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平成30年度 研究概要 (第1部門)

H30-1-1
題  目 花サイズがばらつく要因を推定する 〜オドリコソウを材料に〜
研究者 石本 夏海
概  要 オドリコソウは、送粉者サイズが花サイズの選択圧であることが先行研究で示唆されている一方で、花サイズの分散は、集団間で差がある。一般に選択を受けた形質はばらつきが小さくなることが知られており、集団間の花サイズの分散の違いは、受ける選択圧の強さの違いにより生じた可能性がある。本研究では集団間で花サイズのばらつきが異なる要因について考察した。場所ごとの訪花頻度と花サイズの分散の間に正の相関がみられたことから、多数回訪花されれば、ある程度のサイズのミスマッチは許容され花サイズに選択がはたらかないことが示唆された。また、オドリコソウに適用可能な7座のSSRマーカーを用いて集団構造を解析したところ、高標高の集団間では遺伝的交流が活発であり遺伝的に多様で、低標高の集団間では近距離でも遺伝的に分化しており遺伝的な多様性が低かった。遺伝的な交流や、集団の遺伝的多様性も花サイズのばらつきに寄与するのかもしれない。
H30-1-2
題  目 松本市北方中新世中期別所層産魚類化石の研究*
研究者 小池 伯一
概  要 魚類化石は今まで主に鱗( うろこ) 化石から、魚の存在が研究されてきましたが、近年大規模な採土工事により豊富な魚体化石が産出し採集され研究してきました。その成果は日本古生物学会発表、信州新町化石博物館の研究報告・長野市立博物館紀要等で公表してきました。今年度はさらに1200点の魚化石を追加検討して研究をしてまいりました、これら30 有余年に蓄積した魚化石を広くお知らせして、今はなきかつての海のいとなみを、自然観察資料(魚類化石編)「松本盆地の魚化石をさぐる」にまとめ刊行することで、あまり知られていない当時の豊富な魚類化石をご紹介させていただくことが出来ました。山国信州の1300万年前の海の世界を解き明かす手がかりとなる研究です。
H30-1-3
題  目 ザリガニの研究
研究者 東海大学付属諏訪高等学校科学部 (顧問 両角 紀子)
概  要 アメリカザリガニは1927年の5月21日にアメリカからウシガエルのエサとして20匹輸入されたがそこから爆発的に増え外来種になった。ザリガニのオス・メスは腹部の突起物の有無で判断可能である。さらにオスの3本目の足の付け根に突起物があり、メスにはセメント線という卵を抱くための線が腹部に出現する。セメント線は主に白色で、繁殖可能になると自然に現れる。この線がないと交配しても卵は持たない。水温は20度前後で年中繁殖する。今回の実験で、4種の新品種候補の個体が生まれたが、思ったような成長が見られなかった。一般的には新品種を固定化するには最低でも4〜5年かかると言われている。本実験においてもオリジナル品種作出には長い時間がかかる事がわかった。同時に発色の固定化も考慮しなければならないと感じた。今後この個体が繁殖可能になるまで成長したら、色彩変異個体などと掛け合わせることで、新品種作出に繋がると考えている。
H30-1-4
題  目 ウツボグサにおける花形態の標高・地域間変異は遺伝的分化を伴うか?
研究者 廣瀬 航洋
概  要 ウツボグサPrunella vulgaris は低標高から高標高にわたって幅広く分布する山地性植物であり、マルハナバチ属などのハナバチ類やチョウ類が花粉媒介を行う。これまでの研究で、標高地点ごとにウツボグサに訪花するマルハナバチ類の種構成が異なり、マルハナバチ種の送粉に関わる形質(口吻長など)と相関して、ウツボグサの花形態に標高間変異がみられることが分かっていた。  本研究では、花形態の変異が中立遺伝子での分化を伴ったものかについて、北海道、島根のサンプルも含めて、核DNA(ITS領域,約600bp)を用いて検討した。その結果、遺伝的分化は認められないという結果となった。さらにマイクロサテライトマーカーを用いた集団遺伝解析でも顕著な遺伝的分化はみられなかった。これらのことから、ウツボグサの各地域集団は中立的な遺伝子領域では遺伝的分化が生じていないが、それぞれの地域で異なった選択圧を受けた結果、花形態が地域適応していることが示唆された。
H30-1-5
題  目 ヤママユガの羽の色がみんな同じではないひみつ
研究者 松下 郁果
概  要 平成28年に育てたヤママユガは成虫の羽が灰色っぽかったのに、同じ年に野外でつかまえたヤママユガは羽の色が黄色だった。同じヤママユガなのに、個体によって様々な色があることの秘密を調べてみたいと思った。これまでに育てたり捕まえたりした成虫の羽の色を、いろいろなまとめ方で整理してまとめ、考察した。ヤママユガの羽の色には、とても多くの種類がある。育った環境やエサが同じでも様々な羽の色の成虫が生まれる。同じ親から生まれた兄弟でも全く同じ色ではない。同じではないが、兄弟で似た系統の色になっている。親と似たような色の子どもが生まれると言えそうだ。遺伝で子の色が決まっているようだ。羽の色は、鱗粉の一枚一枚がその色をしているのではなく、茶色の鱗粉と黄色の鱗粉の比率で見かけ上の羽の色が決まる。しかも、鱗粉の重なりの上の層と下の層の茶色と黄色の鱗粉の比率の違いによっても見かけ上の色が違う。
H30-1-6
題  目 フラワーホーンの生態研究
研究者 百瀬 太陽
概  要 フラワーホーンとはフラミンゴシクリッドとトリマクラートスを人工的に交配させた魚です。フラワーホーンのコブはどのような育て方が一番発達するのかがあまりわかっていません。本研究では2年かけて@どの様にすればコブが大きくなるのかA繁殖を研究することにしました。@遺伝要素が大きいといわれているが、コブが小さい個体でも飼い方次第でコブの大きさを変えられることができるかもしれないと考え、えさを変えて実証したが効果が見れらませんでした。ただ実証中、アクシデントで水温が下がった際にコブが小さくなり、水温を戻したらコブの大きさが戻ったため、水温も関係があるかと思われるが、個体が衰弱するため実証にはいたっていません。A繁殖については今後まずはメスを探し、育ててから繁殖にチャレンジしていきたいと思っています。
H30-1-7    特設テーマ@
題  目 大鹿村における野鳥の分布と長野県の天然記念物ブッポウソウの保護
研究者 大鹿村立大鹿中学校 (校長 永池 隆)
概  要 ◯大鹿村における野鳥の分布  4月から1月にかけて、ラインセンサス法による分布調査を大鹿中学校周辺、南アルプス三伏峠登山口から小河内岳、小渋川周辺で計52回53時間行なった。その結果、66種の野鳥を確認した。環境省指定の絶滅危惧種4種、準絶滅危惧種1種。長野県指定の絶滅危惧種4種、準絶滅危惧種1種。特筆すべきは、クマタカの幼鳥1羽を通年観察することができたことである。 ◯ブッポウソウの保護  小渋川周辺に23個の巣箱を設置したところ、1個の巣箱でブッポウソウの繁殖を確認した。大鹿村における初めての繁殖の記録となる。これらの活動を通して、あらためて大鹿村の自然を見つめ直し、その豊かさやすばらしさを実感することができた。
H30-1-8    特設テーマ@
題  目 長野県南部地方における外来魚の生息状況に関する研究(1)
―天竜川水系における国外外来種及び国内外来種の分布状況―
研究者 大原 均
概  要 近年、県内の河川や湖沼において、外国原産の「国外外来種」や国内他地域出身の「国内外来種」が分布域を広げつつある。そこで、天竜川水系における外来種の生息状況を把握するために採捕調査を重ねてきた。その結果、次のような知見を得ることができた。(1)確認された国外外来種はコクチバス・オオクチバス・ブルーギル・カラドジョウの4種である。コクチバスは本水系のほぼ全域に分布し、本川だけでなく支川の河口付近でも捕獲された。オオクチバスはダム湖やため池のような広い止水域に生息しているが河川にはほとんど棲んでいない。一方、ブルーギルは大小さまざまな湖沼や河川に形成された小さな淵やワンドにも生息している。(2)今回確認できた国内外来種はカワムツ、ウキゴリ、ヌマチチブ、ワカサギ、ハス、ニゴイ、タカハヤの7種であった。それぞれの種の分布状況には違いが見られるが、それは種によって生息環境や移入時期、移入場所、移入方法などが異なるからだろう。
H30-1-9    特設テーマ@
題  目 「竹オガ粉」の「キノコ培地基材」への活用研究
研究者 島田 洋治
概  要 本研究は未利用資源「竹」の微細破砕物「竹オガ粉」を「色差分解処理(加水分解)」を行うことで「キノコ培地基材」としての新たな活用を目指すものである。「色差分解処理」による効果として菌糸の成長阻害物質である「アグリコン」を多く含む「ヘミセルロース」が10%程度減少することを実証した。ただし大幅に減少させるという結果は得られなかった。これについては処理時間の延長で対応できるものと考えており、「竹オガ粉」を「キノコ培地基材化」の可能性は高いと判断している。なお今回の研究では長野県内に最も多く自生している「真竹(まだけ)」を用いたが、全国的(西日本)には「孟宗竹(もうそうちく)」が多く自生していることから今後は「孟宗竹」での検証も必要であろう。
H30-1-10    特設テーマ@
題  目 マルハナバチ優占地域におけるヤマツツジの繁殖生態
研究者 高橋 佳吾
概  要 自殖と他殖を併用する植物において、自殖個体がどれほど集団の維持に貢献するのかを知ることは、その種の繁殖生態を理解する上で重要である。本研究では、自家花粉を多く運ぶであろうコマルハナバチが優占する地域で、播種後9ヶ月の間に強く生き残りやすいヤマツツジの種子の特徴を明らかにした。ヤマツツジは種子1個あたりの重量が重い果実ほど発芽率が高かった。一方、自殖と他殖の違いは発芽率に有意な影響を与えていなかった。しかし、自殖個体は発芽した苗の35.0%しか夏を越えて生存できず、他殖個体の同生存率(60.2%)より有意に低かった。葉枚数は播種から3ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後で、種子重量が重いほど多かった。加えて、播種後6ヶ月以降は、他殖個体の葉枚数が自殖個体を上回るようになった。以上より、この地域のヤマツツジは、自殖個体が他殖個体に耐暑性で著しく劣り、幼苗期の生長速度においても自殖個体が不利であると分かった
H30-1-11    特設テーマ@
題  目 長野県における蛾類相および群集構造と環境評価手法に関する研究
研究者 田島 尚
概  要 鱗翅目の中でも特に多様性の高い蛾類は、限定環境条件下でのみ生息する種や多様な食性を有する種群が存在し、環境指標性が高いと考えられる。しかし基礎的知見が少ないため、本研究では、キャンパス内に多様な植生環境を有する信州大学農学部を対象地とし、蛾類群集の構造と植生環境との関係性を明らかにし、さらに食性から環境指標の可能性について検討することを目的とした。小規模でも植生環境が異なる条件下では、蛾類群集の構造は多様度や類似性の面から異なっていたが、特に同様の環境(森林内、草地内)での類似度は高かった。また、同じ環境下では蛾類の優占種は一部が共通しており、森林環境では木本食・腐植食が、草地環境では草本食種が多い傾向がみられた。両植生環境では出現亜科群の違いが明瞭で、同様の食性や生態を有する亜科が共通した亜科群に分類された。蛾類群集は比較的小規模な植生環境下で環境指標性を有することが示唆された。
H30-1-12    特設テーマ@
題  目 高齢者市民との協働による絶滅危惧種ミヤマシジミの生息域内保全システムの開発
研究者 中村 寛志
概  要 本研究は、絶滅危惧種ミヤマシジミを材料に、第1段階として高齢者の保護活動の実践に役立つ野外導入技術などのマニュアルを作成した。第2段階では、伊那市と辰野町において、ミヤマシジミの導入とその食草であるコマツナギの移植を行う保護活動を実践した。いずれも高齢者が主体的にメンバーとして参加している保護団体が取り組み、個体群が大きく回復する成果を上げた。第3段階として、これらの活動が高齢者の健康や精神にどのような効果を及ぼしているかを、精神健康調査票の30 項目版(GHQ-30)で評価した。その結果、保護活動に参加している人は、参加していない人よりGHQ得点が低くなり、心と体の状態が安定している傾向にあることが分かった。また保護活動に参加し且つコマツナギを植栽している人はよりGHQ得点が低くなった。この傾向は高齢者になるほど顕著となり、保全活動が高齢者の心や体に好適な効果を及ぼしていると考えられた。
H30-1-13    特設テーマ@
題  目 長野県小谷村来馬層群の海成層の確認と堆積環境の復元
研究者 松本 健
概  要 下層ジュラ系来馬層群は、長野県、新潟県、富山県の3県にわたって分布する陸棚堆積物である。来馬層群の分布は、富山県-新潟県に分布する犬ヶ岳地域と新潟県-長野県に分布する来馬地域に分けられる。犬ヶ岳地域ではアンモナイトなど年代決定や堆積環境決定に有効な海成化石が見つかっているのに対し、長野県側の来馬地域では豊富に化石が産出するものの、年代決定や海成環境を示す化石見つかっていない。そのため堆積年代や来馬地域-犬ヶ岳地域のつながりがこれまでわかっていなかった。申請者は2011年度、2016年度、2017年度、2018年度と計4年間長野県小谷村の地質調査を行い、基礎地質の情報収集を行い、平行して化石サンプルの収集を行った。2017年には姫川右岸の露頭より海成環境を示す化石を採取し、今年度の調査ではさらに詳細な環境復元のデータ取得を目的として調査をおこなった。来年度は学会発表、論文発表にむけ補足的に調査を行う予定である。
H30-1-14    特設テーマ@
題  目 長野県内河川におけるシマドジョウ類の分布
研究者 柳生 将之
概  要 本研究は、長野県内に生息するシマドジョウ類を精査し、その地理的分布を明らかにするとともに呼称の妥当性について検討することを目的とし、シマドジョウ類の採集、形態の比較、遺伝子解析を行った。シマドジョウ類は、千曲川、犀川、天竜川各水系の上流から下流にかけて広く生息しており、計24地点から117個体が採集された。尾鰭周辺模様の比較、雄胸鰭の骨質盤形状の比較、遺伝子解析結果を総合すると、長野県内のシマドジョウ類は、現時点でヒガシシマドジョウ、ニシシマドジョウ、オオシマドジョウ、トサシマドジョウのいずれにも該当しないという結論にいたった。日本全国の遺伝子データベースを照合すると、中部日本の甲信越地方において、山地や河川の狭窄部によって隔てられた比較的広い分布域をもつ独立した系統群が存在することが鮮明となった。このことは、先行研究による4種の区分に一石を投じる興味深い結果であると考えられた。
H30-1-15    特設テーマA
題  目 光照射によるワサビの不定芽誘導と新規苗生産方法の可能性の追究
研究者 南安曇農業高等学校 生物部 (顧問 小林 孝次)
概  要 安曇野市は日本有数のワサビ生産地である。近年は温暖化による気候の変化や生産者の後継者不足により、生産量は減少傾向にある。本研究では、生産量の増加や増収益を目指し、新しい生産方法の確立を目指した。具体的には、ミスト(人工霧)を用いた栽培により、ワサビの葉・根の形成を促進させ、形成された葉・根を切り取り苗として生育することの可能性を検討した。研究の結果、葉・根の形成を促進させる要素は特定できなかったが、ミスト栽培により1〜3週間ほどで葉・根を形成させることができ、形成された葉・根を切除して苗にしていく方法を見出すことに成功した。本研究による手法は、従来の苗生産に比べ、苗1本あたりの生産コストと生産時間を大幅に減らすことが可能であり、安価なワサビ苗の大量生産ができると思われる。
H30-1-16    特設テーマB
題  目 口唇腺を構成する細胞は分泌癌の発生母細胞となるか?
研究者 清水 まや
概  要 乳腺分泌癌の形態学的特徴を示す唾液腺の分泌癌は、乳腺特異タンパクMammaglobin(MGB)陽性を示す。MGBは乳腺で確認されているが、唾液腺における分布は不明である。口唇腺の年齢・性差別のMGB陽性率(MGB-PR)、組織内分布とmRNA発現を明らかにするため、免疫組織学的・遺伝子学的に検索した。口唇腺のMGB-PRは10.9%で、年齢・性別で差はなかった。漿液細胞、粘液細胞、筋上皮細胞、導管細胞の全細胞がMGB陽性を示したが、腺房部のMGB-PRが導管部よりも高かった。代表例でMGBのmRNA発現を認めた。MGBは年齢・性別と無関係で、唾液腺の構成細胞に広く陽性だったことから、陽性細胞が分泌癌などの発生母細胞となりえること、さらに唾液腺幹細胞の一部が分化過程でMGB分泌能を獲得する可能性などが考えられた。今後、MGB-mRNAの発現を制御するホルモンなどの分子を検討する必要がある。

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