「信州下伊那郡方言集」の全文公開について
この本は、1936(昭和11)年8月に編者の手により、謄写印刷されたものである。
編者が他界して以来、長い間、その存在がわからず、「本当に刊行されたか否かもわからない」と言われた「刊行物」であった。
それが、編者とゆかりのあった伊那市在住の福沢武一先生のご尽力によりその存在が確認され、1990(平成2)年2月に発見された原本をコピーすることができた。
本書は、全11章にわたって、編者が長年収集してきた「方言」を登載している。
その内容については、すでに使われていないもの、方言とは言い難いもの、俗語・卑語の類で差別的な意味合いをもつものなども登載されており、今後の精査によって、今の時代に生きる「方言集」に高めていく必要があると思われる。
私自身も、ここ数年の間、この所収方言についての精査をはじめてみたものの、あまりの数の所収数と、その3分の1程度しか認識していない自身の能力とのギャップに阻まれて、「現代版下伊那方言集」に高めるべく作業がいっこうに進展していない。
現在、飯田下伊那地区の日中友好協会青年委員会の手により、中国からの帰国者の便宜を図るべく、「飯田下伊那方言 中国語対訳集」(仮称)の編集作業が鋭意進められている。その作業の底本には、本書「信州下伊那郡方言集」と1953(昭和28)年に下伊那教育会がまとめた「下伊那郡方言集 中間報告」から発展させた「飯田下伊那の方言」(1997(平成9)年刊行)が使われており、「現代版下伊那方言集」のベース作りへの大いなる寄与が期待できると思われる。ただし、この編集作業においては、中国からの帰国者の皆さんの便宜を図ることをその主目的においているために、さまざまな異称を伴う動植物の名称やすでに廃れつつある「養蚕」(かつては当地方の主力産業であった。)に伴うことば、使用頻度が低いと考えられるもの、地域性が顕著で普遍的ではないものなどは除外する方針で作業が行われており、この作業結果をそのまま「現代版下伊那方言集」とするには、底本となった「方言集」の編者の努力に報いることにはならない。
私自身は、「現代版下伊那方言集」を早急に編む必要性を感じつつも、自身の能力だけでは、到底及ばないことから、現在進められている「対訳集」編集の進捗を待ちながらも、Web上へ公開することで、多くの識者・研究者の方々からのご教示やご指導を仰ぐことが可能ではないかと考え、「信州下伊那郡方言集」所収言語をデータベースにまとめさせていただいた。
なお、本書は全11章から成り立っており、それぞれの章の表題は以下のとおりとなっている。
それぞれの章をクリックすることで、各章にどのようなことばを取り上げているかを知ることができるが、各章のことばの掲載順は、原本の順序にしたがって列べているために、検索があまり容易ではないことを予めお断りしておく。(1999.1.8泥鰌記す)