呉智英『現代人の論語』

 論語とは2500 年前の世界最初の思想家:孔子とその弟子たちとの間で交わされた対話録をその死後、弟子たちがまとめて編纂したもので、秩序を重んじる現実主義、人生訓と してビジネスマン向けの本として膨大な本が出版されています。で、本書はといえばタイトル から想像される「現代に生きる論語=人生訓」と思いがちですが、著者はそんな論語理解は間違いだ、いやそもそも論語は読まれてさえいないのだ!と世の論語 理解に挑戦状を突きつけます。巷で言われている論語は孔子の時代の「原儒教」ではなく、その後の時代の「経学儒教」によって骨抜きにされたものを土台にし ているに過ぎないんだ。といい、体制変革のよりどころとなる孔子、感情的になり敵意をむき出しにする孔 子、博打を勧める孔子・・・聖人君子然として封建的秩序の守護者と解釈される孔子とはかけ離れた人間像を歴史学、民俗学、宗教学などを駆使して描き出す異 色の、そして読んでいて飽きない孔子像を描き出します。この本は論語の入門書ではなく、論語の世界へと読者を誘う、論語の世界を魅力的に紹介する本と言っ て良いでしょう。論語など今まで読んだことはありませんが、それでも「悩み、考え、学び、闘う」人間:孔子の姿は「論語」知らずの僕にも魅力的に映り、面 白く読めました。著者は現在でも私塾である以費塾で 塾生を相手に「論語の講義」をしています。ちなみに“突破者”宮崎学氏(同姓同名の動物写真家とは別人)によれば、呉智英(くれ・ともふさ)はペンネーム で本名は新崎智。学生時代は現在と違い、長髪でなかなかの美男子だったそうで、頭髪が薄くなり、糖尿病に悩む現在はその面影は全く感じられません。 (2004. 3.22)。

文藝春秋1100円 +税、2003,11)