化酵素での影響をしらべたい。
H25-3-7
題  目 上田盆地形成史からみた上田泥流の堆積年代の決定
研究者 富樫 均
概  要 この研究は、上田城跡の土台をなす上田泥流堆積物が、何時、どのように形成されたものかを明らかにすることを目的として実施した。上田泥流は火山性の巨礫を乱雑に含む特異な岩相をもつことから、千曲川上流部に分布するいずれかの火山体からもたらされた岩屑なだれによる堆積物と考えられる。しかし、その形成時期や給源は不明であった。本研究では、上田盆地の地形発達史に基づく新たな発想により、上田泥流の堆積年代を特定した。上田泥流の堆積時には、きわめて短時間のうちに千曲川の支流河川が閉塞されたことにより、一時的に上田盆地北部に小規模な湖沼もしくは湿地が形成されたと考えられる。そこで、その湿地堆積物を対象にボーリング調査を行い、湿地堆積物の記載と試料採取、2試料による放射性炭素年代測定をした。その結果、上田泥流の堆積時期を、今から約2 万2千年前の直前にまで絞り込むことができた。
H25-3-8
題  目 絶滅危惧種シナイモツゴの遺伝的多様性の評価とDNA診断手法の開発
研究者 中野 繭
概  要 シナイモツゴPseudorasbora pumila pumilaは、絶滅危惧種IA類、ならびに、長野県指定動植物保護条例の対象種に指定されている小型コイ科魚類である。申請者は長野市生息地において、寄生虫Clinostomum complanatumに感染するシナイモツゴが近年急速に増加していることを多数発見しており、本研究では本生息地における感染率を精査するとともに、免疫機構を司る主要組織適合遺伝子複合体(MHC)遺伝子の塩基配列解析により遺伝的多様性を診断する手法の開発を試みた。9か所のため池において感染率の測定を行った結果、全ての個体群で感染が確認され、感染率は1.61〜100%(平均57.68%)であった。これまでにMHC遺伝子を含む391bpの塩基配列を決定することに成功し、9つの遺伝子型を確認した。今後、解析個体数を増やし、寄生虫感染率と遺伝的集団構造の関係性を考察する予定である。
H25-3-9
題  目 中部山岳域におけるマルハナバチ種組成の標高間変異に対応した花形質変異の検出
研究者 長野 裕介
概  要 植物は花粉を媒介する様々な送粉者に対して適応することで多様化してきた。本研究では、同一の送粉者種群に送粉される複数植物においてその花サイズの地理的な変異を比較した。これにより送粉者種組成の変異が複数植物の花サイズの変異に影響を与えているかについて検証した。マルハナバチ類に送粉を依存すると考えられる8種の植物種を選定し、複数地点で花サイズの測定及び送粉者の観察を行った。その結果、それらの植物種間で異なる地理的な変異パターンが観察できた。広い標高帯に分布し、複数のマルハナバチ種に訪花されていた植物種は、マルハナバチ種組成の変異と対応した花サイズの変異がみられた。一方で、地点間で同じマルハナバチ種に訪花されており、花サイズの地理的な変異が小さかった植物種も見られた。これらのことは、花サイズの変異が各植物種の送粉者との関係性の違いに強く依存することを示唆している。
H25-3-10
題  目 情動への刺激が疼痛抑制系に及ぼす影響と内因性オピオイドの関与
研究者 中村 貴美
概  要 情動を司る扁桃体が生体内の疼痛抑制メカニズムに関与していることは明らかだが、その役割は解明されていない。本研究では、生体由来の鎮痛物質である内因性オピオイドに着目し、実験動物(ラット)を使用して、扁桃体に電気刺激を与えた時、末梢組織に侵害刺激(痛み)を与えた時、両方の刺激を与えた時の脳内の内因性オピオイド(β-エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィンA)の分泌状態を、免疫組織学的手法を用いて調べ、扁桃体と抗侵害作用の関係にオピオイドが影響しているかを明らかにすることを目的として行った。末梢組織に侵害刺激を与えると、扁桃体と中脳水道周囲灰白質でβ-エンドルフィンが有意に増加し、扁桃体に電気刺激を与えると中脳水道周囲灰白質のダイノルフィンAが有意に増加した。これらの結果より、情動が内因性オピオイドの分泌に影響を与え、その結果抗侵害作用が惹起されることが示唆された。
H25-3-11
題  目 Enterococcus 属菌 Small Colony Variants(SCVs)のチミジン要求性の原因解析
研究者 堀内 一樹
概  要 Small colony variants(SCVs)とは発育が遅く、寒天平板培地上で小型の集落を形成する細菌の変異株である。今回、臨床検体よりEnterococcus 属菌SCVsが検出された。本菌は発育にチミジンを要求することが判明し、一般的に行われている自動分析装置では菌種同定が実施できない。本研究では、@同定困難な本菌の遺伝子学的同定、Aチミジン要求性を示す原因として考えられるチミジル酸合成酵素をコードする遺伝子(thyA)の変異解析を行った。本菌は遺伝子学的にEnterococcus faecalis と同定された。また、thyA 変異解析では、遺伝子内部に乳酸菌類縁菌内で移動しているトランスポゾンに由来する817bpの一連の塩基配列が挿入されていた。本菌のSCVsの表現形質を示す原因はthyAが破壊され、チミジル酸合成酵素が機能しなくなった可能性が示唆された。
H25-3-12
題  目 日本アルプス山岳登山道を構成する環境色彩の分析
研究者 松村 哲也
概  要 我々は色彩に一定の意味を持たせて活用してきた。青や緑色は「安全」,赤色は「危険」といったものだ。また,看板などには視る者の意識を誘う「目立つ色」が,隠したい場合には「目立たない色」を用いる。こうした色彩の効果的な活用には,対象周囲の色彩を熟知しなければならない。たとえば紅葉の森の中では,目立つはずの赤い服も目立たなくなる。  本研究では、山岳環境における色彩活用策の基礎を築く一環として,南ア仙丈岳登山道を対象に,登山道を取り巻く環境を構成する色「環境色彩」を映像機器によって採取し,どのような色彩がどのような比率で分布しているかを明らかにした。 分析の結果,全512色中,出現率上位35色は白・灰・黒,緑色系,茶褐色系で構成され,総画素数の90%を占めていた。そして「目立つ」用途には分布の少ない黄,オレンジ,赤色,ピンク,スカイブルーが,逆に「隠す」用途には灰・灰緑・暗緑色の活用が適していることを考察した。
H25-3-13
題  目 ヘム合成経路に異常をきたしたStaphylococcus capraeの原因遺伝子の解析
研究者 松本 竹久
概  要 通常Staphylococcus属菌は、ヘム合成を行い、カタラーゼ酵素を活性化させ、活性酸素を除去し発育している。 今回、我々が分離したStaphylococcus capraeは感染症の原因として分離されたが、ヘムを合成できず、カタラーゼ酵素を活性化することができなかった。また、ヘム合成ができない異常な菌の感染症は、病院での日常検査において菌の同定・薬剤感受性試験結果が判定不能となることから感染症診療上問題となっている。 そこで、S. capraeのヘム合成関連酵素( hemB〜hemH )の7つの遺伝子酵素遺伝子を調べ、異常の存在するヘム合成関連遺伝子を同定するため、遺伝子変異の解析を行った。その結果、hemH遺伝子に1塩基欠失の遺伝子変異が存在することがわかった。本研究より、当菌株がヘムを合成できない原因にhemH遺伝子変異が関係していることが示唆された。
H25-3-14
題  目 咬合性外傷のMagnetic Resonance Imaging(MRI)による評価
研究者 三木 学
概  要 現在、歯の周囲組織の破壊が生じなければ、咬合性外傷(かみ合わせの負担により歯の周囲組織の破壊が生じる)は診断することができない。MRIを用いて歯根膜(歯とあごの骨をつなぐクッションの組織)の浮腫をとらえることにより、咬合性外傷の早期診断を可能にすることが、本研究の目的である。喰いしばりや歯ぎしりの癖のある患者20名を対象に、旧来の咬合性外傷に対する検査を行うとともに、MRIを撮像し、両検査結果の関連性を検討した。旧来の方法は咬合性外傷の有無だけで、その重症度を評価することはできなかったが、本研究で用いたMRIによる診断では、歯根膜部の浮腫の程度を数値で評価できるので、それを重症度とすることが可能である。旧来の検査法で咬合性外傷の所見がより多く認められる者は、MRIにおいても、歯根膜部の浮腫が著明に認められ、両検査結果には相関関係が認められ、MRIを用いた新しい咬合性外傷の検査法の可能性が示唆された。

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