コロンバインの男の子 #2



アメリカのコロラド州コロンバインに、とてもかっこいい男の子がいる。
名前は、ブルックス・ブラウン。



コロンバインの事件の裏にあった全てを、私はこの本で知った。
そして、なんだか私にも身に覚えがあるような気がして、
ひとごとではない気がして、すっごく動揺したんだ。



ブルックス・ブラウンは、乱射事件の犯人、エリックとディランの親しい友人だった。
ディランとは小学生の頃から。 2人はクラスメイトで、共に学んで共に遊んで、。
親同士も親友で、家に遊びに行ってはビデオゲームばかりしてた。
エリックとはコロンバイン高校に入学してから知り合った。
ディランほどフレンドリーではなかったけど、3人は一緒にスポーツ観戦に行ったりしてた。

コロンバイン高校では、スポーツ選手がやたらと優遇されていて、先生たちもお気に入り。
でも、ブルックスやディラン、エリックたちは、ひ弱で文化部に所属するような仲間、
コンピューターもいじっていたので、暗い、のけ者みたく扱われてた。
そんな彼らを‘おかま’とか‘オタク’なんて呼びながら、スポーツ馬鹿(ジョックス)たちは
いつも馬鹿にして、いじめていたんだ。
ある時はトレイを叩き落され、食べ物を投げつけられ、
ある時はロッカーに閉じ込められ、ある時は机に押し倒され、
そして誰も見ていない着替え室ではよく殴られもした。
先生に訴えると、彼らは、どちらが先に手を上げたかにも関わらず、
必ず全員を処罰した。 ここで3人は大人を信じられなくなった。



ああ、ひどい。 私はここでもう息苦しくなってきた。
私は小学生や中学生の頃、男の子がいじめられたりケンカしたりしているところを
見るだけで胸がぎゅーっと苦しくなって涙ぐんじゃうような、ひ弱だったから。
男の子っていうのは、生まれながらにとても重いものを背負ってきてると思う。
女の子はつるんで恋のおしゃべりすれば解決しちゃうけど、
男の子って、なんか孤独な気がする。
先生に対する嫌悪感もわかる。
中学時代の私の担任は、むっつりしててキレると怖くて、
ある日朝学校に行くと、机の上に机の中身が全て出してある・・みたいなことも平気でした。
私は彼と泣きながら口論をした。私の正当性や子供たちのプライバシーを叫んだ。
でもそれは結局のところ、私の心にモヤモヤを残しただけだったけど。



進級して、ブルックスはディベートや演劇に目覚め、憂さを晴らして活動的になっていくが、
エリックは、その憂さ晴らしをビデオゲームとパソコンで晴らし、
ラムシュタインやKMFDMという過激なバンドにのめりこんでいく。
そして、小さい頃から仲良しだったディランも、エリックについていった。
2人は同じピザ屋でバイトし始めて、ブルックスとは少し距離を置くようになった。

エリックとディランは次第に黒い服ばかりを着るようになり、
パソコンにもっとのめり込み、自らのホームページで自分たちの存在を証明。
だってそこにしか彼らの居場所は無かったから。
インターネットでパイプ爆弾の作り方を見つけ、実行。
なんだかエリックの言動は凶暴に、凶暴になっていく。
その頃エリックはブルックスとトラブルを起こす。
そして彼はそれに根を持ち、自分のホームページにブルックスを脅迫する内容の文章を書いてしまう。

‘おれの信念は、おれが何かを言うと作動する。
おれが法律で、お前がそれを無視しようものなら、お前は死ぬ。(中略)
おれがやりたいのは、できるだけ多くのお前らみたいな嫌なやつらを傷つけ、殺すこと。
ブルックス・ブラウンみたいなやつらをな。’



・・・・・・・・。やばい。 
私は震え始める。 こんなこと、ホームページで書いちゃうの?!
そんなに全てを憎んじゃうんだろう?!
でも、わかる。ティーンエイジャーの社会は学校だけ。
私も中学のときに学校に行きたくなくてよく仮病を使ってた。
彼がたまたま少し凶暴性を持っていただけで、これは誰にでも起こり得る自分の存在証明。
彼を否定するもの全てを憎まなければ生きてはいけなかったのかもしれない。



そこでブルックスは警察に通報する。 
エリックは切れやすく、本当に何かを起こしてもおかしくなかったから。
しかし、警察は動かなかった。
ブルックスは理解のある素晴らしい両親と弟に恵まれていたため、
彼らと共に、恐怖や苛立ちを乗り越えていく。


そんな日が続いて更に進級した彼らは、高校の最終学期になった。
そして嬉しいハプニングが起こった。ブルックスが、エリックと仲直りをしたのだ。
全ての昔のことは水に流そう、また皆で笑いあおうぜ!
それまで色々あったけれど、3人ももうすぐ卒業、相変わらず2人は黒い服と
KMFDMの帽子をかぶっていたけど、皆それぞれ、卒業後の進路を決め始めた。
あんなにひどい事を書いたエリックと再び仲良しになったなんて、誰もが信じられなかった。 
でもブルックスは再びエリックやディランと笑う日常に戻った。
エリックもディランもなんだか明るく、外交的に変わった気もした。


それから数ヵ月後の4月19日、
僕はベッカと‘4時間目サボってマックでお昼食べるけど行く?’
とエリックとディランを誘った。 ‘いいよ’ とエリックは言った。
僕らは卒業直前の高校生で、目前に迫っているものを見ていた。
ディランは大学へ、エリックは海兵隊へ。
僕らはこの学校から出て行く準備ができていた。
人生を、前を向いて進む準備ができていたんだ。
(本文より抜粋)



素晴らしく晴れた4月の20日、
エリックとディランが大事なテストをサボった。ブルックスはおかしいな?と思った。
次の授業も2人はサボっていた。 まあ、寝坊か?!
ブルックスは授業が終わっていつものようにタバコを吸いに外へ出た。
そこへエリックとディランが車でやってきた。
なんだか大きなボストンバッグを取り出し、エリックはブルックスにこう言った。

‘ブルックス、お前のことは嫌いじゃない。 ここから離れろ。 家に帰るんだ。’

ブルックスは、どうせ午後の授業はサボろうと思っていたし、
何か鬼気迫るものを感じ、家へ帰ることにした。


その後、エリックとディランは学校のカフェテリアで銃を乱射、
何人もの人間を撃ち殺し、爆弾を爆破させ、図書館で自らの頭に銃弾を打ち込んだ。




・・・・・・・・・・・・・・。
言葉が出ない。




つづく・・・



Jan '05