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平成28年度 研究概要 (第2部門)

H28-2-1
題  目 北八ヶ岳周辺の水質調査
研究者 小口 隆秀
概  要 諏訪地域には豊かな自然があり、山菜や河魚に恵まれている。美濃戸口から八ヶ岳周辺の登山道に沿った水系には、岩魚等魚類が豊富に棲む川と、全くいない川があるが、その原因を調べるため水質調査を行った。また、東海大諏訪高校の生徒実習として、八ヶ岳周辺の水質を化学的に調査して水の汚れについて考察した。水質検査は、7,8,12月に諏訪地域の特徴的な4つの湖沼と八ヶ岳山麓18個所の河川で、12項目について検査した。その結果、湖沼の比較では水が澄んでいる白駒の池、白樺湖のCOD値が高く、濁って透明度の低い諏訪湖のCOD値が低く、化学的な分析と外見とは必ずしも一致しないことを確認した。硫黄岳南沢がほぼ中性だったのに対し、北沢は酸性が強く鉄イオンやカルシウムイオン等無機イオンが多かった。北沢上流に棲む魚類は少ないと言われる原因は、このpHの低さとそれに伴う無機イオンによるものではないかと考察した。
H28-2-2
題  目 木曽川流域におけるアジメドジョウNiwaela delicataのミトコンドリアDNAチトクロムb領域を用いた遺伝的変異
研究者 小林 尚
概  要 アジメ ドジョウは 1属 1種の日本固有種である。日本における分布は本州中部から近畿にかけての河川の中上流域に限定されている。 木曽川上流における分布は木曽川に流れ込む支流のうち西側から流れ込む支流のみである。 アジメドジョウの分布は限定され個体の移動に制限があることが推測され、 木曽川流域では個体の遺伝的変異とともに集団の遺伝的組成にも変化が存在することが考えられる。木曽川流域に生息しているアジメドジョウの個体群において、ミトコンドリアDNAチトクロムb領域725bpを用いて、個体群の遺伝的組成の変異を調査した。その結果、木曽川流域では、2つの系統群が存在し、アジメドジョウの個体群構造を決めている要因は個体群内であることが示された。 さらに、それが水系間にもあることも示され、同一流域内に2 つの遺伝的組成の異なる集団が存在することも分かった。このことは、 アジメドジョウの進化の解明に重要な要因となることが示唆された。
H28-2-3
題  目 長野市若穂地区に見られる境界層の形成と消滅の過程
研究者 佐々木 直人
概  要 長野盆地では、飯縄山麓に層雲が発生したり、東部の扇状地上に層雲や煙の屈曲する様子が見られたりする。このことから接地境界層が形成、持続していると考え、定点カメラを設置して層雲や煙の屈曲の観察を行い、境界層の分布と消滅の過程を調査した。夏季の平地からの観測で、日の出前後に明瞭な煙の屈曲が観察されること、層雲が流れこみ、それが拡散して消滅していくことがあることがわかった。尾根上からの観測ではこれらの現象とカメラの焦点にずれがあり、充分にとらえきれていない点がある。機材の再調整をし、観測を継続して現象の特徴に迫りたい。
H28-2-4
題  目 長野県上田市の中部中新統から産出したミズウオ類化石
研究者 鈴木 秀史
概  要 長野県上田市北部に分布する中部中新統横尾層と伊勢山層からは多くの魚類化石が産出する。本研究においてミズウオ類の口蓋骨化石と思われる標本が得られた。ミズウオ科現生種標本と本化石を、口蓋骨歯の形態に基づいて比較した結果、2つの口蓋骨化石は未記載のミズウオ類の化石である可能性が高いと判断された。ミズウオという和名は水で煮る と体が溶けてなくなることに由来しているので、化石として残る数は少ないと考えられる。同科の口蓋骨歯の特徴の中で歯の傾きは分類における重要なものであり、それは単離歯からでは特定できない。世界的に見てもミズウオ類化石の産出は単離歯がほとんどで、本標本のように口蓋骨から歯が萌出し、吻の向きと歯の傾きが明確にわかる例はわずかである。口蓋骨歯の形態から考察すると、両化石はミズウオ科のキバハダカとミズウオダマシかそれらの近似種と判断される。両種に近いと判別できる化石の産出は、世界的に見ても現時点では知られていない。これらは長野県北部フォッサマグナ地域に存在した硬骨魚類群集のメンバー解明に不可欠な資料になると考えられる。
H28-2-5
題  目 長野県におけるブッポウソウやフクロウ類の繁殖分布状況に関する研究
研究者 田畑 孝宏
概  要 ブッポウソウは、もとより個体数が少なく、古くから繁殖地は国の天然記念物に指定され、保護されてきた鳥である。しかし、繁殖場所となる樹洞の減少などにより、国内各地からその姿を消してきている。環境省および長野県のレッドデータリストでは、絶滅危惧種に指定されている。また、長野県は1980年に本種を県の天然記念物に指定し、保護に取り組んでおり、東日本では数少ないブッポウソウの繁殖地の一つになっている。ブッポウソウと同じく、樹洞で繁殖するフクロウ類も、数を減らす貴重種である。本研究では巣箱設置により、上記鳥類の繁殖環境を整えるとともに、分布調査および繁殖確認調査を行うことで、生息数および繁殖数の把握に努めることを目的としている。また、地域住民や小中学生らと共に保護活動等を行うことを通して、身近な自然に対する意識の高揚を図ってきている。今年度の研究で、上記鳥類の繁殖および生息の継続が確認できたほか、「私たちの自然 604」日本鳥類保護連盟主催、下伊那教育7月号に成果を発表した。
H28-2-6
題  目 菅平ダム湖に流入する窒素負荷発生源の推定
研究者 中村 隆幸
概  要 菅平ダム湖の集水域である菅平高原全域で、地下水と表流水を採取し硝酸イオン濃度を測定したところ、菅平高原西部地区が窒素負荷がなされる地域であることがわかった。菅平高原西部地域の菅平湿原を貫流する菅平川は上流から下流に流下するに従って河川水の硝酸イオン濃度が下降しており、湿原による脱窒の可能性を示唆していた。湿原周辺の地下水の滞留時間を測定したところ約30年であった。今後主たる発生源である菅平湿原西部において窒素負荷を軽減したとしても、菅平ダム湖への窒素負荷流入量は約30年の時間差で減少し、ダム湖の水質改善もそれ以上の時間がかかることが推察された。
H28-2-7
題  目 人工衛星の光跡を利用した地球高層大気の物質分布モデルの推定
研究者 松井 聡
概  要 地球を周回する国際宇宙ステーション(ISS)を撮影することで、ISSが地球の影響を通過する際の光度変化や色変化をとらえ、そこからRGB値の変化を解析することで地球大気の組成に関するデータを得る手法を確認した。また、得られた画像の解析により、色変化がどの程度の時間変化を伴っているのかを明らかにした。加えて、色変化の起こる順番等を考察した結果、対流圏および成層圏による透過光を、ISSからの反射光として間接的に観測できる可能性について確認した。なお、本研究で使用した撮影機材や撮影手法、画像の解析手法については、一般向けカラーデジタルカメラや普及機レベルのパソコンを用いており、今後広く国内のアマチュア観測者向けに普及・展開されることも期待される。
H28-2-8
題  目 長野県産オニグルミクチナガオオアブラムシ(Stomaphis matsumotoi)の生態に関する研究
研究者 松本 嘉幸
概  要 オニグルミクチナガオオアブラムシは研究者が 1988年に烏川渓谷で発見し、安曇野市のレッドデータブック2014に絶滅危惧U類として登録されている昆虫です。当初の計画では 2 か所を調査地として考えましたが、サンプルの採集や継続観察の点から烏川地域はあきらめ、調査地を松本市内の1か所に絞りました。4月中旬〜11月上旬までの調査で、本種の全てのモルフ(生活形)である卵・幹母・胎生雌虫・有性世代(卵生雌虫と雄虫)の姿を確認し、撮影にも成功しました。またサンプルも採集することができました。研究成果の詳細については別途公表します。

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