方言タイトル




music by Sora Aonami


★  昭和11(1936)年8月、「泥鰌」んとこのおじーまが「信州下伊那郡方言集」を謄写版印刷で作ったんだに。
この本は、ずーっと行方がわからんくておったんだけーど、伊那市にお住まいの福沢武一先生のご尽力のおかげで、ようやく
見つかったんな。それが、「泥鰌」が下伊那方言の研究をする気になったきっかけな。
そこで、「泥鰌」のわかる範囲で下伊那方言を解説したり、「泥鰌」が書いたつまらん文章を公開さしてむらいてーっちゅーことで、
このページを作ったんな。

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「飯田弁、わかるかな?」総集編を作ったに。ついでにおまけもあるに。 
飯田、下伊那の方言の使い方を紹介しとるんだに。共通語だとどんな意味になるんずら?
全部おわかりになりゃー、立派な「飯田・下伊那人」になれるに。(^^ゞ

飯田弁依存度チェック
おめーさまは飯田弁にどのくれー、浸かっとるずらか? 調べてみるといいかも知れんに。
結果は気にするこたーねーでに。遊びだでな。

「飯田下伊那方言中国語対訳集」編集委員会だより
飯田下伊那の日中友好協会青年委員会っちゅーとこでやっとる「対訳集」の編集についてをお
伝えしとるでな。2001年3月にできたんだに。注文を受け付けとるに。はいもう、在庫がちぃっとに
なってきたに。

「信州下伊那郡方言集」
1936(昭和11)年に編まれた「方言集」の全文を公開さしていただいとるんだに。
「消えてゆくことばの文化」
伊那史学会っちゅーとこの機関誌「伊那」へ不定期で連載をさせていただいとるんな。
「方言の灯よ、いつまでも」
柳田國男記念伊那民俗学研究所所報「伊那民俗」第44号へ掲載してむらった駄文だけーど、読
んでみておくれる?

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今までに「泥鰌」が書いたつまらん文章を公開さしてむらっとるんな。

みんなからいろいろと教えてむらえるとうれしいよぉ。(^_^;)























































































メ ニ ュ ー
ご覧になりたい項目をクリックしてくんなんしょ
「信州下伊那郡方言集」(昭和11年刊行)
「消えてゆくことばの文化」(「伊那」誌へ不定期連載)
「飯田弁、わかるかな?」
「飯田下伊那方言中国語対訳集」編集委員会だより
1 下伊那方言‐接尾語、接頭語等
2 下伊那方言の語尾、発音の転訛例
3 方言の日常会話
4 日常会話の解説
5 「メンメロ考」
6 「…ヤレ」という飯田下伊那のことば
7 ヤマッカジ
8 飯田・下伊那方言に関する参考資料一覧
9 方言はむずかしい
10 飯田・下伊那方言あいさつ一覧表
11 飯田・下伊那方言−食生活関係
12 飯田下伊那方言「人称代名詞」
13 「信州下伊那郡方言集」所収方言について(私見)


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下伊那方言―「接尾語」「接頭語」等の取扱い(順不同、思いつくままに記載)
・…ズ 行かズ
・…ズラ 行くズラ
・…ナンショ お寄りナンショ ごめんナンショ
・…カナ 行かんカナ
・…シナ 本を読みシナ歩く
・…ラ 行くラ
・…ナ(ナム(シ))(ナモ(シ))(ナン) そうだナ きのうナァ
・…ン 行かン できン
・…サラ りんごを皮サラ食べる
・…テ お取りテ またお出掛けテおくんなんしょ
・…ヨッタ 行きヨッタ
・…ヤ また、来てヤ またおいでてヤ
・…マイ(メェー) 行かマイ
・…メーカ(マイカ) 遊ばメーカ
・…カ 行かずカ
・…ヤレ (動詞の命令形に付く) 行けヤレ
・…ミヨ 貸してミヨ
・…ショ (「…せよ」の訛) 見ショ
・…マ あにーマ
・…ベ 行くベ
・…カラカス 飲みカラカス 巻っカラカス
・…ニ そうだニ
・…デ このお菓子は食べデがある 寒いデ戸を閉めて
・…チョ (名古屋弁の流入) 貸してチョ
・…ダラ そうダラ
・…サ 太郎サ
・…キシ これっキシ
・…クンナ (「…クンナンショ」は丁寧な用法) また来ておクンナ 貸してクンナ
・…カエ 行かんカエ
・…ジャンカ 有るジャンカ
・…ジャン 行くジャン
・…チャウ (「…ってしまう」の訛) 行っチャウ しゃべっチャウ
・…チャエ (「…ってしまえ」の訛) 行っチャエ 早く見チャエ(早く見チマエ)
・…キャーセン (「…きはしない」の訛) 開キャーセン
・…チュー(ツー) (「…という」の訛) なんチューこと
・ド(デッ)… (強調する意味で「ド」がつく) ド坐る
・ブッ… (強調する意味で「ブッ」がつく) ブッ倒れる
・ブン… (強調する意味で「ブン」がつく) ブンなぐる
・フン… (強調する意味で「フン」がつく) フンじばる
・…ユー こうユーこと
・…フー ああゆーフー
・…ネェ (「…ない」の訛) きたネェー (汚い)
・…ケェー (「…かい」の訛) あったケェー (暖かい)
・…チィー あチィー (熱い)
・…メェー (「…(してし)まえ」の訛) 行っちメェー
・…リャー (「…れは」の訛) こリャー大変だ
・…ベェー (「…ばい」の訛) いいあんベェー (いいあんばい)
・…ペェー (「…ぱい」の訛) いっペェー取れたか (いっぱい)
・…レー (「…らい」の訛) からだがえレー (からだがえらい)
・…トル (「…しておる」の訛) 知っトルか
・…ホ(ー) おらホ (俺の家、俺のところ、俺たち)
・…ト(ー) おまえんト (お前の家、お前のところ、お前たち)
・…テェー (「…たい」の訛) ばかっテェー (馬鹿ったい)
・…クロ(クリョ) (「…くれよ」の訛) やってクロ
・…エー (「…あい」の訛) ぐエー (具合)
・…リィー (「…るい」の訛) 気持ちがわリィー (気持ちが悪い)
・…ツラ はがきを送っツラ



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下伊那方言の「語尾」及び発音の転訛等の例(M36調査)
◎転訛
・…リャー こうすリャー  起きリャー    (…れば)
・…キャー 行キャー (…けば)
・…チャー 行っチャー (…ては)
・…ジャー 行かジャー (…ずば)
 ・…ニャー 行かニャー (…ねば)
 ・…ミャー 住ミャー (…めば)
 ・…ビャー 飛ビャー (…べば)
・…タラ 行っタラ (…らば、…れば)
・…ネナ こんネナもの (…ような)
・…ネニ こんネニ (…ように)
・…ヤス 行きヤス (…ます)
・…ナンショ おいナンショ (…なさい)
・…ワッチャ いいワッチャ (…わい)
◎省略、約
・…チウ 何チウ (…という)
 ・…ナラ それナラ (…ならば)
・…ツラ こうしツラ (…であろう)
 ・…ズラ 行くんズラ (…であろう)
 ・…ゼ こうするゼ (…ぞえ)
 ・…ノ 悪いノ (…のであります)
 ・…ニ 行く二  よす二 (…ます)
 ・…ナンダ こうせナンダ (…しなかった)
 ・…ラ 来るラ (…であろう)
 ・…ナンカ おいでナンカ (…なさらんか)
 ・…ケ そうケ (…かい)
◎その他
  ・…サラ 箱サラ (…と共に)
 ・…ズ 行かズ (行かんず…欲)
 ・…シカ これシカ (限り)
 ・…ナム(…ナー、…ノー、…ネー) 寒いナム (敬意)
 ・…カラカス 押しカラカス (動詞の意を強める)
 ・…ツ 行ったっツ (小過去の辞)
 ・…エー 行ったエー (ナー、ノー、ネーの類)


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方言の日常会話―「松川町の方言」(S61.3松川町教育委員会刊行)より抜粋
                                                                       
A「オスシクなりました。シバラクブリでちょっと近くへ来たモンデ。」
B「アレマー、大坪のアネサンカナ。ハールカブリダナム。ヨーヨットクレタナム。さあ、オヨリトクン
 ナンショ。ランゴクシトルケード。」
A「晩のアレーマシをシンナランデ忙しいラネ。」
B「インネ。今ちょうどオチューハンが済んだトコダデ。」
A「ソイジャ、ちょっとヨラセテもらうかネ。ゴメンナンショ。」
B「さあさあ、今、お茶いれるデ。オゾイトコだケード、ユルリバタで。」
A「コリャー、ウチでなったササギだが、一度オアガリトクンナンショ。」
B「ソリャーマー、オショーシにございます。ガマンなササギだナム。ウチでも作ったケード、アダケト
 ッタラ、ヤケチマッテ、ズデーならんモンデ、オツヨのミがなくてナム。」
A「そうかネ。ワシラエジャー、ダダクサモネーなるモンデネー。ときにきょうはオイサマはオイデ
 ンかネ。」
B「フー、きょうはイザレーに行ったンナ。ヘーぼつぼつケールラと思うケード。いつも、オシキセが
 出るデ、きょうも飲んで来るラ。」
A「ソリャー、ゴセッカクだね。ガシンなオイサマだデ、ガシガシ働いトルンズラ。」
B「そんなことはネーニ。ジキにケールラデ、ラックラしてイットクンナンショ。」
A「コネーダ春男サエエでヤヤが生まれたっチューが、アカかネ、ボウかネ。」
B「それがドイレー、タッシャなボーでナムホイ、ウチ中大喜びナ。」
A「そうかネ。ウチでもお祝いもらっトルデ、イカンナランが、ウブイヤケ時分に一緒にイカメーケ」
B「ソリャいいナム。その時ニャア一緒にイカズナム。」
A「さて、ぼつぼつ帰らニャー。どうもゴッツオになりました。」
B「アレマー、ヘーオカエリルノカナ。ロクなオカマイもセナンデ。」
A「ソイジャ、オイサマにヨロシク。」
B「またオイデトクンナンショ。」



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主な方言(カタカナ部分)の解説
[オスシクなりました]
 夕方のあいさつで、お涼しくなりましたの意。オセシク…という人もある。
 夏…オアツ(ー)ございます
  冬…オサム(ー)ございます
 晴天時…イイアンベー(イイアンバイ)でございます
  曇天時…オウットーシューございます
  雨天時…オワルイ天気でございます
他家を訪れる時(夜以外)…ゴメンナイ(ン)ショ(辞去するときも同じ)
同上 (夜)…オツカイ(レ)でございます(辞去するときはオヤスミナイ(ン)ショ)
大雨の時…オーブリでございます
ひでりの後の雨の時…いいオシメリでございます
[来たモンデ]
 「来たもので」の音便。「来たモンダデ」という場合もある。
[アネサマ]
 自分より上流の家の主婦をさす。下流は「オカー」となる。「サマ」は「サ」「マ」を省略する用例
 が一般的。ただし、「アネサ」「アンネ」となると単に成人の女性ということになる。「アンネ」は、
 自身の姉に対して用いるが、敬称がつくと「ネーマ」となる。他家の主婦を指すときには「オカッサ
マ」という。
[ハールカブリ]
 久しぶりの意。上伊那では「シバラクブリ」ともいう。ていねいに言うときは「オハールカでござ
 います」となる。
[ナム]
 伊那谷、特に下伊那特有の語尾。ナムシ、ナムホイ、ナーシ、ナン、ナー、ナモ、ナモシなどあり。
[ヨットクレタ]
 「寄っておくれた」の「テ」と「オ」がつまって「ト」になった。後出の「オヨリトクンナンショ」
 「シトル」も同じ。「寄ってくれた」に「オ」をつけて「ヨッテオクレタ」、「寄ってくんな」に
「オ」をつけて「ヨッテオクンナ」と非常にていねいな言い回しも伊那谷(下伊那)の特徴である。
[オヨリトクンナンショ]
 「クンナ」に「オ」がつき、さらに「ナンショ」がついた非常にていねいな言い回し。
[ランゴク]
 乱雑の意。古語の「らっぴらんごく」から派生。「ランゴクな所」とか、「ランゴクシトル」などと
 使う。
[インネ]
 いいえの意。「インニャ」とも。強く否定する場合は「…ネ(ニャ)ー」となる。
[オゾイトコ]
 粗末な場所という意。改まった客を座敷以外へ招ずる場合に使う。「オワルイトコデ」という言い方
 もある。「オゾイ」は文語の「おぞ(ま)し」の口語体で恐ろしいとか、悪賢いなどの意がある。
 方言としては地方によって大きい、忙しい、ませている、こすい、弱い、非常になどの使われ方が
 あるが、概して「わるい」意味に使われるようである。
[オチューハン]
 午後の間食をさす。「オチャハン」「オコジハン」「オチャノコ」ともいう。
[アレーマシ]
 炊事をすることをいう。「アレーマーシ」「ゾーシ」とも。炊事をする場所を「ダイドコ」「ナ
 ガシモト」などという。
[ヨラシテ]
 ヨラセテ、ヨセテ、ヨシテ、ヨラサセテなどの言い方がある。
[ユルリ]
 いろりのこと。
[ササギ]
 正しくは「ささげ」である。
[お茶をいれるデ]
 「お茶をいれるから」の意。「…デ」は、「…故」で「雨が降るデ」「今行くデ」などと使う。
[オショーシにございます]
ショーシとは、「笑止」で、本来おかしいとか、片腹いたいの意。「笑止」には気の毒という意味もあ
 り、こんなによい物をいただいてはお気の毒という先方の胸中を汲んでの感謝の意を表するときに
 使われる。
[アダケトッタラ]
 「アダケル」とは、ふざけるの意が一般的。力を入れぬとか、怠けるという意に使っている。
[ガマン]
 たいそうな、りっぱなの意。同意の語に「タイシタ(テーシタ)」がある。
[ヤケチマッテ]
 ひでりなどで、野菜の生育が悪いので「ヤケル」と言っている。
[ズデー]
 もともととか、生来という意であるが、全くだめとか、まるっきりいけないといった状況の時に使う。
 「ズダイ」の音便。
[ダダクサモネー]
 ダダクサは、雑然として整理の行き届かないことを意味する古語。したがって、粗雑、ぞんざいという
 意味になる。
[オイサマ]
 他家の成人のことをさす。前出のアネサマに対する語。
[オイデンカナ]
 行く、来る、居るともに「オイデル」で、否定するときに「オイデン」、過去形が「オイデタ」
となる。「オイデンカナ」は、「おいでにならないか」という問いかけであるが、「おいでなさる
か」という場合は、「オイデルカナ」となる。
この「ン」と「ル」の言い回しで意味さえも変わってくるので注意が必要。
[イザレー]
 「井ざらい」のこと。「井」の清掃ということになるが、下伊那で「イ」といえば、井戸ではなく、
 水田の用水路をさす。「イ」は「イスイ」「イゲタ」とも。
[ヘー]
 「もう」という意。
 「まだ来ないと思っていたら、もう来たか」→「マンダコンと思っトッタラ、ヘー、来たのカナ。」
[オシキセ]
 イザレーやミチツクリ(道普請)などの労役に出たのちの慰労の酒、または晩酌のこと。
[シレンケード]
 「知らないけれど」の意。「ケード」は「けれど」の音便。「シランケード」とも。
[ゴセッカクダネー]
 ご苦労様だねの意。
[ガシン]
 昼夜かまわずよく働くさま。
[ラックラ]
 お楽にとか、ゆっくりとかいう意味。「ユックラ」とも。
[コネーダ]
 「この間」が「こないだ」になり、さらに「コネーダ」に転訛した。
[春男サエエ]
 「春男さんの家」の意。
「…エ」は上伊那に多い。下伊那では「春男サホー」が一般的。
[ヤヤ]
 「ややこ」の略。赤子をさすが、女の赤子を「アカ」と言い、男の赤子を「ボー」と言う。
[ウブイヤケ]
 「オブヤ(ア)ケ」とも。産屋明けの意。「ヤケ」は「アケ」とも。
[イカメーケ]
 行こう、行きましょうの意。上伊那では「…ケ」と使うが、下伊那では「イカマイ(カ)(ナ)」
「イカメー(カ)(ナ)」が一般的。
[イカズナム]
 行こうの意。「イカメー」が呼びかけの意をもち、「イカズナム」は、答える場合に用いている。
「行こうか」という時は「イカズ(カ)」となるが、「行くものか」という時も「イカズ(カ)」で、
 両者の違いはアクセントで区別することになる。
[ゴッツオ]
 ごちそうの意。ていねいに「オゴッツオになりました」という人もいる。
[…リャー]
 「あれは」が「アリャー」、「これは」を「コリャー」と使う。「れは」の音便。
「…たい」が「…テー」、「…ない」が「…ネー」など音便例は多い。


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「メンメロ」考

メンメロとは?―W小「自然だより」第1号―記述の植物
 昭和28年に下伊那教育会が発行した「下伊那方言集−中間報告−」には、次のような記載があります。
 メンメロ はしばみ、うのはしばみ、やしゃぶしの総称 売木村
 自然だよりには「ねこやなぎ」ではないかと書かれていますが、売木村に存在することばと「下伊那
 方言集」には、書かれいます。残念ながら、祖父の「信州下伊那郡方言集」には、「メンメロ」の記
述はありません。
 ところが、平成9年11月に「在京飯田高校同窓会」が刊行した「飯田・下伊那の方言」を調べました
ら、「メンメロ」は「ねこやなぎ」と解説しています。したがって、自然だよりに書かれていたとお
り、「メンメロ」は「ねこやなぎ」と理解してよいと思います。
「はしばみ」とか「うのはしばみ」「やしゃぶし」とはどんなものか、私にはわかりませんが、売木村
で使っているということを考えると、和合に「メンメロ」が存在していても不思議ではありません。
 しかも近隣の町村等の「方言集」などを調べると、昭和7年刊行の「伍和村方言集」、昭和61年刊行
の「松川町の方言」などに「メンメロ」の記述はありません。
売木、和合を中心としたこの地域独特のことばではないかと推察しています。
 「ねこやなぎ」は全国的にどのような異称で呼ばれているか、これについては、東京堂出版で刊行し
ている「全国方言辞典」「分類方言辞典」で調べました。
いっこ 福島
いぬころ 和歌山県東牟婁郡
いんころ 石川県鹿島郡
えっこ 福島県若松 「いっこ」の「い」が「え」に転じたもの
かわらのこちこち 山形県荘内
こちこち 秋田県鹿角郡
こぶやなぎ 大阪府泉北郡
さるこやなぎ 千葉県夷隅郡 埼玉県幸手
ちんこやなぎ 群馬県邑楽郡
とーとー 鳥取県東伯郡 岡山県津山 備後では「えのころぐさ」をこう呼ぶとか
やなぎころころ 群馬県佐波郡
いぬこやなぎ 仙台
ちんころ 長野県伊那地方 確かに私の母は「ちんころ」と呼びます
たんころ 滋賀県野洲郡 ただし「まつぼっくり」と注がある
 所変われば品変わると言いますが、実にさまざまな異称があります。
 植物や、動物などの呼び方は、地域によって実にさまざまです。それも父祖の時代の生活の中から呼
称されてきているものは、その動植物の風貌、容貌などから付けられたものが多いので、こうした調査
も試みてみると、意外とおもしろいと思います。


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「…ヤレ」という飯田下伊那のことば

 「ヤレ」という語は、基本的には動詞の命令形のあとに続く語である。
    例 「見よヤレ」「行けヤレ」「言えヤレ」
        「貸せよヤレ」「見せよヤレ」
        「買ってくれ(りょ)ヤレ」
 「見せてくれヤレ」とはあまり言わないが、「見してくれ(りょ)ヤレ」という使い方が一般的であ
るが、「見して」は、文法的には正しくない。(同様に「貸してくれ(りょ)ヤレ」の「貸して」は、
文法的には「貸せて」が正しい。)しかしながら、下伊那方言で「…クレ(リョ)ヤレ」は、「…シテ」
に続くパターンが多い。  「貸せよヤレ」「見せよヤレ」は「…(クレ)ヤレ」が「…シテ」に続くパターンを加味すると「貸
しよヤレ」「見しよヤレ」となり、これらが転じて「貸ショ」「見ショ」となっていく。  実際の会話の中で「貸ショ」「見ショ」という使い方をするし、「貸せよヤレ」「見せよヤレ」とは
言わずに、「貸ショヤレ」「見ショヤレ」となる場合が多い。  もともと、この「…ヤレ」が続く動詞の命令形は「命令表現」を強調する「…ヨ」がついたものであ
ったと考えられる。「起きろヤレ」と言わずに「起きよヤレ」(正確には「起きろよヤレ」―これの転
訛が「起きよヤレ」)と言うし、前述の「見せよ」「貸せよ」はその一例である。この「…ヨ」が失わ
れた形が現在使われる「行けヤレ」「言えヤレ」などであり、「貸せよ」「見せよ」は、「貸ショ」
「見ショ」という形で本来の形である「…ヨ」を残している。(「…クレ(リョ)ヤレ」はその典型的
なタイプ)  したがって、この「…ヤレ」は、単に動詞の命令形に続くわけではなく、その命令表現を強調したも
のに続くわけで、「見せる」「行く」といった行為を強要するときに使われるということになる。


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ヤマッカジ(ヤマカジ)

 古くは、蛇のことを「ノジ」と呼んだ。
 虹を「ニジ」と呼ぶのも、その存在を「七色の大蛇」と見た古代人の精神生活を物語るものだといわ
れている。  「アオダイショー」を下伊那では「アオロジ」「アオナ」「ナブサ」などと呼称するが、「アオロジ」
は、「アオノジ」の訛と見られ、「アオ」(青)「ノジ」(蛇)ということになる。(一説には「アオ
ロジ」は古来は、「アオオロチ」と呼称したという説もある。「オロチ」とは神話に出てくる「ヤマ
タノオロチ」の「オロチ」であり、これもまた「蛇」を指している。この説でも「アオオロチ」は「ア
オ」(青)「オロチ」(蛇)ということになる。)  また、下伊那では、鮮赤色の小さな毒蛇を「ヒヤッカジ」と呼ぶ。  共通する部分は「〜ジ」であり、いずれも「ノジ」の訛と思われる。  ただし、「アオロジ」同様にその蛇の様をあらわすとすれば、「ヤマカジ」「ヒヤッカジ」ともに説
明がつかない。 「ヤマカガシ」が「ヤマカシ」あるいは、「ヤマガシ」と転じ、訛って「ヤマカジ」となったとも思
われるが、「〜ジ」が「ノジ」の転と考えるほうが、ことばの成り立ちからは適当かもしれない。


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飯田・下伊那方言に関する参考資料 ( )内は刊年、著者

(下伊那地域)
1 長野縣下伊那郡方言調査書(明治36年11月調査 長野県)
2  伍和村方言集(昭和7年12月 伍和村小学校)
3 信州下伊那郡方言集(昭和11年8月 井上福實)
4 下伊那郡方言集(中間報告)(昭和28年3月 下伊那教育会)
5 松川町の方言(昭和61年3月 松川町教育委員会)
6 飯田・下伊那の方言(平成9年11月 在京飯田高校同窓会)
7 伊那谷の方言歳時記(昭和62年9月 下澤勝井)

(周辺地域)
8 上伊那郡方言集(昭和26年 畑 美義)
9 上伊那の方言「ずくなし」(昭和55年 福沢武一)
10 諏訪方言集(昭和36年9月 長野県諏訪実業高等学校地歴部)
11 木曽の方言(昭和49年10月 矢島満美 福沢武一補注)

(信州方言全般)
12 信州方言300語分布一覧表(刊年不明 足立惣蔵)
13 信州方言辞典(昭和53年 足立惣蔵)
14 信州の方言(昭和46年 馬瀬良雄)
15 信州方言風物誌(昭和31年 福沢武一)

(その他)
16 長野県下伊那郡南信濃村の植物名方言と植物民俗(昭和58年3月 浅野一男)
17 根羽村の植物と民俗(刊年不明 浅野一男)
18 天竜村の植物と民俗(刊年不明 浅野一男)

その他多数あり。


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平成2年に祖父の「方言集」に出会って以来、この書を何とかして多くの皆さんにみてもらいたいと考え、そっくりそのまま複写してお世話になった方々へお配りさせていただいた。その後、祖父が信濃教育会誌「信濃教育」や郷土雑誌「山村」などへ投稿した方言に関する論考を目にして、これらをも所収した「信州下伊那郡方言集」の復刊を思い立ち、平成7年12月に自費出版という形で刊行させていただいた。F先生には、復刊作業以降、厳しいご指導をいただいている。以下は、F先生のご指導の一端についてふれた拙文です。





 方言はむずかしい

 平成2年2月、祖父が昭和11年に編んだ「信州下伊那郡方言集」に出会った。以来、素人ながらこと
ば、特に「方言」が持つ不思議さ、魅力に惹かれ、方言の収集を始めた。  「信州下伊那郡方言集」は、祖父が他界したのち、遺品を整理するうちに我が家からも消え、長い間、
その存在そのものも疑われるものとなっていた。それを捜し当てたのが、元U女子短期大学国文科教授
のF先生であった。先生は、万葉学者であるとともに、長野県の方言を長い間、調査され、方言に関す
る著書、論文も多く、その考察は、独特のもので、「F方言学」と呼ばれている。  平成9年、飯田市教育委員会から、こともあろうに「飯田市誌 民俗編」の執筆調査委員を委嘱され
る羽目になり、しかも「方言」の担当を命ぜられてしまった。こうなると、どうしてもF先生にお会
いして、「F方言学」の一端に触れなければならない。そう思って、3月14日、先生宅に出掛けた。
 先生は、平成9年に83歳になられたとのことであったが、ことばに対する学究は、ますます壮んで、
次から次へと関連の書籍を提示されながら、方言研究のあり方を示唆してくださった。  現在、日本各地で出されている「方言集」は、そのほとんどが、単語をならべ、共通語の意味を書き
連ねている。いわば辞書のようなものである。ところが、F方言学は、辞書的な方言集を発展させ、そ
のことばの成り立ちまでに追求するというもので、万葉学者ならではの手法をとっている。  方言は「いわれなきもの」に思われ勝ちですが、なかなか、真理の担い手です。互いに突き合わ
  せることによって方言の真意が明かされ、同様に、共通語・古語の真意も明かされてきます。方言
  は日本語解明の金の鍵なのです。(F先生著書)  「私は、言語学、民俗学の全くの素人ゆえにF方言学はとても実行などはできません。」と先生に申
し上げた。すると先生は、「私も最初は素人でした。何度もやっていくうちにコツが見えてきます
よ。」とおっしゃり、「現在は、ことばが記号化しています。日本人ほど、自国語を粗末にしている民
族はないでしょう。」と付け加えられた。    私の考えはいささか違います。むしろ田舎じみた粗野な言葉の中にこそ血が流れています。血と
  は、言葉を作り、これを使い、これを育てた人々の心が宿っていることを意味します。心とは、理
  知・感情といったもののすべてです。そうしたものを忘れ勝ちなのが現代人でないかと恐れます。
反省してみる必要があるのです。―最高の文化人を自負している私達は、とんでもない野蛮人でな
かったか?…と。 (中略) 言葉は父祖と共に息づいていました。    それに比べたら、私たちはどうでしょう。言葉は記号にすぎません。言葉と私たちは離ればなれ
です。私たちはあてがわれたものを無神経に受けとっているだけのことです。言葉は死に、私たち
自身も死んでしまっているのではないでしょうか?(前出書)  F先生が示された方言研究の一例をあげてみる。   下伊那にある「ミショ」「ミシテ」「ミチョー」「ミテミョー」などのことばは「見る」あるいは
「見せて」といった意味のものである。これらのことばは微妙に意味が異なっている。どういう時に使
うのだろうか。  「見せてくれ」→「ミショ」「ミシテ」   「見てごらん」→「ミテミョー」   「見なさい」→「ミチョー」  「ミテミョー」のように「〜ミョー」という用例がほかにないだろうか。  「ミショ」のように「〜ショ」という用例はないか。動詞をいくつかあてることで、ほかにどうかと
いう問いかけは解決していく。「貸す」という動詞をあてると「カシテミョー」「カショ」となるよう
に。  また、伊那谷には、「〜ヤレ」という用例の方言がいくつかある。前述の「見る」を例にとると「ミ
ヨヤレ」がそれである。   「走る」→「トベヤレ」   「受ける」→「ウケヨヤレ」   「起きる」→「オキロヤレ」  いずれも、「動詞の命令形+ヤレ」である。ところが、「ミヨヤレ」とは使うが、「ミロヤレ」とは
あまり言わない。「オキロヤレ」とは言うが、「オキヨヤレ」はどうなのか。  単語の羅列にとどまっている各地の方言集をさらに発展させるには、「ことばづかい」に手を入れる
ことだとF先生は話されている。 「飯田市誌 民俗編」は、平成17年に刊行される予定である。民俗編に登載する「飯田弁」をF方
言学によって解明することなど、私には到底できるものではない。しかし、一歩でも近づきたい。頭
痛の種がまたひとつ生じた3月14日であった。


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飯田・下伊那方言あいさつ一覧表

 ・朝 「オハヨーゴザイマス」(共通語)
 ・日中「コンニチワ」(共通語)
      夏「オアツ(ー)ゴザイマス」
      冬「オサム(ー)ゴザイマス」
      天気によって
        晴天「イイアンベー(イヤンバイ)デゴザイマス」
        曇天「オウットーシュー(オットシュー)ゴザイマス」
        雨天「オワルイオテンキデゴザイマス」
        大雨「オーブリデゴザイマス」
        乾期の雨「イーオシメリデゴザイマス」
  ・夕方(日暮れ時まで)「オス(セ)シク(オツシク)ナリマシタ」
  ・夜間「コンバンワ」(共通語)
  ・他家を訪れるとき
   (日中)
        「ゴメンクダサイ」(共通語?)
        「コンニチワ」(共通語)
        「ゴメンナイ(ン)ショ」
      (夜間)
        「コンバンワ」(共通語)
        「オツカイデゴザイマス」
        「オツカレデゴザイマス」
  ・他家を辞去するとき
      (日中)
        「ゴメンナイ(ン)ショ」
      (夜間)
        「オヤスミナイ(ン)ショ」



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飯田・下伊那方言‐食生活関係(順不同)

  オチューハン    午後の間食。オチャハン、オコジハン、オチャノコとも。
 ニハチ       山仕事に行く人が持っていく間食。
  アレーマーシ        炊事をすること。ゾーシとも。
 ダイドコ            炊事をする場所。ナガシモトとも。
 オシカケ            洗米して釜に入れ、水加減をすること。
 ウミル(ウム)      飯が炊きあがって蒸れること。
 ネーヅクリ          炊き立ての飯。
 シャーク            水を汲む柄杓。
 シオケノゴハン      いわゆる「五目飯」。オシオケノゴハン、シオケノマンマとも。
 オチャヅケ          釜に残った(食べ残りの)冷飯。
 アッタメゴハン      オチャヅケを蒸器で暖めた飯。フカシゴハンとも。
 オシー              味噌汁。オシーは子どもが使い、大人はオツユ(オツヨ)という。
  オカボ              南瓜。
  ニドイモ            ジャガイモ。コーシンモ(コーシイモ)ほか異称多々あり。
 デーコ(デーコン)  大根。
  オカゾ              オカボなどを煮つけたもの。
           いわゆるおかず(副食)をオサイという。
 オシタジ            オカゾの汁。すまし汁をさす場合も。シタジとも。
 オコワ              赤飯。蒸かしたものはオコワ、煮炊きしたものはニコワという。
                   赤飯以外のコワメシは、ニコワとなる。
 アカイマンマ        赤飯。餅米が入って、蒸かしたものは、オコワ。
 アオモノ            野菜。シャエンともいう。(菜園の訛)
 オテショー          手塩皿。
  オテノコ            手塩皿に盛らず、掌にのせてものを食べること。
           オテンクボ、オテノクボ、オテンコとも。オテショーは、手塩皿
           のことをさすが、オテノコと同義に使う例もある。
  オコーコ            たくわん漬け。コーコとも。
  オハヅケ            菜の漬け物。オハとも。
 ナガヅケ            オハヅケを切らずにそのまま漬けたもの。
 キリヅケ            オハヅケを切って漬けたもの。
 アサヅケ            翌朝食べるように漬けたもの。トーバヅケとも。
 オイハン            夕食。お夕飯(オユウハン)の訛。
 オツメリ            小麦粉を練って南瓜などとともに味噌汁で煮たもの。すいとん。
                      オツムリとも。
  ケーモチ            そば粉を湯で練ったそばがき。
  オヤキ              小麦粉をこねて焼いたもの。
 アラニ              ブリやサケの骨や頭を大根と共に煮たもの。
 ミドコ              ブリやサケの骨に僅かについている肉。
 アラレ              豆を混ぜて搗いた餅。アラレモチとも。
 アンモ              餅。幼児語。
 イカキ              ざる。イザルとも。
 イタツキ            蒲鉾。
 イタダキマシタ      食後のあいさつ。共通語では「ゴチソウサマデシタ」という。
 イチゼンメシ        飯を椀一杯だけで済ませることで、忌み嫌う。
 エマス              煮る。
 オカエボン          給仕用の盆。オケーボンとも。
 ゴッツォ            ごちそう。
 オキャクニナル      他家でゴッツォになること。施主側はオキャクニスルという。
  オキュージヲスル    客人の食事の世話をすること。
 オキラムキヲスル    客人の相手をすること。オキラムキはオキラメキとも。
  オシーヲスル        客人にものごとを(無理に)すすめること。
 オズンズ            うどん。幼児語。
 オテンコモリ        飯を椀に山盛りにした状態。テンコモリは共通語(俗語)。
 オトップ            豆腐。幼児語。
 オネバ              おもゆ。
 カッコム            食べ物を急いで(あわてて)口の中へ入れて食べる状態。
 コシキ              蒸籠。
  ヒビ                繭から取り出したさなぎを佃煮にしたもの。
 ショイノミ          溜まり味噌。麹を醤油で掻いて一昼夜程度置いたもの。
           オショウユノミとも。
  スッポコダイ        食卓。飯台。
 スヤル              腐る。
  ネーユ              熱湯。ネーチンとも。
 ネール              煮える。煮えているは、ネートル。
 ヤシナウ            口に入れてやる。



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飯田・下伊那方言「人称代名詞」

 飯田・下伊那の「人称代名詞」の特徴は、名称のあとへ「マ」または「サ」がつくことが多いという
ことである。  具体的には、「よしお」さんという人を呼ぶときに「ヨシオサ」とか「ヨシマ」と使うのが通例であ
る。これは、特定個人の例であるが、個人名称以外の場合も「マ」または「サ」は、「兄」をさすとき
に「アニサ」「アニーマ」と使うように頻繁に用いられている。  この「マ」、「サ」は、「様(サマ)」の「サ」または「マ」を省略したもの、つまり「○○サマ」
が、「○○サ」とか、「○○マ」と転じたものといわれている。 ◎兄、若い男、息子 アニーサ アニーマ ニーマ ニーサ ニーチャ アニー ニー ◎姉、若い女、娘  アネッコ アンネ アネーマ アネサ ネーマ ネーサ アンネサ ネーチャ ネー ◎子ども コンボ ボコ(幼児) オイボチ(甥)→姪に対して「メイボチ」とは言わない オタカラムスコ(秘蔵っ子、愛児)→「オタカラムスメ」とは言わない オトコビッチョ、オトコビー(元気のよい女の子) オトンボ、オトッコ(末っ子) シタ(その子どもよりあとに生まれた子ども) ウエ(その子どもよりまえに生まれた子ども) ・男の子 コゾー ガキンチョ ボー ボーサ ボーマ  クソボーズ、クソコゾー(卑語) ・女の子 コビー コビッチョ ビー ビッチョ ヤヤ ヤヤサ ヤヤコ  クソコビー、クソビー(卑語) ・赤ん坊 アカ、コンボコ(赤子) ボー、ボーサ、ボーマ(男の赤子) ヤヤ、ヤヤサ、ヤヤコ(女の赤子) ◎主人、夫 オイサマ(主人) オトー(夫) ◎主婦、妻  アネサマ(主婦、義理の姉) オカー(妻) オカッサマ(主婦、嫁) オバサマ カカ(妻) カカサ(奥様) ◎親族、家族 ・父 オトー オトーマ トー ・母 オカー オカーマ カー ・祖父 オジー オジーマ ・祖母 オバー オバーマ ・伯叔父(おじ) オイサン※ オジサン※(共通語) オイサマ ・伯叔母 オバサン※(共通語) オバッコ オバサマ ※このオイサン、オジサン、オバサンは、親族関係のおじ、おばに用いるほか、子ど   もが大人の男女に対して、使う。 具体的には友達の親を「○○くんのオジサン」といった形で呼ぶ。 ◎自分、わたくし ウラ オラ オイラ アタイ ワシ テマイ ワシャー、オラー→この場合は、単に「私」ではなく、「私は」という意味になる (複数形)→わたしたち、じぶんたち オラントー ワシラ オランター オレントー オラーター ワシトー ワシター アタイトー オイラトー アタイター オイラター オレトー オレター オラトー テマイトー (自分の家、方向、自分の考えなどをさす) オレンチ、ジブンチ、ワシンチ、アタインチ、オランチ、オイランチ(家) オラホー オラホ ワシャホー ワシャホ テマイホー ◎他人、あなた、おまえ オメー オメーサマ オミャーサマ オメサマ オメーサン テメー テメーサマ ワリャ オミャー→この場合は、単に「おまえ」ではなく、「おまえは」という意味になる (複数形)→おまえたち オメントー オミントー オメンター オメートー オメーター オメーントー テメートー テメーター テメーントー (相手の家、方向、相手の考えなどをさす) オメーンチ、キミンチ、テメーエンチ、テメインチ(家) ヨソネ→自分の家以外をさす一般的な用例 オメーホー オメーホ オメホー オメホ テメーホー テメイホー ◎集団 ・男 オトコシュー→かつては「下仕事をする男たち」をさしたが、現在は「男の人たち」の        意で用いられる ・女 オンナシュー→かつては「下仕事をする女たち」をさしたが、現在は「女の人たち」の        意で用いられる ・若い人 ワカテ→「若旦那」「二代目」といった意味でも使われるが、地区内の若い人たちをひ     とまとめにして、「ワカテ」と使う ◎人の生活状態、職業をさす ウリヤサ(行商人) オードコ、オダイドコ(資産家) オテコ(手伝いをする人、助手)  アトイリ(他郷からの移住者) アリマゴケ(他に男がいる未亡人) アリゴケ(夫がありながら、寡婦のような生活をしている婦人) シショーサマ(神官) ◎人の風貌、性格等から  インブリカキ(些細なことにもすぐ立腹し、不機嫌になる人)  オシャクシ(あごの出た人) ズクナシ(怠け者)  コスンボ、コスッタレ(ずるい人) ナキビソ、ナキミソ、ナキベソ、ナキメソ(よく泣く者、一般的には子ども)  ヤーシンボ(食い意地の汚い人)  ヨイダレ、ヨイタンボ(夜いつまでも眠くならない人)  →ヨイタンボは「酔っぱらい」をさす場合もある


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「信州下伊那郡方言集」所収方言について(私見)

 「信州下伊那郡方言集」所収のそれぞれの方言が現在、どの程度使われているのか、その実態を調査
する必要があると思われる。本書が編まれた昭和11年当時と、本稿を起こした平成8年では、ものごと
に対する価値観がまるで違う。社会的な背景はもちろん、文化的にもかなりの格差がある。  ことばは、ある意味では、その時々の社会的・文化的な背景が大いに反映されるものではなかろうか。 以下は、本書所収の方言について精査したわけではないが、私がどの程度意味などをわかっているか
について感じたことを記述したものである。なお、私は、言語学を勉強したわけでもなく、それこそ言
語学に関しては全くの素人である。したがって、以下の記述内容は専門家の目からみれば、稚拙なもの
である。今後、関係の皆様のより細かい検討が加えられることを望みたい。 【ノリ】【ホンタク】【チョーズバ】【モロ】【サシカケ】 以上は、本書でとりあげた意味で現在も使う。「チョーズバ」ということばは、よく母親の生家へこ
どもの頃遊びにいくとよく聞いたことばだ。今のこどもたちには全くわからないことばかもしれない。
「モロ」もどちらかというと今のこどもにはわからないことばだ。周囲に「モロ」のある家もみかけな
くなった。また、住宅が密集するようになって住宅地では、「ホンタク」ということばも死語になりつ
つある。 【オモテ】  住宅地では、いわゆる本書でいう「オモテ」はみかけなくなった。そういう意味では、本書で言う意
味とは違う使い方をする。天気のよい日にこどもが家の中で遊んでいると、「オモテへ行って遊んでこ
い」などという使い方をしている。 【ダイドコ】 いろりのある家も最近はみかけない。いわゆる「台所」を「ダイドコ」という言い方が一般的ではな
いだろうか。 【モヤ】【ウシ】【イッチョーラン】【イロモノ】【シロムク】【フダンギ】 以上は、現在も使われることばである。「ウシ」というのは、旧市内で育った自分は知らなかったこ
とばで昭和58年に遠山谷へ行ったときに「ウシ」の存在を知った。「イロモノ」は、「ガラモノ」とい
う言い方をするほうが多い。また、「シロムク」「フダンギ」ということばは、方言という感覚ではな
い。どちらかというと全国的に通ずることばのような感がある。 【ハンコ】【オベー】【タンタ】【ジョンジョ】【アッポ】  おとなが小さなこどもに対して「幼児語」として使う。「ジョンジョ」は「ゾンゾ」、「オベー」は
「ベー」、「ハンコ」を「ハンテン」などともいう。 【ウブイヒモ】【チャンチャンベー】  「ウブイヒモ」は「オブイヒモ」という。「チャンチャンベー」は「チャンチャンコ」といわないと
私にはわからない。 【ツギ】【ツギヲスル】  物が豊富になって「ツギ」をした衣類を着ている人(特にこども)をみかけなくなった。 【トチッコ】 私は「トチッコ」とは言わない。「トジンコ」という。 【シヲケノゴハン】【アカイマンマ】  「シヲケノゴハン」は、「アジゴハン」、「アカイマンマ」はそのものずばり「セキハン」という。
家が貧しかったこともあって、「シヲケノゴハン」や「アカイマンマ」はごちそうだった。炊きあがっ
たばかりの飯に「さばの水煮」の缶詰をほぐして加え、醤油で味付けしてよく食べた。これも「シヲケ
ノゴハン」と言った。 【ゴヘーモチ】  飯田下伊那の名物になって一般的なことばになっている。飯田では団子状に作るので「ダンゴゴヘー」
という。飯田より西、愛知県に近づくと「ダンゴゴヘー」はみかけない。板状になった「ゾーリゴヘ
ー」(あるいは「イタゴへー」)が一般的になる。 【オズンズ】【オツメリ】【デンガク】【オシー】【オシタヂ】【タマリ】【ショイノミ】【モリツケ】
【テンコモリ】【マルノミ】【ウンマヲスル】【カッコム】【ネブル】  昔も今もだいたいの意味においては、用例も同じである。「オズンズ」は、むしろ接頭辞「オ」がつい
た丁寧な言い回しで、「ズンズ」と済ますことが多い。「デンガク」は、馬鈴薯に限らず、蒟蒻の場合
も現在では、「デンガク」に該当する。「ショイノミ」は、旧市内の麹店に「醤油の実」(ショーユノ
ミ)と表記されているものと同じものなのか、麹店へ聞きに行こうと思っている。「テンコモリ」はわ
ざわざ、接頭辞「オ」をつけて「オテンコモリ」ということもある。 【ツキアゲ】  油揚げは、単に「アゲ」と言っている。 【イタツキ】【スッポコダイ】【オチャヅケ】  基本的には今も同じ用例。「オチャヅケ」は、本書の用例では冷や飯そのものを指すが、いわゆる
「お茶漬け」に変わろうとしている。失われようとしていることばのひとつである。「スッポコダイ」
という言い方は、現在の若い世代にはもうわからないのかもしれない。 【メンパ】   曲げ物の丸い弁当を指すが、遠山地方に赴任したときに知った。 【オシキセ】 最初、聞いたときは何の意味か全くわからなかったが、自分が毎晩飲酒をするようになって教えられ
たことばである。 【エゴイ】【コーバシー】【ムセッタイ】【ムセッポイ】  食べ物を口にしたときの食感を表したもの。「エゴイ」ものを食べれば「ムセッタイ」し、誰かが
「エゴイ」食べ物の話をしているのを聞くと「ムセッポイ」感覚になってしまう。逆に「コーバシー」
食べ物では「ムセッタイ」ことも「ムセッポイ」こともない。 【ズンドー】【ヒメクリ】【アッパ】【ヒゴ】【アッパスル】【シンゼル】 どれもよく使うことばである。「アッパ」は、こどもに対いて「アッパッパ」などとも使う。「シン
ゼル」という使い方は、「供える」という標準語に比べ、何となく、神仏に対し、親近感のある使い方
である。 【クム】【バクム】【ツクネル】【ノッケル】【ブルクル】【ユイツケル】  こどもに対して「バクム」「ブルケル」といってもわかってもらえない。だんだんと使われなくなっ
てきていることばである。 【シロ】【スイコンボ】【ノノヒル】【スガレ】【ベボー】【ゴトームシ】【アメノヨ】 「スガレ」(「ベボー」)も最近みかけなくなった。根羽村では、「ベボ」または「ヘボ」と言って
いた。「アメノヨ」は「アメノー」という言い方をした。 【ヒラ】【ホラ】  山あいの下伊那ゆえのことば、南信濃でも根羽でもよく聞いたことばである。 【バタ】【コロ】【ユヒツケル】【ユワエツケル】【ヨリアウ】【アラケル】【ウブウ】【エグル】
【エドル】【オショル】【オッタクル】【コギル】【ショッツカマエル】【タメル】【チギル】【ツメル】
【ビチャル】【ヒッサバク】【ヘズル】【マクル】【ユワエル】【オテコ【アサヅクリ】  現在も同じ意味で使う。「ウブウ」は「オブウ」とも「ショウ」とも言う。「ヘズル」「アサヅクリ」
などはだんだんと使う人がいなくなった。 【スズメオドシ】 収穫が近くなった田圃でよく「ドーン」という火薬の破裂音を聞いた。これを「スズメオドシ」と呼ん
でいた。「案山子」を指してはいなかった。   【コク】 「叩く」という意味では使っていない。 【マテー】【ワニル】 下伊那でこのことばを使うとは知らなかった。私の弟は中信へ養子に行ったが、養子先ではよく使うよ
うである。 【ズクナシ】【コズク】【オーズク】 あの人は「ズクナシ」だ、というような言い方でよく使う。「ズクガアル」「ズクガヨイ」もよく使う。
「コズク」ということばも使うが、「オーズク」は知らなかった。 【ブキ】【ブキッチョ】【ミヤマシー】 「ブキ」「ブキッチョ」は「ブサイク」という言い方をする。「ミヤマシー」ということばは仕事、
生活などいろいろな場面で使われる。具体的に解説を求められると説明が難しい。 【カドマ】【ワカサレ】【ミツカド】 標準語が浸透してきたこともあって、あまり使わなくなった。 【ケモナイ】 物事を頼まれたとき、それがずいぶんと簡単にこなせるものと判断したときなどに「そんなことは、
ケモナイ」などと使う。 【ミチツクリ】【イットー】 地域で共同作業をする機会も少なくなってきた。都会化がすすむにつれてこのようなことばが消えて
いく。「飯田」を意味するといわれる「ユイ」ということばも共同作業を示しているが、「ミチツクリ」
をはじめとする「ユイ」の意識が消えつつある。「イットー」が集まって氏神様のお祭りをする風習
も一部にしかみられなくなった。 【オカッサマ】【シタ】【アカ】【ヤヤ】【コゾー】【コビー】【コビッチョ】【アニーマ】【ネーマ】 家族、人を指すことばは昔も今も基本的には変わっていない。 【リョームライ】【ハシカケ】【カネツケオヤ】【ニザイリョー】 結婚関連のことば。結婚の形態が変わると失われていく可能性のあることばである。 【イロナヲシ】【サトガエリ】【ヨバイ】【ショージンオトシ】 一般的に使われており、方言とは言い難いのではないか。 【ウブイアケ】【タベゾメ】【ネグザリ】【ノチザン】 出産、赤ん坊に関連したことば。「タベゾメ」は「オクイゾメ」とも言う。 【ヤクヅケ】【ホンヤク】【ナノカ】【サブシミマイ】【アラボン】 葬礼に関することば。「ナノカ」は「ナヌカ」、「サブシミマイ」は「オサミシミマイ」、「アラボ
ン」は「シンボン」とも言う。 【オヤス】【ハガタメ】【スリゾメ】【フクナワ】【ミッカショーガツ】【ムイカドシ】【オソネビラ
キ】【ホンヤリ】【オンベ】 正月の行事等に関することばである。都会化、核家族化がすすむ中、失われつつあることばに加えて
おきたい。「オソネビラキ」は、「オソナエビラキ」と言うが、「カガミビラキ」(標準語)というこ
とばに変わってきている。 【キヲイ】【キヲッテイク】【キヲウ】 私が住む町では「キヲイ」の開始時間を示す「キヲイダシ」を「勢い出し」と書く。「競う」と書い
て「キヲウ」と読ませる地区もあると聞く。 【ヌレバタ】 旧市内では、雨に降られる祭礼全般を指すのではなく、「愛宕神社の秋祭り」がよく雨にたたられる
ことから愛宕の祭りそのものを指す。 【モンモ】【ノーノサマ】【ノンノサマ】【アリゴ】【アカチ】【アンマ】【ケンケ】【ハヂハヂ】
【アンバ】【オカシマ】【エント】【チャンコ】【メンメ】【メーメ】【アッパ】【ドベ】【ドンベ】
【アーンヲスル】【ウンマヲスル】【ハスイ】【ハスッコイ】【ババイ】【バッチー】 児童語、あるいはこどもの様子を指すことばは、あまり変わっていない。なかなか言うことを聞かな
いこどもに「モンモ(モーン)が出るぞ。」などと使う。私がこどもの頃は、「アバ」「アバナ」「ア
ンバ」「アバヨ」などと使ったが、最近のこどもは英語の影響で「バイバイ」「バーイ」と言い、お互
いに意味が通わないことばになってしまった。 【ボタユキ】【ナメ】【ヨーサ】 「ボタユキ」は、「ボタンユキ」とも言った。最近は、この手の雪は降らなくなった。 【アサッパチ】 「アサッパナ」「アサッパラ」という言い方をする。「…チ」という使い方は知らない。 【サワ】 「ヒラ」「ホラ」同様、山あいの下伊那らしいことばだが、ニュースなどを聞くと全国的に使われて
いると思われる。 【ヤマッカジ】 ヤマカガシという蛇のことであるが、「ヤマカジ」と促音を省略する例がある。 【アタマデッカチ】 所収の諺として「アタマデッカチシリシボミ」が載っているが、私たちは、「…シリスボミ」と言っ
て友だちなどを冷やかした。 【チンチクリン】【ノーテン】【フスベ】【ヒダリギッチョ】【ギッチョ】【クルミ】【サムサイボ】
【オタグリ】【シントー】【ナマタ】【ボッチ】【ランゴク】【シミッタレ】【ヤンカ】【コスイ】
【アイサ】【イレイチ】【ガータ】【グルラ】【オソッパグレ】【デ】【ハールカ】 私は現在も同義でよく使っているが、最近の子どもたちはどうだろうか。「グルラ」は「グーラ」と
も言う。久しぶりに人に会うと「ハールカブリ」という言い方をする。「デ」はよく使う。 【カワリバンテ】【セーナガ】【ハダカンボッチョ】【イビンチョ】【ウワッカ】【ギョーサン】【ゲン
ゲ】【チョーキュー】【ヘンチクリン】 「カワリバンコ」「セータカノッポ」「ハダカンボ」「イビツ」「ウワッカワ」「タント」(あるい
は「ターント」)「ゲー」「チョーキ」「ヘンテコリン」という言い方をしないと私には意味がわから
ない。 【ジーロ】【スマッコ】【イークラカゲン】 「ジーロ」は幼児語としては「ジージ」ということばを使っている。「スミッコ」「イーカラカゲン」
と若干異なる。 【マットー】【ベンコー】【インブリヲカク】【ヨイダレ】【オタリンサ】【ヒッケー】【オクセル】
【オクメンヲカク】【オドケル】【スンガケ】 年配の方が使うのを聞いて意味を確かめたことがある。仕事の帰りにどこかへ寄ってくると母からよ
く「スンガケ行ってきたのか」と聞かれ、最初は全く意味がわからず、何度も意味を確かめた。 【ショーガイイ】【ショーガワルイ】【ショーネナシ】【ショーワル】 「ショーガイイ」「ショーネナシ」は知らなかった。 【アゲル】【アラス】【イキレル】 「アゲル」は所収では「掛けられた謎が解けないで降参する」、「アラス」は「堕胎する」という意
味があるとされているが知らなかった。また「イキレル」も「威張る」という意味の使い方は知らない。
むしろ「エライキニナル」ということばを「威張る」という意味で使っている。 【オッカカル】【カシコマル】【ガナル】【キブル】【クルウ】【グザル】【ダマクラカス】【ダマカ
ス】【ドヤス】【ドザエル】【ツブル】【デングリガエル】【ネソベル】【カシグ】【コケル】【チビ
ル】【ヒル】 今でもよく使う。「オカシマヲサセル」とは、正座をさせるときに使う。疲れ切って椅子の背もたれ
に「寄りかかっている」姿を「椅子にオッカカッテ…」と表現すると本当に疲れていると思ってしまう。
ことばの不思議さ、神秘さを感ずる。「ヒル」は中信地方の出身者が「マウ」と使っていたことを思
い出した。 【ゴーガワク】【ゴークソガワク】【ゴーニヤス】【ゴーワカス】 「ゴークソガワク」「ゴーニヤス」「ゴータレガワク」「ゴーサレガワク」は知らないが、無性に腹
が立って仕方ない状態が「ゴーニヤス」という意味か。また、立腹した相手に対して「ゴークソガワク」
「ゴータレガワク」「ゴーサレガワク」となるのだろうか。「業腹」(ゴウハラ)ということばがあ
り、意味は立腹するということ。「ゴーガワク」などの「ゴー」は「業」(ゴウ)のことか。 【ツクバル】【ツクナル】 「うずくまる(蹲る)」という意味では「ツクナル」が一般的ではないか。「ツクナル」の第二の意
味として、「処理されるべきものが放置されて…」とあるが、「ツクネル」「ツクネテオク」などとい
った表現を耳にする。 【フクタマル】 風船などをふくらまそうとする行為を「フクタメル」と使う。 【タルイ】【タルクサイ】【トロイ】【トロクサイ】【アツケッタイ】【ウルサッタイ】【エライ】
【オッカナイ】【オモシイ】【マルイ】【ギスイ】【ギャラシイ】【クスバッコイ】【ダダクサモナイ】
【ナルイ】【ニスイ】【ヌクトイ】【ババイ】【ヨーデモナイ】【ハゲシイ】【ヘトモナイ】【ムシ
ガイイ】【ヤラシイ】【チビクサイ】【ヒドロッコイ】【ビショッタイ】 形容詞雑載に集められたことばは、今でも使われていることばが多い。「クスバッコイ」は、「コソ
バッコイ」、「ヘトモナイ」は「ヘデモナイ」という表現もある。「ヒドロッコイ」「ヨーデモナイ」
「ギャラシイ」などはだんだんと使う人が減ってきているように思う。私の子どもは、意味がわからな
かった。 【ワリカト】 「ワリカタ」「ワリカシ」という表現をする。 【シゲシゲ】【モロニ】【ズダイ】【ズデー】【ホイ】【ヤイ】【ヂャン】【ナム】【ナッコ】【ナシ】
【ナンショ】【デ】【ドッチミチ】【ドーユー】【ナンチュー】【ナンタラ】【ドーセナラ】【シナ】 形容詞雑載同様、副詞その他に集められたことばもその大半は今でも理解できることばが多い。「ナ
ム」は年輩者がよく使うが、いわゆる若い人は使わなくなった。同様なことばに「シナ」「ズデー」
「ズダイ」も含まれようとしている。  以上、本書の所収順を追って、私見を思いつくままに記してきたが、現在、自分たちが使っているこ
とばで、いわゆる方言ではないかと思い当たるもので、本書に登載されていないものがあることに気づ
いた。本書の編集後記でいう編者の「私の仕事はこれからである。」部分に該当するものなのか、登載
漏れなのか判断はできないが、それらを以下に記し、本書の補遺としたい。なお、本書の内容をさらに
吟味するならば、いわゆる登載漏れと思われるものが今後も生ずる可能性があると思われる。  アカル     開ける。 空にする。 アンジ(ズ)ル 心配する。 イノク 動く。何かを動かすときには、「イノカス」と言う。 インネ いいえ ウケトリ 領収書 ウラ 後ろのこと。「裏」ではない。授業中などによく「ウラへ立っていろ」と叱られ て、教室の後ろの壁の前に立たされた。   オイーニ 「結構ですよ」と言うときに使う。 カウ 掛ける。鍵を掛けると言わず「鍵をカウ」と言う。 コシラエル 作る。 サブイ 寒い。 〜サラ 〜ごと。「皮サラ食べる」とは、「皮ごと食べる」ということである。 シマウ 片づける。 ショウ 背負う。 スキ 隙間 〜(ダ)ニ 「〜(だ)よ。」と言うときに使う。 〜ダモンデ 「〜だから」と言うときに使う。 ツル 運ぶ。下伊那以外の地域で学校の掃除の際「机をツル」と使った先生にこどもが 「先生、どうやって机を吊るのですか」と聞いたそうである。 テンデ それぞれ、おのおの。それぞれが好き勝手なことをやっていると「テンデバラバ ラ」と表現する。 トコ、バ 所、場所。「コンナトコ」「コンナバ」と言うと「こんなところ」という意味。 トブ 「飛ぶ」ことではない。「走る」ことを意味する。運動会の「かけっこ」のこと を「トビックラ」と言った。「トビ比べ」が変化したものか。 ナキナキ メソメソと同じ意味。中信地方では「メソメソ」を「ナキナキ」と言うことを知 り、調べたところ、下伊那でもある程度の年配の方が使うことが分かった。 ネーチン、ネーユ 熱湯 ネヤネヤ 込み入っている状態を表す。 ハネクル 跳ねる。飛び回る。寝ていて寝相の悪い様を言う。 ユスグ 漱ぐ。                                       (平成8年12月記)



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