***Belle&Sebastianと私***
私が初めて彼らの音源に触れたのはLondonに居た98年の終りだった。
‘今年のBrit
Awardを獲った新人バンド’なんて紹介されてた。
Tower
Recordsの試聴機に入っていた緑色のジャケットのCD。
‘ぐえー。男の子に棒が刺さってる。気持ち悪い’なんて思いながら聴いた。
いきなり始まるアコギと弱々しい声。地味だなあ。
地味だけど何だか惹かれて、私はそれを手にしていた。
それからしばらく経って、例のBowlieの話題が出た。
主催はBelle&Sebastianらしい。あのCDの彼らだ。
チケットをゲットした私は初めて彼らの曲を真剣に聴いてみた。
聴いてすぐにパッと好きになれるような簡単なバンドじゃあなかった。
だけども聴いて行く度に良さがわかってくる感じ。
1曲2曲、聴いて行くと広がってくる彼らの世界。弱々しい声。
この新鮮さは一体何なんだろう?
そして体験した彼らのライブ。Bowlie
Weekenderでその何かが解った。
暗いステージ、恥ずかしがりなメンバー達、沢山の楽器、
巷に溢れてる使い捨ての曲達とは違う、大切に大切に奏でられて行く音達。
そして何より、観客の皆の惜しみないリスペクトと笑顔。
このバンドとファンとの間には、とても親密な関係があるんだ!
そういう私もこんなに平和で楽しいライブは初めて経験した。
そうだ!彼らの新鮮さは、このファンへの優しさだったんだ!
彼らの優しさを体験した私は、それからある男の子に出会う。
我が家のBBQパーティーで偶然に出会ったIndie
Kidsの男の子。
彼との出会いは私の音楽人生をかなり変えたと思う。
Londonに住むスパニッシュで、カヒミカリィを知っていたのは彼だけだった。
前から小山田君好きだった私は、かなり嬉しくてすぐに友達になった。
それからというもの、事あるごとに一緒に行動していた私達は
いつしか恋に落ちたりなんてしていた。
ライブやクラブ、私は彼の影響でIndiepopsにのめりこんで行った。
そしてそこにはいつも、Belle&Sebastianの曲達と、
彼らがまとっている優しさが満ち溢れていた。
帰国した私は、しばらく余韻にひたりながら彼らの音源を全て揃えた。
そして彼らの新しい魅力に取り付かれた。歌詞だ!
辛辣なのに優しい。まるで文学を読んでいるような気持ちにさせる。
‘君は使いまわされて、混乱してて、でも君は世界のてっぺんに居るんだよ!’
‘今夜こそ誰かに出会える!今夜最終のバスで街を出よう!’
‘川辺りで夏の無駄使い7週間。でももしこれが無駄使いなら、
どうしてこんなに自由を感じるの?’
私は彼らのNaivetyが解る人間であって良かった。
Bowlieから早2年。
新譜を出すが、全くライブ活動はしていない彼ら。
私は待てなくなって遂にGlasgowに彼らを訪ねて行った。
曲達と同じに優しさあふれるMr.Stuart
Murdochに会えた!
夢のような時間を過ごして日本に帰ると、Jeepsterから大ニュース。
遂に彼らがツアーを始めるようだ!
そして私はまた夢を見る。
今度はB&STシャツを着た私が日本で彼らと共に歌っている。
そんなのが現実になる事を願って、もう書くのをやめようと思う。
2001年5月