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平成26年度 研究概要 (第1部門)

H26-1-1
題  目 糸魚川―静岡構造線活断層帯中部地域における断層運動と地形発
研究者 池田 一貴
概  要 糸魚川-静岡構造線活断層帯は日本国内でも有数の活動度の高い活断層である.中部区間は松本市の南部に位置する牛伏寺断層から諏訪湖周辺を通って諏訪郡富士見町の釜無山断層群へと続き,本地域の活断層は左横ずれを示している.とりわけ富士見地域には横ずれ断層の活動の累積によるものと考えられる地形が数多くみられるが,その地形の発達に関しては不明な点が多い. 本研究では釜無山断層群の累積的な活動に着目 して対象地域の地形の形成について議論した.その結果本地域は釜無山断層群によって,テクトニックバルジと呼ばれる船団状の小丘が数多く分布しており,その外縁を切るように活断層が分布していることが明らかとなった.また,一部のテクトニックバルジにはその長軸方向に横断する断層も確認され,断層の活動域がバルジの内側へと変遷していくような活動を示す可能性が高いといえる.
H26-1-2
題  目 ハナバチ類に寄生する地表性甲虫・ツチハンミョウ類の分子系統地理学的研究
研究者 大西 央士郎
概  要 本研究は、幼虫期にハナバチ類に取りついて移動する(便乗)ツチハンミョウ類Meloespp.の遺伝構造の究明を目的としておこった。本種群は翅が退化しているために飛ぶことができないが、幼虫期に飛翔能力をもつ昆虫に便乗することによって高い移動能力を有し、それを反映した遺伝的構造を示すと予想された。主な材料として用いたヒメツチハンミョウは種内の遺伝的分化が小さく、一貫して高い移動能力と広範囲での遺伝的交流が示唆された。メノコツチハンミョウとキュウシュウツチハンミョウは核DNAでもミトコンドリアDNAでも単一の系統(menokoクレード)を構成し、同種である可能性を強く示唆した。menokoクレードはヒメツチハンミョウとは対照的な遺伝構造を有しており、近縁な系統間でも遺伝的構造が大きく異なることが示された。また、形態的にも遺伝的にも既知の種と異なる特異な系統が検出され、未記載種である可能性が示唆された。
H26-1-3
題  目 中部山岳地域における地中性動物相の解明およびオオズナガゴミムシ亜属の進化系統学的研究
研究者 小粥 隆弘
概  要 近年、斜面土砂移動地に新種の地中生節足動物(特にオサムシ科ナガゴミムシ属)が多数生息することが分かってきた。本研究は、斜面土砂移動地における地中生節足動物相の把握、地中生ナガゴミムシ属の種分化プロセスの解明を目的とした。菅平周辺・八ヶ岳・南アルプス・奥秩父で、2014年に調査を行った。各山域の4〜8斜面土砂移動地を調査地とし(計28調査地)、各調査地に深度50 cmの穴を3〜8つ堀り、各穴の深度0・25・50 cmに地中トラップ(罠)を設置し、節足動物を採集した。節足動物門5綱16目30303個体を採集し、うち7科359個体が地中生だった。驚くべきことに、地中生の14種以上が新種の可能性があり、現在記載中である。地中生節足動物の多様性は、礫粒径が大きいほど、深い土壌ほど高くなることが明らかになった。地中生ナガゴミムシ属は5種27個体であった。現在、分子系統樹を作成しており、成果を今年度3月に行われる第62回日本生態学会で発表する。
H26-1-4
題  目 アウスランダー・ゴーレンシュタイン局所環の構成について
研究者 亀山 統胤
概  要 【研究の動機】20世紀における数字の発展の過程で、仮想的幾何学的対象などを表すものとして非可換環が見いだされた。そので申請者は数ある非可換環の中で非可換ゴーレンシュタイン環、特に、アウスランダー・ゴーレンシュタイン環という、様々な良い性質を持つ環に注目した。しかし、良い性質を持つ環でありながらその構成についてはあまり研究がなされていない現状を打破するべく、「アウスランダー・ゴーレンシュタイン環の構成」についての研究を始めたのが動機である【方法】(ア)アウスランダー・ゴーレンシュタイン環の例があまり知られていないので、体系的な構成法を与える事が必要である。(イ)(ア)を成すため、フロベニウス拡大と呼ばれる環の拡大の概念を使い、実際に新しい環を構成していく。【成果】上記に挙げた<2方法>を駆使することにより、今までに知られていなかった新しい「アウスランダー・ゴーレンシュタイン環」の例をいくつも構成することに成功した
H26-1-5
題  目 四阿火山東麓における中期更新世の火山活動史
研究者 桐生 和樹
概  要 長野県と群馬県の県境に位置する四阿火山は,四阿山 (2,354m) を主峰とする大型の成層火山である.その活動時期は先行研究により,5万年間の休止期をはさみ,約80~45万年前であったことが分かっている.しかし,どのような活動で火山体が成長したのか詳しいことは明らかになっていない.そこで,詳しい火山活動史の復元を目的として四阿火山東麓の野外調査を行い,柱状図を作成するとともに岩石薄片や鉱物プレパラートを作成し,溶岩や火山灰の特徴を明らかにした.その結果,約80~75万年前に噴出した溶岩流が広く山麓に分布していることやその溶岩流の噴出に関連し,多くの軽石やスコリアを噴出していることが明らかとなった.以上の成果によ り,火山の活動開始直後の約 80~75 万年前の間が非常に活動が活発な時期であったことがわかった.また,溶岩流を流すだけでなく,降下スコリアや軽石を形成する爆発的な噴火が何度もおこっていたことも明らかとなった.
H26-1-6
題  目 可微分写像の特異点論と低次元多様体のはめ込み理論
研究者 金城 就実
概  要 多様体と呼ばれる(局所的にはユークリッド空間と思えるような)図形に関する研究を行った.多様体について研究するために,その上の微分可能写像について調べることは自然なことであり,さまざまな研究が行われている.その中でもはめ込み写像という微分可能写像の幾何学的な分類に興味があり,「特異Seifert膜」を用いて研究を行った.特異Seifert膜とは,与えられたはめ込み写像の拡張であるような(ある条件を満たす)特異点を持つ写像である.特異Seifert膜の特異点の情報を用いることではめ込みの不変量を決定することが出来る.本研究では,Dynkin図形を用いて具体的に構成したはめ込みに対してその特異Seifert膜を構成し,はめ込みの不変量を求めた.良い性質を持つ特異Seifert膜を構成するために同境群を用いた.
H26-1-7
題  目 ジャポニカス分裂酵母Schizosaccharomyces japonicus の研究と食品への利用
研究者 坂本 乃里子
概  要 長野県千曲市は、日本一のあんずの里として知られており、春には一目数万本のアンズの花が咲き誇り、6月末から7月には様々な品種のアンズの果実が収穫される。平成23年度長野県科学研究費助成事業において、アンズ由来ジャポニカス分裂酵母Schizosaccharomyces japonicusを単離同定した。本酵母は、japonicusの名前が示すとおり、日本産の酵母で、糖質のアルコール発酵を行うことが分かった。その特性を活かしてパンの試作開発を行い、独特の風味があるパンの完成が近づいていた。ところが、ジャポニカス分裂酵母は、日本において、食品事例のない新規酵母だとの指摘があり、その調査研究を行った。その中で、信州産アンズから、新たに二種類の酵母を分離する事が出来た。『信州大実』からは香りの良い酵母が、『平和』からは発酵力の強い酵母が見つかった。これらの地域資源を地域の活性化につなげられるように、更に研究開発を進め、実用化を目指していきたい。
H26-1-8
題  目 地形発達史的アプローチによる高田平野東縁断層帯の新たな活断層像
研究者 清水 龍来
概  要 本研究対象地域が位置する北部フォッサマグナ地域では,地震時の地表変形が褶曲や撓曲などの長波長変形として出現する事例が確認されている.長波長変形の存在は逆説的には地下の断層形状の拘束条件であり,長波長変動地形の詳細を明らかにすることで,断層の地下形状や形成史の理解につながると考えられる.そこで,本研究では新潟県の保倉川,五十嵐川および刈谷田川流域において,長波長変形を累積的に記録する河成段丘に着目し,現地での露頭調査および火山灰分析によって,その形成過程を明らかにする。その上で地殻変動量の検出を行い地下構造との対応を考察する.その結果,保倉川流域では高田平野東縁断層帯の活断層地表トレースより数km東方で,高角化ないし分岐した高角な断層の存在が指摘できる。また,五十嵐川では,防科技研(2008)の反射法地震探査が示した地下構造と調和的な隆起速度分布が得られ,地下のランプ構造上で隆起速度が大きく(0.8mm/yr)高い活動度を持つ活断層であることが分かった.刈谷田川では,東山背斜の北部延長にあたる地域で約0.75mm/yrの隆起速度が得られ,活動度の高い断層が伏在している可能性を指摘できる.
H26-1-9
題  目 長野県木崎湖畔小丸山ロームの層序と更新世人類の痕跡
研究者 杉原 保幸
概  要 木崎湖畔に舌状に張り出す小丸山の地質・地形は更新世中期以降に基盤形成がなされた。その地表において大町デフラの一部が風成推積し形成されたものが小丸山ロームである。この度、その降灰時期(9万8千年前〜5万5千年前を中心)を現地でのトレンチ調査・試料採取、信州大学での化学分析等により確認することができた。一方、このローム層のトレンチ法面などから、人為により持ちこまれたとみなし得る剥片・礫片が多数出土・採取されている。日本の名だたる旧石器考古学研究者を訪れ、それらの実見を得るなかで人工物を含むとの好感触や激励をいただいた。また、USB 顕微鏡による詳細な観察から、いくつかの出土・採取品については人工物としての石器の特徴が確認できたので、木崎湖小丸山の石器群として、先の降灰時期の年代観による更新世人類の痕跡を確認できたのではないかと考えている。
H26-1-10
題  目 日本固有科である山岳性昆虫・ガガンボカゲロウ類における分子系統地理学的研究
研究者 竹中 將起
概  要 水生昆虫は,河川に沿った限定的な移動に制限される.さらに,源流域に適応した種群は下流域に適応した種群よりも個体群サイズが小さく,個体群間の遺伝子交流が制限され,それぞれの個体群間で遺伝的に分化する傾向にある.ガガンボカゲロウは地理的に遠く離れれば遺伝的にも大きく分化し,さらには近い距離であっても遺伝的に大きく分化し,地史の影響を強く受けている.中部山岳域は第四紀以降も活発に活動し,多くの山塊形成が今なお継続している.これらの山岳形成年代推定を目的とする研究も多い.ガガンボカゲロウの遺伝的分化の程度から,南アルプスの形成時期以降の遺伝的に大きく分化したことが示唆された.さらには,南アルプスに関わる本研究のように,地質学のみでは明らかにできないような,より詳細な形成プロセスも生物学と地質学を合わせることでより詳細な形成プロセスやそれに伴う進化生物学的が議論できることが示唆された.
H26-1-11
題  目 怒りの抑制を導く認知的メカニズムの検討 −反すうに注目して−
研究者 武部 匡也
概  要 【問題と目的】マインドフルネスとは, 今この瞬間の思考,感情,感覚を含む体験それ自体に十分かかわり,その体験のうつろいをあるがままに観察する無評価的な気づきの心のモードである(Marlatt & Kristeller, 1999)。Borders, Earleywine, & Jajodia(2010)は,マインドフルネスが, 過去の出来事に囚われないようにすることで怒りを緩和させるという効果を有することが示されている。しかし,Borders et al.(2010)では,怒り抑制と怒りを抱く頻度への影響性が考慮されていない。そこで,本研究では,マインドフルネスが怒り抑制と怒りを抱く頻度に対して有効であるか検討する。【方法】甲信越の大学生446名を対象に,質問紙調査を行った。【結果と考察】マインドフルネスは, 過去の出来事に囚われないようにすることで, 怒り抑制と怒りを抱く頻度を和らげることが示された。今後は, 本研究の結果を基に, マインドフルネスの怒りに対するエビデンスを積み重ねていく必要がある。
H26-1-12
題  目 中部地方領家帯、万古川中流域で見出されたシュードタキライト溶岩
研究者 手塚 恒人
概  要 シュードタキライトは、地学事典(平凡社)によると「断層運動などに伴う摩擦熱により母岩が融解・急冷して生成した黒色・緻密な脈状の岩石。」「融解は伴わず、衝撃的な粉砕により著しく細粒化したものとする考えもある。」とある。その後者に当たると思われる断層岩が長野県南部、万古川中流の花崗岩が分布する地域で見出された。この断層岩は、母岩にある角閃石・黒雲母を欠き、斜長石・カリ長石・石英などが融食形を示し、基質は緻密で見かけ上、チョコレート色をし、流動的で周りのカタクレーサイト中に注入脈として現れたり周辺のカタクレーサイトを捕獲したりしている。融解・急冷の証拠であるマイクロライトや杏仁状組織が見られないことから典型的なシュードタキライトではないが、シュードタキライトの可能性があるということで、シュードタキライト様岩として産状を報告し、シュードタキライトの研究の資料にすることにした。
H26-1-13
題  目 ストレスによる内因性オピオイドの分泌変化
研究者 藤井 寿充
概  要 運動ストレスと血中の内因性オピオイドの関係は多くの研究により調べられているが、脳内の内因性オピオイドの分泌状態を詳細に調べたものは少ない。そこで本研究は、ラットを使用し、強度の異なる運動ストレスと不動ストレスを与え、脳内の内因性オピオイドの分泌状態を免疫組織学的手法を用いて調べている。トレッドミルを用いて、25m/分60 分運動を負荷すると内因性オピオイドが増加するという報告があるため、ローターロッド装置を用いて、トレッドミルと同様でラットを走らせる事を試みたが走行しなかったため、走行訓練(軽度4m/分−過度8m/分)を5日ほどさせ、運動の速度(過度、軽度)と時間(60分)条件(軽度6.6m/分‐過度11m/分)を設定した。また、不動固定によるストレスは、運動ストレス時間と同じ60分に設定した。各条件を7日間与えた直後、脳を摘出し、20μmの凍結切片を制作し、免疫染色を行っている。
H26-1-14
題  目 分子集合状態に依存する発光特性を利用した有機結晶生成過程の研究
研究者 藤森 準一
概  要 多形を制御し望みの結晶形のみを得ることは結晶工学の観点からも重要である.我々は会合誘起増強発光(AIE)現象を示す分子を含む溶液の溶媒蒸発にともなう蛍光変化から結晶生成過程を追跡可能であると報告している.そこで本研究では,多形およびAIEEを示す分子としてジシアノスチルベン誘導体(DBDCS)を適用した.溶媒蒸発にともなって形成されたニート膜は蛍光を示さず,紫外光照射にともない緑色の蛍光を示した.この蛍光色は結晶のそれと類似しており,相転移現象であると考えられる.本研究では,結晶生成過程に関する知見を得るために,DBDCSニート膜の光照射にともなう蛍光変化について検討した.紫外光照射にともなう蛍光スペクトル変化から,緑色結晶が生成されていると考えられた.分子構造の観点から評価するためにIRスペクトルを測定した.この結果,アモルファス的な分子配列から結晶相への相転移によって,蛍光を示したと考えられた.
H26-1-15
題  目 成長関数を基盤とした理論幹曲線式の現実林木への適合性評価
研究者 守口 海
概  要 林木の細りは伐採時の収穫予想の基礎として重要であるが、その資料である細り表の調整には多数のデータを必要とする。 井上ら(2001)は既往の知見から、直径、樹高および幹材積から細りを計算できる式を導いた。一方、Nagashimaら(1980)は樹高および直径成長に成長曲線を仮定した場合の式を導いており、一貫性の面で優れている。そこで本研究では、Nagashimaらの式が現実林木に適合するか、3本のカラマツから1本当たり20〜21枚の円盤を採取し、4方向の年輪幅を計測したデータを用いて評価した。その結果、伐採時の皮なし直径に関する適合性は、成長曲線のパラメータを樹高によらず一定とした場合、井上らの式と比較して低かった。 成長曲線のパラメータは樹高により変化すると仮定すると、適合性は向上した。円盤採取位置が高い場合は推定が不安定であったが、成長曲線のパラメータの大小には林木サイズと関係が認められた。
H26-1-16
題  目 人間生活環境下での活動を想定した二足ロボットの最適歩行動作生成
研究者 山口 貴也
概  要 先進国の中でも日本は特に高齢化と過疎化が進行しており、今後介護を必要とする高齢者の大幅な増加が予測される。このような高齢化の介護に対する長期的な対策として人間型ロボット(二足ロボット)による生活支援が挙げられる。一方で、人間の居住空間には階段・家具などをはじめとした様々な障害物が存在し、これらの存在は二足ロボットの活躍の場を限定的にしている。そこで、本研究では任意の障害物に対し、適切な動作パターンを歩行速度と消費エネルギーに基づいて自動生成するロボットの歩行シミュレータおよびアルゴリズムの開発を目的とした。 開発したアルゴリズムを用いて障害物回避歩行パターンを生成し、その有効性が確認した。これにより人間の生活空間を想定した障害物環境下において動作中のロボットの意思決定が可能となった。今後は、8次元モデルを用いて階段昇降動作や旋回動作といった動作生成を行う予定である。

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