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平成27年度 研究概要 (第3部門)

H27-3-1
題  目 千曲川流程に沿ったマダラカゲロウ類の群集構造および遺伝的構造の究明
研究者 JO JAEICK
概  要 マダラカゲロウ類(昆虫網・カゲロウ目)は、非常に種多様性に富んだ河川水生昆虫種群である。本研究では本種群を対象とした比較分子系統地理学的研究を実施した。日本列島・朝鮮半島・極東ロシアから採集したマダラカゲロウ類の遺伝子解析(ミトコンドリアDNA COI領域)を実施した。Drunella属のマダラカゲロウ類は全7種、Cincticostella属は全3種を解析対象として、遺伝的類縁関係を比較・検討した。Drunella属における遺伝子解析の結果、各々の種レベルでの単系統性が強く支持された。Cincticostella属における遺伝子解析の結果においても、各々の種レベルでの単系統性が強く支持された。オオマダラカゲロウおよびオオクママダラカゲロウは、どちらも上流域や渓流に分布する種群であるが、地理的な遺伝子構造は種間で大きく異なることも明らかとなった。
H27-3-2
題  目 高次元理論に基づいたインフレーションモデル
研究者 阿部 裕悟
概  要 本研究では、 我々の存在する4次元時空(空間3次元+時間1次元)の空間次元を拡張した高次元時空の理論を利用することで、インフラトンに関しての研究に進展をもたらすことを狙いとした。具体的には,5次元重力を含むゲージ理論に基づき、レイディオンゲージヒッグスポテンシャルを用いて、インフレーションモデルを構築し、プランク衛星による宇宙精密測定で得られているインフレーションパラメータの観測値を正しく再現した。モデルでは,ゲージヒッグスがインフラトンとしての役割を担う状況があることが確認出来、レイディオンとゲージヒッグス、両者のどちらが支配的であるかに部分的な決着を付けた。このモデルによる解析は世界でも初めての試みであり、高エネルギーの物理に対する重要な示唆を与える可能性が期待される。
H27-3-3
題  目 中枢性運動障害者における歯科治療時の過緊張緩和法の検討
研究者 伊沢 正行
概  要 脳性麻痺や頭部外傷後遺症などの中枢性運動障害者は、ストレスなどによって筋の過緊張や痙縮を起こすことがある。歯科治療のストレスによって起こる過緊張は治療自体を困難にさせるとともに、患者本人の苦痛となる。本研究は、理学療法の分野における緊張緩和法である上田法の効果を明らかにすることを目的とした。また、実施者の上田法熟練度による効果の違いを検討した。歯科治療のため来院した中枢性運動障害を有した患者を対象に、筋緊張を評価するため6種の筋に表面筋電図を装着し、上田法前後で行った歯面研磨時の筋活動量の変化率(%)を評価した。また、これを上田法の術者は熟練者、経験者、素人の熟練度の異なる3名で行い熟練度による変化率の差異を比較した。上田法実施により、6筋すべてにおいて活動量の減少傾向を認めた。活動量抑制効果は、熟練者のほうが非熟練者より高かった。しかしながら、非熟練者においても6筋群中5筋群で活動量の減少傾向を認めた。以上の結果から上田法は障害者歯科に広く応用でき、導入直後からその効果を得ることができる可能性が示唆された。
H27-3-4
題  目 笑気吸入は末梢血管調節を介し疼痛刺激時の昇圧応答を抑制する
研究者 磯野 員達
概  要 笑気吸入鎮静法(IS)は、現在、歯科治療で応用されおり、ISで疼痛時昇圧応答は抑制され、心拍数(HR)増加は減弱しないと報告されている。血圧調節はHRの他に末梢血管調節(TPR)が関与することを考慮すると、疼痛時昇圧応答抑制は末梢血管収縮の抑制によると予想される。しかし、ISが疼痛刺激時のTPRに影響を与えるかは不明であり、ヒト筋交感神経活動(MSNA)を直接測定することで、ISの疼痛時昇圧抑制はTPRの減弱を介して起こるかを検討した。結果は、収縮期血圧(SBP),HR,MSNAは、ベースライン(BL)時ではルームエアー(RA),100%O2,30%IS,40%ISの間に差はなく、疼痛時は全コンディションで上昇を認めた。疼痛時のSBP上昇はRAに対し40%ISで減弱していた。Burst Frequency(BF)は40%ISで有意に減少し、total MSNAは30%・40%ISの両方で有意に減弱した。HRの上昇はRAに対して30%・ 40%ISの両方で減少したが、心拍出量(CO)の変化はMSNAの変化に比べて小さかった。以上より、ISによる疼痛時昇圧応答の抑制はCOよりも, TPRに依存することが示唆された.
H27-3-5
題  目 廃プラスチックを利用した住宅の断熱改修工法に関する研究
研究者 岩井 一博
概  要 本研究は、廃プラスチックを利用した住宅の断熱改修工法に関する研究を行う。研究の結果、本年度は以下の事項が明らかになった。1)粉砕機を用いて廃プラスチックをチップ状に加工した。それをビニール袋に充填し、外壁、天井、床下の各部位ごとに厚さ100oの断熱材を作成した。2)気密測定器を使用し、実験小屋の断熱改修前後における気密性能を測定した。実測の結果、改修前の相当隙間面積は約9cm2/m2であったが、改修後は約4cm2/m2に気密性が向上した。3)長野県における持ち家の延べ床面積の平均値を154.6m2とすると、今回の断熱改修工法には概算で60m3の発泡スチロールが必要となることを明らかにした。4)実験小屋を対象に、温湿度及び内部発熱量のデータを取得した。また、暖房負荷シミュレーション計算による断熱改修前後におけるエネルギー消費量の比較を行った。その結果、約70%のエネルギー削減効果があることが分かった。
H27-3-6
題  目 静脈麻酔下における歯科処置において鎮静が困難になる要因をあきらかにする
研究者 岩崎 仁史
概  要 歯科治療困難な障害者に対し、しばしばプロポフォール(商品名ディプリバン)を用いた歯科治療を行っている。プロポフォール単独で用いる場合、血中濃度3.5μg/ml未満で鎮静が得られる者がみられる一方、血中濃度3.5μg/ml以上でも体動がみられる者も存在するが,その要因は明らかになっていない。本研究では、体動により歯科処置が困難になる者の要因を明らかにすることを目的に行った。対象者34名(男性名、女名)平均年齢37.6±12.4歳であった。開口器挿入から処置終了までの脳内濃度の中央値は3.0±0.6μg/mlであり、中央値で3.5μg/ml以上の者は10名認めた。項目間の関連性については、50歳未満・以上においてP=0.01、BMI(基準値)P=0.15、疾患(歯科恐怖症)P=0.001、疾患(自閉スペクトラム症)P=0.07であった。項目間の関連性において有意差を認めた項目についてロジスティック回帰分析を用いて脳内濃度3.5μg/ml以上になる要因は歯科恐怖症であった。
H27-3-7
題  目 ヒメマルハナバチによる二次的盗蜜がウツボグサの雌性適応度におよぼす影響
研究者 江川 信
概  要 盗蜜とは訪花者が花筒の基部に穴をあけ花の入り口以外のところから蜜を吸う行動のことである。盗蜜は植物の種子生産に対して負の影響を与えると考えられてきたが必ずしもそうではないことが明らかになりつつある。本研究では多年生草本のウツボグサについて、訪花者相の変遷を調査した後、盗蜜者がウツボグサの結実におよぼす影響の評価を試みた。調査の結果、ヒメマルハナバチの雄による激しい盗蜜が観察された(他のマルハナバチの正当訪花の10倍の頻度)。また、盗蜜を受けた小花の比率は開花期間中に変化し花期の最盛期に最も高く花期の終わりには低くなった。しかし、盗蜜にさらされた状態でも結実率は60%ほどで、柱頭に運ばれた花粉の量もA:自然訪花区(盗蜜痕あり)、B:自然訪花区(盗蜜痕なし)の処理区間で有意差は認められなかった。これらのことから、盗蜜のウツボグサの雌適応度におよぼす影響は限定的であることが示唆された。
H27-3-8
題  目 積雪地帯の森林における地上性シダの棲み分けと生物多様性への貢献について〜佐渡から新潟・長野・静岡まで〜
研究者 大杉 周
概  要 現在の日本の森林は、鹿の食害や管理放棄によって下層植生が荒廃しており、その再生が急務となっている。そこで林床の植生の重要な構成種であるシダ植物が森林の生物多様性にどのように貢献しているか、またどのような森林に多種のシダ植物が生息しているかを調べた。長野県松本市で、スギ人工林を中心としてその周囲の森林タイプごとにシダ植物の種組成を調査した。更に、日本海側の新潟県と太平洋側の静岡県でも同様の調査を行い、中部地域における長野県の林床のシダ植物の比較を行った。結果は@中部地域の全ての場所でシダ植物の出現頻度が高かったのはスギ人工林であった。しかし、A長野県ではスギ人工林以外の森林タイプでは、出現頻度が激減し、太平洋側の静岡県と同じ傾向であることが示された。
H27-3-9
題  目 高次元理論を用いた質量階層性の起源に関して
研究者 後藤 裕平
概  要 物質を構成する最小単位である素粒子の内、物質粒子は12種類存在する。宇宙誕生の瞬間、全ての粒子は質量を持たず、性質も同じで、全く区別が出来なかったと考えられている。しかし、現在発見されている物質粒子は、質量も性質も異なることが実験から分かっている。本研究では宇宙誕生直後、空間が3次元よりも大きい次元であったと考える高次元理論を用い、物質粒子の質量の再現の可能性を理論的に探索した。先行研究で、高次元空間に存在する1種類の質量ゼロの粒子から、現在発見されている粒子が3次元空間で全て現れるモデルを数多く見つけた。しかし、この研究では現れる物質粒子の質量は考慮していなかった。そこで、発見した多くのモデルの中に、発見されている物質粒子の質量を再現できるモデルは存在するのか、ということを調べた。特に、SU(9)という群に分類されるモデルに質量を再現できるモデルがあるかを探索し、存在することを確認した。
H27-3-10
題  目 がん化学療法に伴う味覚障害の検証と支援のあり方についての検討
研究者 座光寺 知恵子
概  要 がんの化学療法を導入した患者に対し味覚障害を検証する目的で、ろ紙ディスク法による味覚検査、インタビュー調査、血液検査、簡易型自記式食事歴法質問表(BDHQ)による食事調査を行った。対象者45名の中で味覚異常の訴えのあった患者は19名、自覚症状はないものの味覚検査で異常のあった患者は15名であった。味覚検査では塩味が有意に鈍化していた。味覚の鈍化の他、異味症(味覚の錯誤)食感の違和感による味覚障害も観察された。食事摂取量は味覚障害の訴えのあった患者が有意に減少していた。亜鉛の検査値は化学療法の前後では有意な変化はなく、開始前の低値が問題となるのではないかと推測された。支援方法としては味覚異常の症状を意識した個別対応をすることが必要であり、体重減少を抑え治療効果を上げるために、患者の満足度を上げる取り組みの他に、栄養量を確保する手立ても合わせて考えていくことが必要であると感じた。
H27-3-11
題  目 セルラーゼ強化酵素を用いたセルロース系バイオマスからの安価なエタノール生産
研究者 塩屋 幸樹
概  要 セルロー系バイオマスからのバイオエタノール生産は、クリーンかつ持続可能なエネルギー資源として期待されているが、その生産コストが問題となっている。そこで、本研究では、申請者らが開発した強力なセルラーゼ酵素を用いることで、セルロース系バイオマスからの安価なエタノール生産を試みた。本研究には比較的入手容易なスギをセルロース系バイオマスとして用いた。まず、開発酵素の糖化能を評価した結果、これまでの酵素(対照酵素)と比較し、少量で同等の糖化能を発揮することが示された。次に、開発酵素を用いたエタノール生産を行った。糖化後発酵法と併行複発酵法と異なる手法にてエタノール生産を行った結果、両発酵法において開発酵素と対照酵素は同等の糖化・発酵能示した。これらのことより、申請者らが開発したセルラーゼ酵素を用いることで、糖化に用いる酵素量を減少出来たことで、バイオエタノールのコスト低減に繋がることが期待される。
H27-3-12
題  目 口腔乾燥の要介護高齢者における窒息防止のための粘膜ケア法の確立安全かつ効率的な剥離上皮膜の除去法の検討
研究者 篠塚 功一
概  要 寝たきりの要介護高齢者では唾液が口の中の粘膜に介在せずに、粘膜が乾燥し、剥離上皮膜が形成されていることがある。それが気道(咽頭)にまで入り込むことにより、呼吸や発語に影響を与え、窒息の危険性も考えられる。臨床の現場では、口の中に剥離上皮膜が形成されている患者に対して口腔ケアを実施する際に、歯ブラシやスポンジブラシが推奨されていることがある。しかし歯科医師や歯科衛生士の行う口腔ケアの剥離上皮膜の除去法については明らかにされていない。本研究は、効率性と安全性の高い剥離上皮膜の除去法を確立する目的で行った。剥離上皮膜の除去は、軟毛歯ブラシが効率性、安全性で有用であったが、乾燥している剥離上皮膜ではピンセットも有用であった。剥離上皮膜の除去には、性状を確認し器具を選択する必要性が考えられる。また除去時に落下の危険性があるので、平識らが提唱するように吸引嘴管を併用することが適切であると考えられた。
H27-3-13
題  目 口腔扁平苔癬における上皮の形質変化
研究者 嶋田 勝光
概  要 【緒言】口腔扁平苔癬(OLP)は口腔粘膜に発症する難治性の慢性炎症性疾患で、病理組織学的には上皮の傷害性変化および異常角化を示す。本研究では角化を担う酵素Transglutaminase3(TGM3)と基質Small proline rich proteins(SPRs)をOLPで検索した。【材料・方法】両側頬粘膜に発症したOLP 9例をOLP群、正常頬粘膜5例を対照群とし、TGM3、SPR1aとSPR1bを一次抗体として免疫染色を行った。【結果】TGM3とSPR1aは対照群とOLP群ともに細胞質に陽性だが、OLP群では細胞膜にも陽性を示した。SPR1bは対照群の細胞質に顆粒状に陽性で核にも陽性所見を認めた。しかし、OLP群では細胞質全体に陽性を示し、核に陽性所見はみられなかった。【考察】SPR1bの核陰性所見はSPR1bを介したOLPの細胞増殖抑制に寄与する可能性がある。また、TGM3とSPR1aの細胞膜局在がOLPの角化に重要な役割をもつ可能性が示唆された。OLPの増殖抑制および角化異常に関する病態の一部を明らかにし、今後更なる検討を加えることで病理診断における補助的診断法の一助となる可能性を示した。
H27-3-14
題  目 介助歯磨き時における介助者への血液や唾液汚染の危険性 −正しい介助磨きは飛沫汚染を抑制できるか−
研究者 鈴木 貴之
概  要 入院病棟や介護保険施設では、一人の職員が多くの患者へ介助磨きを行う。その際、職員へ唾液や血液が飛散するが、歯磨き法による汚染度の違いについては明らかになっていない。そこで本研究は、介助歯磨き法の違いによる汚染度について検討した。対象は学生9名、歯科衛生士9名。介助者は、予防着を装着し、1分間の介助歯磨きを実施した。 介助磨き前後にルミテスターPD-20で各部位における汚染度を測定した。右手の介助歯磨き後の汚染度の差は、有意に学生の方が高い値を示した。左手は歯科衛生士の方が有意に高い値を示した。 それ以外は学生の方が汚染部位が多かった。 学生は横磨き法を、 歯科衛生士は左手で口唇・頬粘膜を圧排し、スクラビング法を行っていた。スクラビング法は、介助磨き時の汚染を少なくすることが示唆された。 しかし、 どちらの歯磨き法も手は明らかに汚染されるため、 感染予防対策としてグローブ着用の重要性があらためて認識された。
H27-3-15
題  目 中部山岳地域における藻類寄生性ツボカビ相の解明およびその分類学的研究
研究者 瀬戸 健介
概  要 ツボカビは、遊走子(泳ぐ胞子)を生じることで特徴付けられる真菌類の仲間である。ツボカビには、他の微生物に寄生するものが多く存在するが、培養が困難であるためその研究は著しく遅れている。本研究では、藻類寄生性ツボカビを対象に、長野県における多様性の把握、ツボカビと宿主藻類との二員培養に基づく分類学的整理を目的とした。長野県内の湖沼(白樺湖など)の水サンプルより藻類寄生性ツボカビを検出し、その培養を試みた結果、計4株のツボカビの培養に成功した。うち3株について詳細な観察を行ったところ、既知属Zygorhizidium属の特徴と一致した。本属は、全既知種が藻類寄生性で、培養例が限られ、系統的位置が不明であった。分子系統解析の結果、3株は、これまで未培養ツボカビの環境配列のみが含まれていた新規クレードに属した。本研究で、正体不明とされていたクレードの実体の一端が明らかになったといえる。
H27-3-16
題  目 実験的咬合性外傷による歯周組織変化
研究者 高谷 達夫
概  要 日常生活において、歯は咬み合わせによる力を負担しています。歯ぎしりやくいしばりによる強い力が持続すると歯の周りの組織は、ダメージを受けます。その結果、噛んだときの痛みや違和感といった症状を引き起こすことを咬合性外傷と言いますが、この時の歯の周りの組織の状態はあまり分かってはいません。そこで咬合性外傷を発症する動物実験モデルの開発により歯の周りの組織の影響を検討した。その結果、咬合性外傷における歯の周りの部位では、細胞動態の亢進を伴う経時的な歯の周りの組織の改造現象が示唆された。さらに咬合性外傷が続くと骨髄由来細胞の増加が認められた。したがって、咬合性外傷を発症すると歯の周りの組織は、その部位の細胞において骨髄由来細胞の動員により、組織恒常性の維持が図られることが示唆され、歯の周りの組織の細胞動態がわかり、歯の周りの組織の影響を解明できる一歩となった。
H27-3-17
題  目 Staphylococcus.aureusのkatA遺伝子変異はカタラーゼ活性を失活させる
研究者 竹原 健太
概  要 本研究では、カタラーゼ試験陰性を示したStaphylococcus aureusを対象とする。S. aureusのカタラーゼ試験陰性株は非常に稀で、現在までに世界で数例の報告がされているのみである。我々は臨床材料より感染症の起炎菌と考えられるカタラーゼ試験陰性のS. aureusを分離し、その細菌学的特徴や病原性について研究している。その一環として、我々はこれまでに、これらの株ではカタラーゼをコードするkatA遺伝子に変異が生じていることを明らかにし報告した。今回、カタラーゼ試験陰性の原因がこの katA遺伝子の変異にあることを証明するため、カタラーゼ試験陰性S. aureus に由来する変異が生じたkatA遺伝子をS. aureus RN4220株に形質転換し、カタラーゼ活性の確認を行う。この非常に稀な性状を有する株について世界的に報告することで臨床微生物検査における有益な知識としたい。
H27-3-18
題  目 インスリン誘導性時計遺伝子とSIRTファミリーの発現相関
研究者 塚田 晃子
概  要 SHARP (SHARP-1 および SHARP-2) ファミリーは、肝臓でのインスリンによる糖新生抑制に関わる転写因子であり、時計遺伝子としても機能する。一方、長寿遺伝子である Sirtuin (SIRT) は、肝臓で絶食時に活性化し糖新生を促進する。本研究は、肝臓での糖新生に関して相反する調節を示す SHARPファミリー遺伝子と SIRT1 遺伝子の発現相関を明らかにすることを目的とした。これまでの研究で、H4IIE 細胞を SIRT1 の阻害剤で処理することにより SHARP ファミリー mRNA の発現量が増加することを明らかにした。今回、SHARP ファミリーによる SIRT1 遺伝子のプロモーター活性への影響を検討したところ、SHARP-1 は SIRT1 遺伝子のプロモーター活性を濃度依存的に抑制した。そして、SIRT1 遺伝子 -183 ~ -105 の領域には SHARP-1 に応答する重要な転写調節配列が存在することが明らかとなった。また、SHARP-2では SIRT1 遺伝子のプロモーター活性の低下傾向は見られたが、有意差は認められなかった。したがって、SHARP-1 遺伝子と SIRT1 遺伝子が互いに発現を調節している可能性が示唆された。
H27-3-19
題  目 起立動作を応用した簡易運動耐容能評価法の開発
研究者 中村 慶佑
概  要 トレッドミルや自転車エルゴメーター(以下CE)を用いた心肺運動負荷試験が.持久力測定法のゴールドスタンダードとされているが、それらは高価な機械と熟練を要し、高齢者や運動障害を有する者には実施が困難な場合が少なくない。そこで,一般的な日常動作であり,より多くの人が実施可能な反復起立運動を用いた持久力測定法の開発を行うこととした。本研究では、高齢者への将来的な応用を視野に入れ、中高年健常者を対象に、反復起立運動を用いた持久力測定法(以下ISTS)としての併存妥当性を検証することを目的とした。対象者は40 歳から65 歳の健常者13 名とし、ISTS とCE による持久力測定を実施した。ISTS は45 秒毎に起立頻度6 回/分から36 回/分へと増加させる(合計12 分間)ことで運動負荷を漸増させた。その結果、ISTS とCEの最高酸素摂取量はr=0.87と有意な相関がみられた。ISTS は中高年者を対象とした持久力測定法として併存妥当性が高いと考えられる。
H27-3-20
題  目 BRAF変異悪性黒色腫の免疫応答の解析によるBRAF阻害薬の治療効果の予測
研究者 中村 謙太
概  要 悪性黒色腫は悪性度の高い皮膚がんで、進行期に有効な治療法は十分に確立されていない。その一方で、予後と免疫応答の関係が注目され、CD8陽性T細胞がグランザイムBを放出して腫瘍を攻撃することに着眼した。また、悪性黒色腫は様々な遺伝子変異があり、日本人では約30%の患者でBRAFの変異が認められる。そこで、当科を受診したBRAF変異陽性の悪性黒色腫30症例を対象として解析した。腫瘍切除検体のCD8とグランザイムBの免疫染色を行い、カットオフ値以上を高値群、カットオフ値未満を低値群とした。また、CD8とグランザイムBが共に高値群の症例を、併用の高値群として、それ以外の症例を併用の低値群とした。併用の高値群が低値群に比べて生存率と無再発生存率が有意に高かった。腫瘍内のCD8陽性T細胞かグランザイムBが低値の症例では術後の再発率が高いため、より慎重に経過観察し、術後の追加治療も必要と考えられた。
H27-3-21
題  目 臨床材料から分離される難培養細菌を対象とした検査法の検討
研究者 名取 達矢
概  要 偏性嫌気性菌や微好気性菌といった細菌は培養条件が厳しく、好気性菌のように検査に関する標準法が確立されていないため、菌種同定や薬剤感受性試験に苦慮することが多い。本研究では臨床検体より分離に成功したHelicobacter fennellias を対象に培養および薬剤感受性試験における最適なガス環境の検索を行った。当該菌種は微好気性菌に分類されるものであるが、発育の良し悪しは環境中の水素濃度に依存するといわれている。種々のガス環境を作成し、短時間で最大の菌類が得られる最適な培養環境の検索を行い、最適培養条件における同定検査・薬剤感受性試験を行った。
H27-3-22
題  目 アミノ酸摂取が食欲制御ホルモングルカゴン様ペプチド-1分泌細胞に与える影響
研究者 西村 佳
概  要 申請者が所属する研究グループは、消化管運動を調節し食欲を抑制する働きをもつ消化管ホルモンであるGLP-1に着目し、これまでにアミノ酸がGLP-1分泌細胞の分布密度に影響を与えることを明らかにした。本研究では、アミノ酸がGLP-1分泌細胞の超微形態及びホルモン合成に与える影響を解析するために、まず通常の状態のニワトリGLP-1分泌細胞のライフサイクル及び超微形態の解析を行った。今年度の研究により、正常なニワトリGLP-1分泌細胞の超微形態学的特徴が明らかにされ、ニワトリGLP-1分泌細胞からのGLP-1分泌は食餌成分により制御できる可能性が示唆された。次年度以降は、CP0%飼料群及びアミノ酸添加CP0%飼料群において、電子顕微鏡解析を行い、今年度明らかになった対照群のデータと比較することで、アミノ酸がGLP-1分泌細胞のホルモン分泌・合成に与える影響を明らかにする予定である。
H27-3-23
題  目 質量分析装置を用いた膣内 Lactobacillus属菌、Bifidobacterium属菌の菌種同定に関する研究
研究者 根岸 達哉
概  要 (研究の動機)Lactobacillus属菌やBifidobacterium属菌は膣の常在菌と考えられてきた。しかし近年、早産となった妊婦の膣内にはL. inersが優位に存在することが報告され、常在菌と考えられてきた菌種の中に病原性のある菌種が存在する可能性が疑われている。しかし、これらの菌種は遺伝子解析以外に同定する方法がない。今回、質量分析装置により、これらの菌種が同定できるか検討した。(研究の方法・成果)臨床検体の膣内分泌物より分離されたLactobacillus属菌、Bifidobacterium属菌を質量分析装置MALDI Biotyperと遺伝子解析を用いて同定を行い、質量分析法で菌種同定が可能かについて検討した。その結果、現在一部の菌種を除き質量分析法での同定結果が遺伝子解析での同定結果と一致している。
H27-3-24
題  目 信州里山のため池から見つかった新規多糖類分解細菌の高度利用を目的とした特性解析
研究者 野村 隆臣
概  要 バイオエタノールの実用的生産系の確立には、低エネルギー・低環境負荷で多糖類を単糖に分解するのが鍵となる。信州里山のため池から取得したNT5株は、海洋多糖類のアルギン酸を唯一の炭素源として生息可能な優れたアルギン酸分解細菌であり、その糖化特性の解明を目的とした。本株がアルギン酸分解能を発現するには、培地中にアルギン酸の存在が必須であり、炭素源がアルギン酸だけの貧栄養条件になるほどアルギン酸分解能が高くなることを突き止めた。また、培養効率とアルギン酸分解の両方に優れた条件で培養したところ、分泌型と菌体内型の複数のアルギン酸分解酵素 (アルギン酸リアーゼ) を保有することが判明した。しかし、これらを単離・精製するには至っておらず、今後の課題として残された。また、ゲノム解析から判明したアルギン酸代謝関連酵素群の遺伝子クローニングが終了し、これらのタンパク質発現及び機能解析系の構築を進めている。
H27-3-25
題  目 放射性物質のキャリアとして大気のエアロゾル粒子の粒径分布と化学形
研究者 樋渡 瑞幹
概  要 2011 年3 月11 日の東日本大地震および津波の発生に伴う、東京電力福島第一原子力発電所事故直後から、多くの研究機関で放射性物質の分布・拡散・輸送に関する研究がなされてきた。福島原発事故による放射性物質の拡散過程を解明するうえで、その「運び手」となる大気中の微粒子(エアロゾル粒子)の実態(大きさ、化学形)に関心が集まっている。本研究では、大気中の微粒子を粒径別に捕集できる装置を用いて、宇宙線由来の放射性物質7Be の付着したエアロゾル粒子の粒径分布の測定を行うとともに、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて、7Be の運び手となっているエアロゾル粒子の化学形の検討を試みた。実験から、7Be 放射性エアロゾルの粒径分布は、他のイオンに比べ、硫酸イオンおよびアンモニウムイオンを含むエアロゾル粒子のそれと際立って類似していた。本研究では、硫酸イオンおよびアンモニウムイオンを含むエアロゾル粒子が7Be の輸送を担っていると結論付けた。
H27-3-26
題  目 好蟻性昆虫アリスアブ幼虫の形態学的・進化発生学的研究
研究者 真下 雄太
概  要 アリスアブ類は、ハナアブ科に属するハエ目の一群で、幼虫期をアリの巣内で過ごす、好蟻性昆虫の代表例の一つである。本研究は、外見上の体節を消失した一見軟体動物のような本類の特異的な形態が、どのような発生過程を経て形成されるのかを明らかにすることを目的とした。筑波大学菅平高原実験センター内の草原に多産するキンアリスアブを材料に、アリの巣周辺の土を利用した採卵方法を確立するとともに、連続切片観察、ナノスーツ法による走査型電子顕微鏡観察などにより、その胚発生の概略および外部形態の形成過程について把握することに成功した。その結果、先行研究において触角と理解されてきた口器の部位が小顎の一部であり、触角自体は発生を通してほとんど発達しないことが明らかとなった。また、アリスアブ幼虫の外部形態でも特徴的な、体節の外見上の消失および背板側縁部の襟状構造は、背板の形成が完了する直前に生じることが明らかとなった。
H27-3-27
題  目 山梨県周辺におけるシダ植物分布境界のスケーリング解析
研究者 松浦 亮介
概  要 植物の種構成は標高変化に伴い大きく変化することが知られているが、水平的な変化に対しての知見は少ない。そこで、本研究では倉田・中池(1979-1994)による過去データから得られた分布境界域の一点を中心とし、その周囲約2.5、5、10km四方のメッシュ64マス内で調査したシダ植生の分布境界域をクラスター解析により検出した。また、得られた10kmスケールの境界が過去データの境界と一致するかについても調べた。結果、広域(10km)と狭域(2.5、5km)では異なる境界が検出された。これにより、水平的な植生変化について、調査スケールを変えることで検出される要因が異なってくることが示唆された。また、現在と過去の分布境界域は統計的に概ね一致していたが、区分された領域は全体的に南方へと推移していた。これは温暖化により南方系の種が北上しているという一般論とは異なっていた。この原因を探るため、各領域の種構成や物理環境条件などを比較する必要がある。
H27-3-28
題  目 3軸加速度計を用いた小脳失調症に対する新規病状評価法の開発
研究者 松嶋 聡
概  要 本研究は、失調症を呈する神経難病において病状の進行度や治療介入効果を評価する際に必要となる、より鋭敏な新しい失調症の重症度評価法の構築を目的とした。3軸加速度計を用い、失調症を呈する代表的な神経難病である、脊髄小脳変性症と多系統萎縮症の患者と年齢・性別をマッチさせた健常群を対象に立位・歩行能力の定量的評価を行った。患者群の歩行機能の測定データを基に、多変量解析(主成分分析)を行った。それにより得られた第1主成分得点値は患者群と健常群の有意な差のみならず、以前から世界で広く用いられている半定量的な失調症の重症度評価法であるSARAスコアとの有意な相関を示し、SARAスコアにより分けられた患者群間でも一部に有意な差が認められた。経時変化の評価を通して有用性と妥当性を更に検証する必要はあるが、本法はより簡便かつ鋭敏な新たな失調症の重症度評価法として有力な方法であると考えられる。
H27-3-29
題  目 メナジオン要求性 Staphylococcus aureus のメナキノン合成経路の遺伝子解析
研究者 松本 竹久
概  要 Staphylococcus aureusは病院における感染症でもっとも多く遭遇する細菌である。通常S. aureusは、電子伝達系にて主要な役割を担うメナキノンの合成を行い、エネルギーを産生し発育している。今回、我々が分離したS. aureusは感染症の原因として分離されたが、培地への発育が悪く、発育にメナジオンを要求する菌株であることがわかった。しかし、メナジオンを要求するS. aureusの原因についての解析や病原性についてはほとんど報告がない。そこで、当菌株についてS. aureusのメナキノンの合成過程に関わるmenF, menD, menC, menE, menB, menA, menGの7つの遺伝子について遺伝子配列を解析した。野生型と変異型について7つの遺伝子配列それぞれを比較したが遺伝子変異は認められなかった。この結果から、遺伝子発現に異常が生じている可能性が考えられた。
H27-3-30
題  目 ヘテロ型フィブリノゲン異常症 Okayama I I (γD320G)とOtsu III(γΔN319D320G)の凝固機能の比較検討  
研究者 向井 早紀
概  要 血漿中のフィブリノゲン(Fbg)が低濃度かつ機能異常を有する、Okayama II(γD320G)およびOtsu I (γΔN319D320)は異常および欠失アミノ酸部位が重複していたが、血漿中のFbg活性濃度と、Fbg活性濃度/タンパク濃度比が著しく異なっていた。タンパク解析より、Okayama IIの異常γ鎖はOtsu Iよりも血漿中に存在する量が少ないと考えられた。フィブリン重合試験ではOkayama IIはnormalとほぼ同じであった一方、Otsu Iは30分以内に重合が起こらなかった。Fbg分泌能を行った結果、Okayama IIはOtsu Iよりも細胞外へ分泌されるFbgが低下していた。以上よりOkayama II Fbgの機能はOtsu I Fbgと同様に影響を受けているが、血漿Fbg中に存在する異常γ鎖の割合がOkayama IIでは低いため、フィブリン重合試験がほぼ正常に行われたと考えられた。
H27-3-31
題  目 スキーモイドの組合せ論的性質について
研究者 百瀬 康弘
概  要 代数的組合せ論における研究対象の1つとしてアソシエーションスキーム(以下、ASと表記)がある。AS を、小圏と呼ばれる研究手法が充実した対象を用いて研究するため2013 年に栗林氏と松尾氏によってスキーモイドという概念が与えられた。しかし、スキーモイドの概念はごく最近に導入されたものであり、まだその構造や分類、代数的組合せ論への還元など研究がされていないのが現状である。本研究は、スキーモイドによる代数的組合せ論の研究対象を研究する新たな手法の開発を目標として行った。まず、単体的複体と呼ばれるAS とは異なる代数的組合せ論の研究対象に対してスキーモイドが構成されることを示した。さらに単体的複体の同型性が、それから構成されるスキーモイドの同型性や、スキーモイドに付随する代数の同型性と同値であることを示した。これにより、単体的複体に対してAS で成り立つ結果を適用する新しい研究手法を導入できる。
H27-3-32
題  目 AICARによるインスリン誘導性転写因子 SHARP-2 遺伝子の発現調節機構の解析
研究者 裄V 有希
概  要 SHARP-2 は血糖低下に関わるインスリン誘導性転写抑制因子である。私どもはラット H4IIE 細胞において、AMPK の活性化剤である AICAR が SHARP-2 遺伝子の発現を誘導するのかどうかについて検討したところ、AMPK 依存的な経路ではなく、PI3-K-aPKCλ 経路を介することを明らかにした。しかし、肝臓以外のインスリン感受性組織である脂肪細胞や筋肉細胞での AICAR による SHARP-2 遺伝子の発現調節機構はまだ明らかとなっていない。そこで本研究の目的は、マウス 3T3‐L1 前駆脂肪細胞やマウス C2C12 筋芽細胞を用いて、AICAR による SHARP-2 遺伝子の発現調節機構を明らかにすることとした。まず始めに、マウスの筋芽細胞である C2C12 細胞の最適な分化誘導条件について検討した。また、分化させた C2C12 細胞を AICAR 1 mM で処理したところ、処理後 6 時間において SHARP-2 mRNA の発現量に影響を与えないことが明らかとなった。
H27-3-33
題  目 アリ共生に特殊化したヤノクチナガオオアブラムシにおける地域適応の検証
研究者 山本 哲也
概  要 アブラムシの中でも大型の体サイズを持つクチナガオオアブラムシ属は、共生するアリに依存した生活を行うことが知られている。信州において、本属のアブラムシとアリの相互作用について注目した研究によって、本属のアブラムシは特定のアリ種との共生に特殊化した形質を持つことが明らかになってきた。一方で、他地域においては、信州と異なる共生アリ種と関係を結ぶことが判明しており、本属のアブラムシが地域ごとに異なる共生アリ種に対して異なる適応を行っている可能性が示唆された。しかし、本属のアブラムシは分類や生態情報の記載が不足しているため、地域間の比較を行うことが難しい。そこで本研究では、日本産クチナガオオアブラムシ属13種を対象に、遺伝的背景を伴った系統分類と生態情報の記載を行った。その結果、遺伝的背景を基に分けられた系統関係を踏まえたうえで、既存の分類を再検討する必要があることが示唆された。
H27-3-34
題  目 重症心身障害児・者にみとめられる臼歯部歯肉形態異常の発現頻度と各項目との関連性
研究者 脇本 仁奈
概  要 【目的】重症心身障害児・者の歯茎において、今まで原因がわかっている歯茎の増殖状態とは異なった形態をみることがあるが詳細は不明である。本研究にて、堤状に隆起した歯茎の形態異常の発現頻度、要因を調べることで、将来的に予防につながる可能性があると考えられ検討した。【対象と方法】同意を得た松本歯科大学病院、独立行政法人国立病院機構東長野病院に入院中の患者、計66名を対象とした。堤状に隆起した歯茎の形態異常の発現頻度および、お口の検査、服用薬剤、栄養摂取形態などとの関連性を検討した。【結果】堤状に隆起した歯茎の形態異常は、松本歯科大学病院、独立行政法人国立病院機構東長野病院において0.76%(5名/66名)に認められた。【考察】現在の調査までで、堤状に隆起した歯茎の形態異常がみられた者は、歯茎が増殖する薬剤を内服しておらず、また口からの栄養摂取の経験がなかった。さらに継続しての調査が必要と考えられた。

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