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平成26年度 研究概要 (第3部門)

H26-3-1
題  目 時計遺伝子と長寿遺伝子の発現相関は、糖代謝調節に関わるか?
研究者 浅野 公介
概  要 本研究は、Sirtuin(Sirt)とSHARP-2 遺伝子が関わる発現調節機構の解析を行い、肝臓での糖代謝調節における両遺伝子群の発現相関を明らかにすることを目的とした。SHARP-2は、肝臓でのインスリンによる糖新生抑制に関わる転写因子であり、時計遺伝子としても機能する。一方、長寿遺伝子であるSIRTは、肝臓において絶食時に活性化し糖新生を促進する。まず、ラット高分化型肝癌細胞株であるH4IIE細胞をSIRT ファミリーの阻害剤で処理した結果、SHARP-2mRNA量が濃度依存的に増加し、また、この誘導は2時間で最大ピークに達した。さらに、SHARP-2がSIRT1遺伝子のプロモーター活性に影響を与えるかどうかを検討した結果、 SHARP-2は、SIRT1遺伝子特異的にプロモーター活性を低下させることが明らかになった。
H26-3-2
題  目 日本産ゴマシジミ類の寄主アリ特異性の検証
研究者 上田 昇平
概  要 ゴマシジミ属のチョウは幼虫期をアリの巣内で過ごすという特殊な生態を持ち,絶滅危惧のフラッグシップ種として世界的に注目を集めている.これらの蝶の絶滅の主要因は生息地から特定の寄主アリ種が激減したことであるとされる.日本産ゴマシジミ属のゴマシジミとオオゴマシジミの寄主はシワクシケアリとされてきたが,申請者らはDNAを用いた研究から,本アリ種が形態で判別できない4つの遺伝的系統に分かれることを明らかにしてきた.本研究では,DNA解析を用いてゴマシジミの隠れた寄主アリ特異性を検証し,ゴマシジミとオオゴマシジミはそれぞれ異なアリ系統に寄生することを明らかにした.日本においても寄主アリ種(系統)の減少がゴマシジミ属の絶滅要因となっている可能性があり,本研究の結果は,日本産ゴマシジミ類の保全を進める上で,特定の寄主アリ系統に好適な環境を維持することの重要性を示唆した.
H26-3-3
題  目 高校サッカー選手の食生活等実態及び母親の働き方と健康に関する調査
研究者 大森 恵美
概  要 「食生活バランスチェック票-3500kcal版-」と連動した質問紙を作成し、様々な高校サッカー部を対象に、選手における食生活と食事準備者の働き方に関する実態の把握を試みた。6高校1〜2年生170名を対象に、2015年1〜2月に質問紙とチェック票による調査を実施した。調査に参加した選手140名の食生活得点は9.9±2.0点/15点(平均値±標準偏差)であった。食生活の具体的な目標を設定できた者は134名であり、目標を1か月以内に実行したいと回答した者は124名であった。続いて、寮生12名を除く128名のうち食事準備者が母親であると回答した者は122名であった。このうち、働く母親は110名であり、フルタイム48名、パートタイム55名、自営等7名であった。また、フルタイムで働く母親のうち夕方6時半以降に帰宅する者は16名であった。今後は、食生活と食事準備者の働き方の関連について分析しつつ、監督が栄養教育を導入・継続する際に役立つ質問紙に改良していく計画である。
H26-3-4
題  目 透視度測定による河川水中の浮遊物質の簡易定量に関する研究
研究者 小澤 英明
概  要 河川の濁水は浮遊物質(あるいは懸濁物質)量(SS)として影響評価されるが、そのモニタリングは技術的専門家による水質分析に委ねられている。その一方で、一般論としてSSと相関が高い透視度は水の濁りを測る項目として環境学習・環境教育の場面などでも利用されている。 しかしながら、透視度とSSの関係は対象とする水の濁りの性状の違いによっては一律な関係を示さず、透視度は濁りの感覚的な指標として実用的とされるにとどまっている。そのため、一般市民でも可能なモニタリング手法の開発を目的として、河川水の透視度とSSの関係を詳しく検討した。ダム下流河川の裾花川を対象として、非専門家の市民等でも利用できる身近な測定項目の透視度を測定することにより浮遊物質量(SS)をより正確に把握する方法を研究した。
H26-3-5
題  目 streptococcus anginosus のプロリルトリペプチジルペプチダーゼの産生と酵素学的特性の解析
研究者 木曽 有紀子
概  要 歯周病細菌の1つとして注目されているPrevotella intermedia ATCC 25611株のタンパク質分解酵素は歯周組織の炎症を惹起し、歯周病の病原性因子の1つと考えられている。そこで、本細菌プロテアーゼの産生およびその性状についてアゾコルを酵素基質として解析した。嫌気度の違いが本細菌の酵素産生に及ぼす影響を解析するため嫌気ボックスとアネロパック(三菱ガス)を用いた嫌気ジャーによる培養を行ったところ、嫌気ボックスによる培養が増殖も速く、酵素の産生も多かった。酵素活性は菌体内に認められず、培養上清中に認められた。酵素産生は培養開始直後から開始され、定常期まで続いた。この酵素産生は培地にグルコースやフルクトースを加えると強く抑制され、スクロースでは中等度の、ガラクトースでは弱い抑制が観察された。温度感受性を解析したところ60℃、20分の加熱で失活し、EGTA, Zn2+, Cu2+, では活性が阻害されるが、アンチパイン、SDS, TPCK, Ca2+, Mg2+による活性阻害は確認できなかった。
H26-3-6
題  目 「フラボノイド系色素で染色されたセロファンおよび試験布の光吸収特性―色相・濃度変化と紫外線遮蔽性(UPF)の関係―」
研究者 小林 優子
概  要 市販の繊維製品に紫外線(UV)カット表示が多くみられるようになった。紫外線遮蔽効果は繊維の色や繊維の種類に影響される。繊維の染色には合成染料が使われ、生地に紫外線吸収剤が後加工されている製品が多い。自然界における紫外線からの防御については、植物色素のアントシアニンが紫外領域の光を吸収することで植物自身を守ると考えられている。そこで、植物色素の繊維上における紫外線遮蔽性に注目した。平成22年度の研究で、タマネギ外皮抽出液で染色した布に紫外線遮蔽性能(UPF)*1が認められ報告した。本実験では、繊維の織の影響などをなくすため、セルロースフィルムを用いて実験を試みた。セルロースフィルムを30±1℃で染色し自然乾燥させ、紫外可視分光光度計で透過率を測定した。その測定値からUPF値を算出した。市販のアントシアニン色素(赤キャベツ、紫イモ)で染色したセルロースフィルムは、UV-B領域の透過率が低く遮蔽性が示唆された。染色された絹布と比較すると、セルロースフィルムは色素吸着量が低い。しかしわずかな色素染着でも紫外線遮蔽性がみられた。 *1紫外線防御係数、皮膚への紫外線防御性能を表す
H26-3-7
題  目 表面化学処理によるアルミナセラミックスの生体親和性の向上
研究者 竹内 あかり
概  要 アルミナセラミックス (Al2O3) は、機械的強度が高く、化学的安定性にも優れているため硬組織修復材料として用いられている。アルミナはその優れた化学的安定性により生体内で毒性は示さないが、生体はこれを異物として認識して繊維性皮膜でカプセル化するため骨と直接結合することはできない。本研究では、骨結合性材料が生体内で骨と結合するメカニズムに基づいて、アルミナ表面をリン酸イオンやカルシウムイオンで表面修飾すると、アルミナが骨結合性を示すようになるのではと考え、アルミナの表面処理条件を検討した。リン酸水溶液あるいは塩化カルシウム水溶液にアルミナ板を浸漬して、種々条件で熱処理し、洗浄した後、アルミナ板の表面を分析した。その結果、アルミナをH3PO4, NaH2PO4 水溶液、あるいは塩化カルシウム水溶液中で水熱処理すると、その表面をリン酸イオンやカルシウムイオンで表面修飾できることがわかった。
H26-3-8
題  目 悪性リンパ腫における腫瘍細胞の形態学的特徴の観察と遺伝子染色体検査データの蓄積によるデータベース作成の試み
研究者 竹澤 由夏
概  要 悪性リンパ腫はリンパ系組織から発生する悪性腫瘍であり、患者数、死亡者数とも増加傾向にある。病期の進行した症例では、末梢血液中にも腫瘍細胞が浸潤する。腫瘍細胞の特徴は様々で、多彩な形態を示すため、鑑別が難しく経験を要する。そこで末梢血や骨髄に浸潤したリンパ腫細胞の形態学的特徴を画像に撮って観察し、同時に検査された項目の結果を解析し、データベース化を試みた。B細胞性腫瘍の5病型、15症例について顕微鏡下で静止画像を撮影した。染色体検査や細胞表面抗原検査が実施されたものについてはそのデータを集めた。またB細胞性腫瘍の中の慢性リンパ性白血病9症例について、免疫グロブリン重鎖遺伝子(IGH)について遺伝子解析を実施した。IGHについては、9症例中4症例がV4-34遺伝子で最も多く構成され、2症例では体細胞変異を認めず、予後不良であるという欧米での報告と一致した結果を得ることができた。
H26-3-9
題  目 ツリフネソウにおける訪花者の地理的変異が花サイズ変異に与える影響
研究者 服部 充
概  要 植物の適応進化に訪花者がどのよ う に影響するかを理解する上で注目する植物がどのような訪花者と関係を結んでいるかを明らかにし、その訪花者と花サイズの対応を明らかにすることは重要である。本研究では長野県内のツリフネソウにっいて、訪花者および花サイズを調査した。多くの集団でツリフネソウの主な訪花者はトラマルハナバチであった。この観察結果は、長野県における過去の報告と矛盾せず、長野県におけるツリフネソウの主な送粉者がトラマルハナバチであることを示している。 また、花サイズを測定した結果、集団間で花サイズは大きく異なっていた。花サイズは、高い標高に位置する集団ほど小さかった。このことは、ツリフネソウの花サイズが訪花者というよりもむしろ標高と相関する無機的環境(例えば、気温など)に影響することを示唆するかもしれない。今後、同一 集団において長期にわたって花サイズや訪花者を調べていく必要があるだろう。
H26-3-10
題  目 ZHX1変異遺伝子の生物学的役割の解析
研究者 羽石 歩美
概  要 嗅覚は、危険察知、食欲、味覚などに関連し、ヒトが生活していく上で重要な役割を担っている。したがって、嗅覚異常により生活の質は低下する。本研究では、先天性無嗅覚症患者家系に発見されたZlnc-;fingers andhomeobox;es 1(ZHX1)ミスセンス変異(R862P)造伝子の、生物学役割を検討したものである。ZHX1遺伝子は転写抑制活性を有しており、リプレッサードメインはアミノ酸の831-873であることが明らかとなっているが、検討の結果、ZHX1全翻訳領域およびリプレッサードメインのミスセンス変異は、ZHX1の転写抑制活性に影響を及ぼさないことが明らかとなった。また、ミスセンス変異がZHX1の細胞内局在に影響を与えるかどうか検討した結果、zHx1 全翻訳領域およびリプレッサードメインともに、細胞局在に影響を与えないことが明らかとなった。
H26-3-11
題  目 小児急性脳炎・脳症おける免疫学的プロフィール解析
研究者 本林 光雄
概  要 【緒言】サイトメガロウイルス(CMV)脳炎は造血幹細胞移植(SCT)後に見られる致死率の高い合併症の一つである。CD4陽性細胞は重要な免疫細胞で、エイズ患者でのCMV脳炎発症への関与が明らかにされたが、小児では不明である。当科で経験したSCT後CMV脳炎児における、CD4陽性細胞数など免疫学的背景について報告する。【症例】2か月時にCMV血症を契機に重症複合免疫不全症と診断された男児。ガンシクロビル(GCV)で一旦改善したが、移植後23日にCMV脳炎を発症。GCVとホスカビルの併用療法を行い、免疫抑制薬を減量。CD4陽性細胞数の増加に伴い軽快した。【考察】本例が救命できた要因として、免疫抑制薬を早く減量できたため、CD4陽性細胞数の回復が良好であったことが考えられた。【結論】今後研究を継続し、CD4陽性細胞数と病勢との関係を明らかにすることで、本症に対するより良い治療の開発に寄与したい。

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