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令和3年度 研究概要 (第3部門)

NPS2021301
題  目 本州中部地方における外来シマリスの行動生態、生態系への影響
研究者 阿部 智己 ・ 松本 卓也
概  要 2021年8月より当初調査地と計画していた松本市藤井谷でシマリスの踏査による直接観察を行ったところ、個体群密度が低下したためと考えられる観察時間の減少が見られた。そのため調査地を藤井谷と同じ美ヶ原山域に位置し、希少植物タデスミレの自生地としても知られる松本市深志の森に変更し、9月より踏査による食性の直接観察を行った。その結果シマリスが冬眠に入る11月までの間に計74回の採食行動が観察された。観察された採食物のうち約46%がミズナラのドングリであり先行研究での秋の食性の主食はドングリであることと一致した。その他植物ではサルナシやナツハゼ、動物ではコノシタウマの採食が観察され、定着先の環境での食物となる生物を適応的に選択、利用していることが示唆された。
NPS2021302
題  目 霧ヶ峰の鳥類に草原内に存在する低木が与える影響
研究者 井川 洋
概  要 開発や森林の拡大よる草原の縮小が懸念されるなか、霧ヶ峰高原では人の管理によって草原の維持が維持されてきた。これまでの草原管理は草原と樹林の2環境で検討されることが多く、遷移の中間に位置する低木が草原性の生物に与える影響についての評価はほとんど行われてこなかった。本研究では霧ヶ峰高原において、ズミやツツジ等の低木が散在する草原を、草原や森林と区別し、鳥類に着目して繁殖期の出現種や数を環境間で比較した。また、目視とセンサーカメラによる調査から、どんな種が低木を利用するかを調査した。結果から、低木が散在した草原の鳥類相は森林より草原に似る傾向があり、低木は草原性の種に囀りや休息の場として利用されていた。また低木は森林性の種が森間を移動する途中の休息場にもなっていた。今後さらなる調査が必要だが、草原管理では、全ての低木を刈り取るよりも、部分的に残す方が草原性の鳥類にとって利益的な可能性がある。
NPS2021303
題  目 野辺山高原におけるサクラソウ群落の送粉ネットワークからみた保全生態学的研究
研究者 井出 萌
概  要 サクラソウは明るい湿地に生育する多年生草本で、長野県では絶滅危惧U類に指定され、野辺山高原でも個体群の減少が問題となっている。サクラソウ個体群の健全な種子生産のためには、ポリネーターとして機能する送粉昆虫の存在が不可欠である。そこで本研究は、野辺山の異なる本群落における送粉ネットワークの現状を把握し、保全策を検討することを目的とした。調査地は信州大学農学部付属AFC野辺山ステーションと矢出川流域の湿生林とした。サクラソウ群落はレンゲツツジ−ズミ群集とヤチダモ−ハルニレ群集、ハンノキ−ヤチダモ群集の主に3つに、また下位では5群落型に分類された。特にレンゲツツジ−ズミ群集でポリネーターや訪花昆虫の種類や個体数が他よりも多く、種子生産割合も高かった。群落型ごとのポリネーター相に違いがあり、これは群落構造の違いを反映していると考えられた。花型の割合からは全群落型で遺伝的多様性の低下が示唆された。
NPS2021304
題  目 菫色を呈する石灰華の成因
研究者 江島 輝美
概  要 松本市安曇白骨温泉湧出地点周辺の石灰華は、採取後3~6ヶ月経過すると、表面が、白色および淡黄色から紫色、水色、赤紫色に変化する。石灰華の表面が採取後に変色する現象は、過去に報告されたことがなく、石灰華の表面が変色する要因は分かっていない。本研究では、変色する石灰華の変色物質の特定および変色要因の解明を目的として研究を行った。試料採取後の経過観察の結果、真空状態に保存した試料では色の変化が観察されなかったが、室内に保存した試料では変色が確認された。紫色の繊維状の変色物質には、Fe、Mnの微量の遷移金属元素が含まれる。また、透過型電子顕微鏡観察では数nmのFeを含む微細な粒子の存在が確認された。本研究結果より、石灰華表面の変色の要因は、Fe、Mnの遷移金属元素が生物由来と考えられる繊維状物質に取り込まれ、ナノ粒子として析出し、空気中で酸化したためであると考察される。
NPS2021305
題  目 大腸癌におけるβカテニンシグナルを介したPD-L1制御のメカニズムの解析
研究者 江原 毅人
概  要 ミスマッチ修復欠損(dMMR)とβカテニン変異は免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の効果予測マーカーである可能性が報告されているが、その詳細は不明である。そこでβカテニン変異が免疫チェック制御分子の発現や機能に影響を与えると仮説を立て、研究を行った。dMMR大腸癌細胞株とそうではない大腸癌細胞株(pMMR)を比較したところdMMR大腸癌細胞株のみでICIの受容体であるPD-L1の発現を認めた。次にdMMR大腸癌細胞株にβカテニン阻害剤を投与して、βカテニンやその他の分子の発現に影響するかどうかを調べた。その結果βカテニンの発現は変化しなかったが、PD-L1タンパク発現がβカテニン阻害剤の濃度と相関しているという結果を得た。今後βカテニン変異を介した免疫チェックポイントの制御メカニズムを解明することでβカテニン阻害剤を併用した新規免疫複合療法が確立されることが期待される。
NPS2021306
題  目 長野県千曲川水系における外来種ブラウントラウトの集団遺伝学的動態の評価
研究者 神藤 友宏
概  要 近年、日本各地で外来魚ブラウントラウト(Salmo trutta)の定着報告が相次いでいる。長野県千曲川水系における本種の初移入は1925年〜1933年上高地への試験放流まで遡る。以降、定着した本種が分布拡大し、2000年代には下流の松本市内梓川で、最近ではさらに下流の長野県飯山市、栄村付近にまでその生息が確認されている。本研究では上流地域(上高地〜松本市周辺)および下流地域の遺伝的関係を明らかにし、本種の分布拡大抑止に資する情報収集を目的とした。本研究では下流地域において重点的なサンプリングを行ない、すでに採取済であった上流地域のサンプルも加えて、母性遺伝するmtDNA変異を評価した。その結果、下流集団からは上流地域では検出されないハプロタイプも検出でき、長野県の千曲川下流に分布するブラウントラウトは必ずしも上流集団由来ではなく、下流域の個別管理も重要であることがわかった。
NPS2021307
題  目 千曲川における河道掘削・樹木伐採による洪水調節効果の算定
研究者 古明地 美陽
概  要 令和元年東日本台風により千曲川が氾濫し、浸水被害が多発した。本研究は水理学的な計算手法を適用し、浸水被害が多発した立ヶ花〜杭瀬下で、洪水時の河道内水位と越流氾濫箇所や氾濫量を推定し、河道掘削・樹木伐採による治水機能向上を評価計算することを目的とする。mmonMPを用いて千曲川の洪水氾濫計算モデルを構築し、東日本台風洪水被害を再現する。立ヶ花・篠ノ井における河道掘削、樹木伐採による治水機能への影響を算定する。河道水位の低下量は氾濫を考慮しない準二次元不等流計算、氾濫量の変化は平面二次元氾濫計算で算定する。東日本台風と同等の流量が流下したとき、●氾濫を考慮しない場合において、河道掘削、及び、樹木伐採が完了した場合であっても、破堤氾濫地点では河道内水位が堤防天端高まで下がらない。●氾濫を考慮する場合において、河道掘削がすべて完了した場合、破堤氾濫地点では河道内水位が堤防高未満となり、ゼロとなる。
NPS2021308
題  目 キツリフネlmpatiens noli-tangere L.は尾根筋/沢筋に適応してエコタイプ分布しているのか?
研究者 近藤 輝留
概  要 キツリフネは、早期繁殖を行う早咲き型と、十分な栄養成長の後に繁殖を始める遅咲き型が発見されている。早咲き型は乾燥した尾根に、遅咲き型は湿潤な沢にそれぞれ分布している。本研究では、両者は乾湿への二極化した適応をしているという仮説をたて、@尾根/沢の無機的環境の連続測定、およびA両エコタイプの尾根/沢間の相互移植実験を行った。半年間無機的環境の測定を行ったところ、尾根/沢で顕著に違いがあったのは土壌水分量であり、尾根では土壌水分量が乏しかった。相互移植実験では、沢由来の遅咲き型を尾根に移植すると、生存率、草丈の生長率が低下した。この結果は沢から尾根への侵入は遅咲き型にとって不利となることを示唆した。対して、尾根由来の早咲き型を沢に移植しても生存率に有意な違いはなく、尾根から沢へ侵入することを阻む要因は不明瞭であった。今後、種内・種間競争などの生物的環境の影響を加味して再評価する必要がある。
NPS2021309
題  目 諏訪湖におけるワカサギ Hypomesus transpacificus nipponensisの食性の季節変化および重要な食物の解明
研究者 龍野 紘明
概  要 諏訪湖のワカサギは1914年に霞ヶ浦から移入されて以降、人為的な管理によって維持されてきた重要な商用魚であり、諏訪湖生態系の重要な構成種でもある。本研究では胃内容物の直接観察と安定同位体比分析から年間を通したワカサギの食性を調査し、季節変化を解明した。その結果、ワカサギの稚魚期では動物プランクトンのカイアシ類の幼生であるノープリウスが、それ以降は季節ごとに湖水中に多く存在する動物プランクトンが重要な食物であり、厳冬期にはユスリカも重要であることが明らかとなった。比較的大型の動物プランクトン種が利用され、近年の諏訪湖で季節的な発生が見られるカブトミジンコも胃内容物から確認された。これはワカサギが食物の存在量に合わせて柔軟に食物利用をする可能性を示唆する。諏訪湖のワカサギ維持には、利用される動物プランクトンやユスリカの発生状況、それを支える植物プランクトンや水環境を継続的に調査する必要があるだろう。
NPS2021310
題  目 脱細胞化組織粉末の加圧成型による足場材料作製方法と原料組織ごとの特性の解明
研究者 田中 暖
概  要 大規模骨欠損治療の第一選択は自家または他家の骨移植だが、移植用の骨は供給不足である。自家骨の替わりとして、供給が安定している人工骨が用いられているが、自家骨や他家骨と同等の骨再生能を持たないことが課題である。近年、ヒトや動物の組織から免疫原である細胞を除去した脱細胞化組織が生体材料として使用されている。脱細胞化組織は、原料動物の年齢や組織の種類によって構成される細胞外マトリクスECM)が異なり、組織特異的な機能を示すことが知られている。現在、成体ヒト骨由来の脱細胞化骨が使用され、高い骨再生能を持つことが明らかになっているが、サイズや形状は原料の骨に依存している。本研究では、胎児及び成体ブタ由来の脱細胞化骨髄、骨、軟骨粉末に錠剤の成型加工法を応用し、原料組織とは異なる形状のECM製人工骨の作製に取り組んだ。
NPS2021311
題  目 森林における低木の株立ち特性と積雪量の関係
研究者 谷岡 庸介
概  要 積雪量が多い日本海側の森林では、低木は雪の重みに耐えるために傾いた幹を複数持つ樹形をしていると言われている。しかし、実際にどれだけ樹形が異なるかを調べた研究はなく、森林群集の形成における樹形の重要性は未知である。本研究では、積雪量が異なる複数の森林で低木の樹形を調査し、低木の樹形がどれくらい異なるのか、またその違いは何によって説明されうるかを調べた。長野県内の最大積雪深が異なる(約4 m、1 m、1m)三つの冷温帯林にて、低木層を構成する樹種について、幹数と地面に対する幹の傾きを調査した。その結果、最大積雪深が約4 mの森林では、他の森林と比較して、低木で平均して幹数が2倍多く、傾きも1.5倍大きかった。さらに、幹数は調査地と種間の差で、幹の傾きは調査地間の差のみで説明できた。本研究によって、積雪に対して低木は樹形を変化させることで適応しており、その可塑性は幹数と幹の傾きで異なるということが示された。
NPS2021312
題  目 軽井沢のカラマツ林風倒跡地における植生回復過程の解明
研究者 津田 美子
概  要 軽井沢のカラマツ林風倒跡地において、二次林成立過程で埋土種子がどのようなはたらきをしているかを明らかにするため、埋土種子相の季節変化を調査した。春季のサンプルでは、地上植生の構成種と埋土種子集団との間に多くの共通種が認められた。夏季のサンプルでは浅い部分で種数、個体数ともに著しく減少し、前年に生産された種子の大半は高木が展葉する前に発芽することが確認できた。一方、深い部分に蓄積された種子はほとんど減少しておらず、新たな攪乱によって土壌表面に掻き起こされる機会に備えて待機していると考えられた。10月のサンプルでは木本種の種子が少なかった。軽井沢では晩秋から冬季にかけて種子散布が盛んになり、多くは翌春に発芽すると考えられた。植生回復過程を解明するには、さらに発芽した個体の定着率、越冬成功率、経年減少率を解明していく必要がある。
NPS2021313
題  目 23S rRNA変異によるエリスロマイシン耐性メカニズムの解析
研究者 中島 悠太
概  要 Streptomyces属放線菌は、複数コピー存在するリボソームRNA(rRNA)オペロン中の1つの23S rRNA遺伝子内の点変異により、エリスロマイシン(Em)耐性の表現型が現れる。先行研究で研究代表者らは、 S.coelicolor A3(2)の23S rRNA変異株において、内在性抗生物質耐性の引き金因子WblCが恒常的に高発現することを見出した。放線菌におけるWblCの機能発現は、Emのみならず、テトラサイクリン等様々な抗生物質に対して耐性の表現型をもたらすことが知られている。以上を踏まえ、本研究では、放線菌23S rRNA変異株の抗生物質耐性における変異型23S rRNAやWblCの寄与の可能性を検証した。23S rRNA変異株の様々な抗生物質への耐性の検証や、変異型23S rRNAの機能発現解析により、WblCと変異型23S rRNAの機能発現が連動することで、23S rRNA変異株がEm耐性の表現型を示す見通しを得た。このことは、23S rRNA変異株の抗生物質耐性の仕組みが極めて複雑であることを示唆した。
NPS2021314
題  目 寄生性昆虫ネジレバネの過寄生によって起きる寄宿の変化
研究者 中瀬 悠太
概  要 昆虫寄生性昆虫ネジレバネは宿主昆虫の行動や形態、生理にさまざまな変化を起こすことが知られている。たとえば、ネジレバネに寄生された宿主は生殖能力を失うことに加え、スズメバチの働き蜂は巣の維持のための労働を行わなくなり、寄生されたウンカでは形態の中性化を起こす。ネジレバネでは1個体の宿主に複数が寄生する過寄生が頻繁に見られ、過寄生となった場合はより強い変化が起きる可能性がある。本研究ではホソコバネナガカメムシの雄の腹部に見られる発音器のサイズがネジレバネの寄生、特に過寄生によってどのように変化するかを検証した。その結果、寄生された個体の一部では発音器のサイズが小さくなり、消滅する個体も見られた。過寄生宿主で小型化することが多かったが、発音器の消滅が見られたのは1個体寄生の宿主であった。一方で、正常なサイズの発音器を持った個体も見られ、寄生によって確実に変化する形質でないことも明らかになった。
NPS2021315
題  目 マウスの生殖・消火器における硫酸化糖脂質の生理的役割
研究者 中野 愛里
概  要 糖脂質は生体を担う重要な分子であり、その異常は神経変性疾患や精子形成不全を引き起こすことが知られている。糖転移酵素UGT8Aは、精巣ではセミノリピド、神経系ではスルファチドといった硫酸化糖脂質の産生に関与する。私は今回、Ugt8aを欠損させたマウスにおいて、これまで報告のない「雌性不妊」と「胆嚢肥大」を発見したため、その実態を解析した。メスマウスでは、女性ホルモン産生能が有意に低下していたが、ホルモン補充によって排卵や子宮は正常に機能できることが確認できたことから、女性生殖器官においてUgt8aの果たす役割は少ないことが示唆され、これらの不妊は脳神経系の異常もしくは低体重に起因すると予想された。また、胆嚢においては遺伝子発現や発生上の異常は見られなかった。しかし、血糖値が野生型マウスよりも低下していたことから、胆嚢の肥大は摂食が減少したことにより消化管ホルモン分泌が減少し、収縮刺激が減少したためだと予想された。
NPS2021316
題  目 生物多様性保全上重要な“雑草地”の地位を高める
研究者 畑中 健一郎
概  要 生物多様性の「第2の危機」、すなわち自然に対する人の働きかけの縮小が長野県の生物多様性の劣化に大きな影響を与えている。農地や採草地の管理放棄によって森林化が進み、草原的環境に生息・生育する種の多くが絶滅の危機に瀕している。しかし、利用価値のなくなった土地に手を入れ続けることは現実的ではなく、新たな価値観の共有による保全・活用を模索していかなくてはならない。本研究では、かつて木曽馬の産地としてしられた木曽町開田高原を対象に、植生調査と住民意識調査により、草地の保全・活用に向けた課題を検討した。火入れや草刈りにより管理された草地は単なる雑草地ではなく生物多様性が豊かであること、保全・再生活動への若年者の取り込みと高齢者の自然に対する思いや技術・経験の継承が必要であることなどが考えられた。
NPS2021317
題  目 東信地域におけるハクビシンの個体群構造と生活史の解明
研究者 福江 佑子
概  要 外来種であるハクビシンは長野県において年間1500頭が駆除されているが、野生動物の保護管理に重要な指標となる性別、年齢などの個体情報は得られていない。そこで、今年度は約10年にわたり、軽井沢町で捕獲・拾得された83頭の個体データ(性別、年齢、繁殖状況等)を解析した。その結果、捕獲・拾得された個体数および体重において、雌雄差はみられなかった。ハクビシンの成獣の雌雄とも、活動性が落ちる冬期前に体重が増加する傾向が見られた。しかし、亜成獣においては体重のバラツキが大きく、初夏だけでなく秋に生まれる個体がいることが示唆された。また、歯のプレパラート切片から得られた年輪および頭骨の骨化状態から年齢を推定し、齢構成を調べた結果、0〜1歳の若齢個体が約7割を占め、1歳になるまでに生き残る確率は約3分の1であることがわかった。一方で、3歳以上になると死亡率は低くなる個体群構造であると考えられた。
NPS2021318
題  目 膵臓細胞株における代謝表現型の解析および代謝経路を標的とした新規治療法の開発
研究者 増尾 仁志
概  要 膵臓癌は極めて予後不良な消化器癌であり,ゲムシタビンを主軸とした抗がん剤への耐性獲得が問題となっている。我々は、ATPが細胞生存に必須であることから、代謝表現型の変化が耐性化に影響を及ぼすのではないかと仮説をたて、代謝表現型の解析と代謝経路を標的とした新規治療法の開発を目的に本研究を行った。まず、膵癌細胞株を用いてゲムシタビン耐性株を樹立し、代謝変化を解析した。さらに、ATP産生に依存し、環境ストレス耐性に関与するAMPK-HSF1経路の蛋白質発現を評価した。耐性株ではミトコンドリア増加による酸化的リン酸化の亢進を認め、解糖能に差を認めなかったことから、耐性株においてATP産生が亢進すると考えられた。また、耐性株ではAMPK活性低下とHSF1活性の亢進を認めており、ATP産生亢進によるHSF1活性化が耐性獲得の一因と考えられた。GemとHSF1阻害剤の併用効果については現在検討中である。
NPS2021319
題  目 位相最適化による材料コストを意識したアルミニウム張弦橋の創造
研究者 水野 翔太
概  要 橋梁分野において、アルミニウム合金材は軽量で耐腐食性を有することから建設コストや維持管理コストの削減、施工性の向上が見込まれる。一方で、低剛性で高コストという問題点がある。そこで、アルミニウム合金材をケーブル材を用いた張弦構造に適用を試み、材料コストを最小にする最適な構造形態を解明することを目的とする。まず、位相最適化より複数の形態が異なる構造モデルを創出した。その後、得られた構造モデルに対して材料コストを加味した寸法最適化を行い、材料コストが安くなるアルミニウム合金桁の形態を検討した。その結果、張弦桁の材料コストはケーブル材を用いてないトラス桁よりも18%〜34%程度減少した。材料コストを最小にする形態は張弦桁のアーチ形モデル、たわみを最小にする形態はトラス桁の格子形モデルであることが分かった。以上より、目的や用途に応じた低コストなアルミニウム橋の実現可能性を示すことができた。
NPS2021320
題  目 血管平滑筋細胞の増殖・分化・石灰化における筋形成型オリゴDNAの作用の検討
研究者 三好 愛
概  要 動脈硬化は死亡リスクの高い心血管疾患の主要な危険因子であり、血管平滑筋細胞の脱分化と異常増殖、石灰化、炎症反応などが複合的に生じる。我々は最近、筋分化を強力に促進するオリゴDNAとしてiSN04を同定した。本研究では、ラット平滑筋細胞株の分化・増殖におけるiSN04の作用を検討した。iSN04は平滑筋細胞の分化を促進し、増殖を抑制することが示された。また、iSN04を前処理した平滑筋細胞では、TNF-α刺激による炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8、MCP-1)の発現誘導とNF-κBの転写活性が有意に抑制された。iSN04は動脈硬化の治療や予防に貢献する核酸医薬品のシーズとなることが期待される。
NPS2021321
題  目 脂肪細胞における筋形成型オリコDNAの抗炎症作用の解明
研究者 森岡 一乃
概  要 肥満は、様々な生活習慣病の危険因子である。肥満による慢性炎症や、肥大化した脂肪細胞が分泌する多様なアディポカインは、生活習慣病の発症リスクを増大する。我々は最近、筋分化を強力に促進するオリゴDNAとしてiSN04を同定した。本研究では、マウス胎児線維芽細胞株3T3-L1の脂肪分化と炎症におけるiSN04の作用を検討した。3T3-L1の分化初期にiSN04を投与すると脂肪特異的な遺伝子の発現が低下し、脂肪滴の蓄積が抑制された。また、iSN04を前処理した3T3-L1では、炎症誘導因子による炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、MCP-1)の発現誘導が有意に抑制された。これらの結果から、iSN04は脂肪前駆細胞の分化と炎症を阻害することがわかった。iSN04は肥満とそれに伴う慢性炎症の治療や予防に貢献する核酸医薬品のシーズとなることが期待される。
NPS2021322
題  目 安曇野市明科地域のナナフシモドキ大量発生:経年調査による集団動態の究明
研究者 谷野 宏樹
概  要 安曇野市明科地区において、2017年に初めてナナフシモドキの局所的な大規模発生がみられた。ナナフシ目昆虫における大発生の事例は過去に知られるものの、これほどまでに局所的な事例は世界にも類を見ない。大発生には気温の変動や他種との相互作用、ナナフシモドキがメスのみで子孫を残す絶対単為生殖であることなど、様々な要因が寄与したと予想される。本研究では系統解析を実施することで、明科地区における大発生は毎年移入する新規集団によるものではなく、1つの集団由来であることが明らかとなった。加えて、2017年から継続的に実施してきた個体数調査の結果により、徐々に大発生の中心が移動していることも明らかとなった。河川・道路といった地理的障壁を超えて分布拡大し定着したことも示唆されており、翅をもたない昆虫類がいかにして分布拡大を果たしたか、集団が創出された初期からの継続的な観察による知見を蓄積することができた。
NPS2021323
題  目 行動制限による学生の運動機能低下に起因する筋疲労を効果的に回復させる方法の検討 ―パイロット研究 ―
研究者 由井 丈也
概  要 2020年に感染拡大が始まったCOVID-19の影響による自粛や隔離生活のように長期間に渡り行動制限を余儀なくされ、運動再開時に身体に負荷される運動強度は通常よりも高いと予想される。こうした状況では運動を再開した際に通常では考えられないような怪我をすることが考えられ、本研究は疲労回復手段として有用であるアクティブリカバリー(Active recovery;AR)が、運動再開時に身体に負荷される運動強度は通常よりも高いと予想される運動に対して疲労回復を促すかを検証した。健常成人男性を対象とし、運動は健常成人でも高負荷であるスクワットジャンプを、効果判定には立ち幅跳びの距離を選択した。結果としてARは高強度運動後のパフォーマンス回復を促進し、効果的な疲労回復が示唆され、今後学校教育や一般のスポーツ現場等での積極的な実施が推奨されると考えられる。

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