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平成30年度 研究概要 (第3部門)

H30-3-1
題  目 多能性幹細胞由来心筋細胞の移植後経時的変化についての検討
研究者 市村 創
概  要 多能性幹細胞由来心筋細胞による心筋再生療法において、移植後に心室性不整脈が出現することが臨床応用に向けての大きな課題である。心筋細胞には、心室筋、心房筋、ペースメーカー細胞の3種類が存在し、移植心筋細胞内にペースメーカー細胞が混在していることがその原因の一つとして挙げられている。しかし、これまで移植グラフトの中で実際に3種類の心筋細胞の割合が時系列でどのように変化するかは未知である。ラットにヒトES細胞由来心筋細胞を移植し、移植後2, 4, 12週で移植細胞内の心筋分画がどのように変化するかを免疫組織化学および遺伝子解析の手法を用いて確認する。
H30-3-2
題  目 山岳河川源流域のハビタットスペシャリスト昆虫トワダカワゲラ類の分子系統地理学的研究
研究者 小池 花苗
概  要 世界有数の地殻変動が今なお続く日本列島は、系統地理研究における好適なフィールドである。本研究で対象とするトワダカワゲラ科昆虫類は、山岳河川源流域の冷水環境に適応したハビタット・スペシャリスト種であり、分布域は低地や海峡などにより分断される。また、成虫は翅が退化しており移動分散能力は極めて低く、本種群の集団構造や遺伝構造は地理・地形や地史の影響を強く反映していると思われる。このような背景から本種群を対象に、分子系統地理学的アプローチから進化史の解明を試みた。その結果、約2,000万年前から日本列島が大陸から離裂し、現在の地形となるまでの地史と深く関連した種分化や分散(分布域の拡大)、分布域縮小などの進化史や、平地などの地理的障壁による遺伝分化、山岳形成や火山活動などの地史との深い関係性が示唆されるなど、様々な興味深い結果が得られた。
H30-3-3
題  目 乳酸菌オリゴDNAと生薬分子ベルベリンによる骨格筋分化誘導
研究者 進士 彩華
概  要 我々は、乳酸菌ゲノム配列に由来するオリゴDNAライブラリを用い、骨格筋幹細胞への作用をスクリーニングした結果、筋分化を促進する新規オリゴDNA(myogenetic ODN; myoDN)と、その作用を増強する生薬分子ベルベリンを同定した。本研究では、myoDNの作用機序を明らかにするため、myoDN結合タンパク質の同定を試みた。myoDNを固定したビーズで沈降したタンパク質をSDS-PAGEした結果、112 kDaのバンドを得た。質量分析の結果、このmyoDN結合タンパク質はヌクレオリンであることがわかった。ヌクレオリンは細胞表面で核酸を受容し、細胞内に輸送することが報告されている。蛍光標識したmyoDNを培養細胞に投与すると、2時間以内に細胞内に取り込まれることを認めた。myoDNはヌクレオリンと結合し、細胞内に輸送されることが示唆された。今後は、myoDNの作用機序を明らかにすることで、加齢性筋萎縮を含むロコモティブ症候群の新たな予防・治療法の開発に貢献したい。
H30-3-4
題  目 グラフのヘシアンの研究
研究者 矢澤 明喜子
概  要 頂点同士がどのように結ばれているかということを考えたのがグラフである。グラフに対しキルヒホッフ多項式と呼ばれる多項式が定義できる。本研究ではキルヒホッフ多項式のヘッセ行列について考察した。行列が正則かどうかを調べることは様々な文脈で大事になってくる要素である。本研究の成果として、完全グラフ、完全二部グラフと呼ばれるクラスのグラフに対し、そのキルヒホッフ多項式のヘッセ行列が正則であることを示すことができた。単に正則であるだけではなく固有値まで求めることができた。また、キルヒホッフ多項式を一般化した多項式のヘッセ行列についても考察した。本研究の成果として完全グラフの場合にキルヒホッフ多項式を一般化した多項式のヘッセ行列が正則であることを示すことができた。この場合も単に正則であるだけではなく固有値まで求めている。
H30-3-5    特設テーマ@
題  目 既存の標本から抽出したDNAを用いた高山蝶の系統解析
研究者 井坂 友一
概  要 本研究は、地球温暖化や人為的撹乱などにより地域個体群の絶滅や減少が報告されている高山蝶の個体群の変化や保護地域を検討する基礎情報として、それぞれの種の近縁種間との系統関係(各種の起源)、個体群内ならびに個体群間の遺伝的構造(例えば,個体群の遺伝的特性や、山岳地域間での遺伝子交流の有無)を明らかにすることを目的とした。本年度はサンプルが多いタカネヒカゲを中心に DNAを用いて分子系統解析を行った。タカネヒカゲは北米大陸では高緯度地域や山岳地域に特異的な分布をしている。分子系統解析の結果、タカネヒカゲは過去数回の氷河期と間氷期の繰り返しによって分布域の拡大、集団の隔離・二次的接触が繰り返される過程で種分化した可能性が示唆された。さらに、長野県周辺の山岳地域に生息するタカネヒカゲがサハリンから北海道経由で日本に侵入し、日本に分布を広げた後、気候変動に伴い中部山岳地域を生息域としたことが示唆された。
H30-3-6    特設テーマ@
題  目 長野県の夜空の暗さ調査
研究者 衣笠 健三
概  要 本研究は、長野県内の夜空の暗さを網羅的に調査するものである。この調査では、長野県内の系統的な夜空の暗さを測定することによって、都市部の照明などがもととなっている光害(ひかりがい)の長野県内の現状を認識することが可能となる。近年、星空観光が脚光をあびており、星空観光に対する需要が全国的に広まりつつある。環境省は、2017 年に星空観察を再開することを発表し、2018 年夏より測定の呼びかけを始めた。これにあわせて、長野県全域の星空環境を把握すべく、「長野県は宇宙県」のネットワークを活かした「長野県星空継続観察ワーキンググループ」を立ち上げ県内の協力者に測定への参加を呼びかけた。その結果、夏季は72 件、冬季は220 件という相当数の協力を頂き、どちらも都道府県としては全国で最も多くの測定規模となった。これらの測定データは今後の光害の推移を調査する基礎となり、環境保全の啓発に大変有効である。
H30-3-7    特設テーマ@
題  目 日本のマメ科高山植物-根粒菌共生系の起源と分布変遷
研究者 長谷川 慎平
概  要 マメ科植物は根粒菌と共生関係を結んでおり、共生には厳格な宿主特異性が存在する。そこで、両者が共生系としてどのように宿主特異性を維持しながら移動分散をしてきたのを解明するために、マメ科高山植物一根粒菌共生系を対象とした分子系続解析を行った。日本の高山7山域(大平山、焼石岳、飯豊山、白馬岳、八ヶ岳、北岳、富士山)よりマメ科高山植物であるイワオウギを採取し、葉緑体遺伝子を用いた分子系統解析および核のSSR領域を用いた集団遺伝構造解析を行ったところ、 日本のイワオウギは採取山域ごとに分化していることが示唆された。続いて、イワオウギの共生根粒菌について染色体遺伝子を用いた分子系統解析を行ったところ、根粒菌の染色体遺伝子は採取山域ごとにまとまる傾向が認められた。以上の結果から、イワオウギは山域ごとに共生関係を築いており、保全する上では山域ごとの共生系として保全活動を行うことが重要であることが示された。
H30-3-8    特設テーマ@
題  目 農作物の発芽・成長促進の高効率誘起のための低温大気圧プラズマ生成装置開発に関する研究
研究者 山田 大将
概  要 低温大気圧プラズマは自然環境を維持しながら種子の発芽・生育促進等の農作物への好影響が確認されている。一方で、これらの現像の作用機序は解明されていない。そこで本研究では、作用機序理解を進め実用化へとつなげるために、生成条件が異なるプラズマ生成装置を用いて、プラズマ特性と種子の発芽促進の相関関係を明らかにすることを目標とした。特性として活性種と発光伝播に注目し、コマツナの種子へとプラズマ照射し、影響を調べた。その結果、プラズマの生成条件によって特性が変化し、活性種生成量が多く、発光伝播速度が速いプラズマは種子の発芽を促進することが分かった。しかしながら、プラズマには今回計測した特性以外にも多くの特性が存在する。本研究成果に加えて、その他のプラズマ特性との相関関係の調査を行うことで、作用機序の理解を進め、農業応用に最適な低温大気圧プラズマ生成装置開発の提案・実用化へとつなげることが可能と考える。
H30-3-9    特設テーマA
題  目 味噌玉を介した味噌生産に関わる天然微生物の多様性解明とその潜在的利用価値の探索
研究者 奥西 宏太
概  要 山国信州では、古くから蒸煮した大豆を玉状に固め、発酵熟成させたものである「味噌玉」の生産が広く行われていた。この味噌玉を砕き、塩、糀、水等と共に発酵熟成させて生産された味噌を「玉味噌」と呼び、これは伝統的な味噌作りの方法である。しかし、味噌玉の生産には手間がかかり、品質の安定化を求められる現代の市場においては、敬遠されており、その生産技術は消滅してしまう危機がある。本研究では、味噌玉に関与する微生物に関して実態調査のため、消滅する危機にある発酵食品の微生物相を明らかにすることを目的として培養による調査を行い、またそれらの微生物の分離培養と同定結果に基づき、類縁の微生物を信州の自然において探索した。そして、この結果に基づいた発酵食品への応用利用について検討し、実際に地域の企業と協力して製品開発を進めた。
H30-3-10    特設テーマB
題  目 運動の新規効果「ヒストンターンオーバー」と H4K20me3 の関係を検証する
研究者 大沢 育未
概  要 【1.研究の動機】 慢性的な運動は骨格筋において「ヒストンターンオーバー」を引き起こすことが我々の先行研究から明ら かになった。しかしながら、ヒストンターンオーバーという現象の実態を直接捉えることはできていなかった。そこで本研究は、遺伝子組み換えマウスを用いてヒストンターンオーバーを実測することを目的とし実施した。 【2.方法】 H2B-GFPマウスを運動群と非運動群に分け、ドキシサイクリンを4週間投与した。運動群にはトレッドミル走を週5日実施した。実験前、4週間後に各群から前脛骨筋をサンプリングした。【3.成果】 クロマチン免疫沈降法を用いてヌクレオソーム内に取り込まれたH2B-GFPを定量した結果、運動群において有意な増加が認められた。したがって、ヒストンターンオーバーが実際に起こっていること、運動によってそれが促進したことを証明することができた。
H30-3-11    特設テーマB
題  目 健康長寿に向けた、加齢性疾患の性差医療基盤の構築
研究者 神吉 昭子
概  要 アドレノメデュリン(AM)は、多彩な生理活性を有するペプチド因子である。本研究では、AMの受容体活性調節蛋白の1つであるRAMP3のノックアウトマウス(RAMP3-/-)を用いて閉経モデルを作成し、閉経後代謝障害におけるAM-RAMP3系の意義を検討した。RAMP3-/-メスに対して卵巣摘出と高脂肪食負荷を行なったところ、野生型マウスと比べて体重増加、酸素消費量の低下、耐糖能異常、内臓脂肪重量の増加、脂肪肝の増悪を認めた。RAMP3-/-では、内臓脂肪における脂肪分解系因子の発現の低下、炎症関連遺伝子および酸化ストレス関連因子の発現亢進を認めた。 以上の結果から、AM-RAMP3系は代謝制御において重要な役割を有することが明らかとなった。RAMP3は、エストロゲンの膜型受容体であるGPR30に結合することが報告されていることから、エストロゲン系とAM-RAMP3系のクロストークが予想される。
H30-3-12    特設テーマB
題  目 活断層の変位量とその分布から推定される古地震規模と活動特性の解明 −糸魚川-静岡構造線断層帯北部区間での検討−
研究者 水谷 光太郎
概  要 2014年神城断層地震以降、変位量調査やトレンチ調査など神城断層の性状解明が進められているが、同断層の白馬村三日市場以南では活動特性を解明するためのデータが不足している。本研究では神城断層南半部において変位量データを集積し、神城断層南部地域及び全域の活動特性を明らかにすることを目的として研究を行い、以下の点が明らかとなった。 1、神城断層南部地域では約2750年前以降のイベントによりL3面変動崖約2-3mが形成された。 2、神城断層南部地域においては4-7千年前以降よりも1,2万年前から4-7千年前の間において活動性が高い可能性がある。 3、神城断層の変位量分布図より堀之内-三日市場地区付近にセグメント境界が存在する可能性がある。 4、神城断層南部地域における左横ずれ断層では平均変位速度2.0m/kyが得られ、上下方向の平均変位速 度を上回る可能性があり、左横ずれ断層の活動が卓越する地域が存在する可能性がある。

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