Lazy Line-Painter Jane

線引きジェーンは祈っていた。
この退屈な木曜のお昼から誰か私を救ってください!
そう、ジェーンはとても退屈していた。
その時彼女は、つまらないラジオのかかる古びたカフェで
エッグ&チップスをつまみながらガラス越しにバスを見ていた。
カフェの表向きで祈るのは恥ずかしかったのから
ティーカップの底で運勢を占うふりをしていたんだけど。
彼女はいつもそんな感じで事をやり過ごしていた。

幸運にも、その思いつきはすぐに浮かんできた。
彼女の抱える厄介ごとを考えると、
今までは気分が良くなるなんて不可能だったけど。
その思いつきを行動に移すのはちょっと面倒だった。
午後のまどろみに、もう少し身をゆだねていたかった。

ジェーンは、周りの皆がするように
‘週末前日の木曜日’を計画した事がなかった。
というか、週末なんてものも彼女は楽しみにしていなかったんだ。
週末のただ1つの利点と言えば、
次の週を運んできてくれるってことだけ。
ジェーンは平日、奴隷のように働いていた。
どこにも雇われてはいなかったんだけど。

彼女は自分が木曜日を祝うに値するなんて疑わしく思っていた。
生理中はしょっちゅう大声を出し、周りに当り散らしてもいたから。
渡されたバトンを引き継いで走るなんて、罪に値するとも思ってた。
でも彼女は遂に走ったよ!
大聖堂の墓場を目指して、そして墓場を走り抜け、
壁をよじ登り、街のイーストエンドまでやってきた。

走って、走って、彼女の思いつきは
風船の中の空気のように頭の中を満たしていった。
いまや彼女は靴のかかとを踏んではいない!
ジェーンの企みは明白だった。
今の無気力さ、無職の自分の弱さを忘れるために
ジェーンは走った。走って走って、走ったんだ。
頭の中の厄介ごとから開放されて、今や彼女の肌は半透明さ。
もっと早く、もっと早く。
芝生や石の構内を抜け、道路の線を踏み越えると
静かな通りにやってきた。
そこで聴こえるのは彼女の息使いと足音だけ。
最近の厄介ごと、から開放されて。
彼女の罪、それは怠け者だということ。

街を走り抜ける間、ジェーンは
インディーロックビデオに出ているふりをしていた。
彼女は自分自身に惚れこんでいた。
これからぶつかる障害物なんて気にも留めないで。
そして、川にたどり着くとようやく走るのを辞めた。


川はとっても素敵だった。
不毛の地での思いがけない自然。
ジェーンは酸素がただ頭に空気を送り込むものじゃなかったらどうしようと思った。
だって、まるでドラッグのような効き目だったから。
そばには小道があって、街に黙認されている汚れた空気が
蜃気楼になって踊っていた。
ジェーンは後を追いかけた。
跨道橋の下をくぐり、旅行者のキャラバンを越して、
ハンノキと灰の曲り角を走り抜け、走って、走って・・・
そしてバス置き場で力尽きると、雨が降ってきた。
ロックビデオ娘はおなかが空いていた。

ジェーンはしばらくの間、そこで雨宿りをしていた。
たしか、もう街の中心通りに来ていたはずなのに、そんな感じはしなかった。
この街には、若者達が素朴な雰囲気を弄び、
まるであざけ笑っているような雰囲気があった。
すると、馬鹿みたいなシェリー野郎たちが入ってきた。
彼らはジェーンに直接接しなかったが、自分達を誇示してきた。
意地悪をされなくてほっとしたけど、ジェーンの思いつきはちょっとひしゃげた。
彼らとどう接してよいか、全く解らなかったから。

そして奴らは出て行った。
街のもっと可愛い子を探しに。
1人残った男は合法タバコを吸いながらうろうろしていた。
彼がバスを待っているのか、雨がやんで出て行こうとしているのか、解らなかったけど、
ジェーンは彼の靴と濡れた道路が創る音が好きだった。
小さな街が許した最も大きな音。
それだけでジェーンは感嘆していたんだ。
男は腰掛けると、ブーツをじっと見つめながら
熱に浮かされたようにおでこをこすった。
まるでジェーンに好意を示すような感じだった。
でも彼は、タバコ1本分の時間だけ休むと、行ってしまった。
ジェーンを1人残して。

夜になる前には帰るのを知ってるジェーンは、平和に酔いしれた。
でも街は、彼女の興味を引こうと一斉に競い出す。
そう、まだ6時頃と思っていたら、もう9時近かったのだ。
ジェーンは膝を折り曲げて胸につけた。
ジョギングパンツは花粉の香りがした。
街に帰るバスを待つ間、彼女は考えた。
私の名前はどうやってつけられたのか?
そして解ったところでどうしようというのか、って
ね。
3つのサマーシングルのひとつ。
LazyJaneはいっつも1人でいつか
ここから抜け出せると思ってる女の子。
上のジャケみたいな少しボーイッシュで。
ジェーンはあなた。そして
ジェーンは私。
走って走って、ひたすら走ってみて!
何か変わるかもしれない。
何か新しいことが起きるかもしれない。