スロット

 三年ほど前、私は憧れのスロットマシーンに初めて手を触れる事が出来た。友達に、是非
教えてもらいたくなったスロット。パチンコ屋さんの一角に置かれ、遠目に見ていた私。
 スロットはパチンコが右手のハンドルひとつで操作できるのと違い左手でコインを入れ、右
手で三つのボタンを順に押す。それもめちゃくちゃに押していたのでは揃うはずのものも揃わ
ない。高速回転中の絵柄を3リールその場所で止めるなど、どう考えても私に出来るはずが
ないと決めていた。
 パチンコの仲間たちにある時スロットに触れさせてもらう機会を得た。その時コインの入れ
方とボタンの押し方を覚えることもままならない私は、たまたま当たって揃えてもらって出てき
たコインを次々消化することさえ苦痛であった。いつになったらコイン無くなるかな?早くなくな
って欲しい・・・。それが、スロットへの第一歩であった。

 その後も一人でスロットのコーナーに座る勇気はしばらくもてなかった。スロット好きの娘婿
に頼んで連れて行ってもらったり、友人の何から何までの指導でどうにか一人で打てるように
なるのに半年以上の月日を要した気がする。

 それなりに勉強しないと打てないスロットの挑戦する私に 「ボケ防止に最高だね。どんどん
やるといいよ。」 とちゃかす家人。本を見て勉強。実践で勉強。

 そして今は、どんな台でもそれなりに打てるようになった。スロットはパチンコと違い機種に
よって打ち方や狙い目(?)が違う。解らずに打っていると、1度の当たりで2000円ほど損す
る事がある。初めの頃は勉強のつもりで3リール全てを凝視しながら打っていたため、老眼
の目はどんどん悪くなり、それもまた、なんだか面白がっている自分がいた。

 今でもうまい人たちの半分くらいの実力しかないが、新しい機種に挑戦するときも、小さな
説明書でわかった振りをしてみんなの中に混じっている。
 以前当たっても、揃えられずに店員さんに揃えてもらっていたが、今ではおじさんやお兄ち
ゃんに 「揃えてもらえる?」 なんて言われるまでになってしまった。 もちろん、そんなことを
私に頼むお兄ちゃんは少しとろい人だとはおもいますが・・。

 さて、パチンコとスロットの大きな違いは、パチンコは玉さえ豊富に用意してあれば一部の
機種を除けばただ打っていれば玉は増える。と同時にどんどん玉が減ってゆく。ところが、ス
ロットは当たりを引いても図柄を揃えなくてはコインが増えないし、当たりを引いてもボタンで
3リールを押さなければコインは増えない。当然回ったリールをとめずにそのまま見ているこ
とも出来る。
 長年のパチンコ屋での知り合いのおばさんが言った。「パチンコは右手でハンドル持ったら
最後、玉がどんどん消えてゆく。スロットは自分ゆっくりやればコイン減らないね。」 簡単に
言うとそのとおりである。でもスロット好きで、わざわざゆっくり打つ人はそんなにはいない。み
んな何故か早く早くあわてるように打っている。時間効率という言葉があって、確かに良い台
で短時間に出そうと思えば早く打つしかないが、私などいつもゆっくり。そんなにいい台に遭
遇することはあまりないし、少しでも長く楽しもうと思うから、出ても出なくてもペースが遅い。

 スロットは1時間で何も揃わなければ18000円使うという。それ程過激な遊びである。その
代わりうまくゆくと2時間で150000くらいになる。(もっとすごいのもあるかと思う)
 1日中遊ぶ私にとっては、2〜30000の予算で2〜30000の勝ちが理想的。大きな勝ち
は嬉しいが、やはり少し恐い。必ずしっぺ返しがあるから・・・。パチンコを始めた頃は300円
で3000円の勝ちが理想だったがずいぶん変わってしまったものだ。

 12時間ホールにいたことも以前はあったが、最近は目とお金が続かない。夕方帰ると 「ど
うしたの?こんなに早く。」 と心配する家人に今のスロの状況を何度か説明しわかってもらう
までに数ヶ月かかった。今ではどんなにやっても10時間足らず。

 お金を使うスロットでも、まあどうにかうまく付き合っているが、最近やはりゆっくり遊べる羽
根物(パチンコ)も並行して楽しんでいる。そんな私が危機を感じた事が20数年間で数度。ホ
ールに行ってもどんなに席が空いてても 「私の座るところがない・・」 と感じたこと。あの不
思議な感覚はなんとも説明が出来ない。あの感覚をたびたび感じたら辞めるときだと思う。

 パチンコもスロットも遊びだと割り切っているので勝とうと思わないでやるのが今まであまり
負けずに楽しんでこられた原因だと思う。

 今日、染物の最中、どう考えても私のお客さんにはならないふうの男性が店にいらした。建
物にばかり関心を示すのでお答えしながらも早く帰ってくれないかと思っていたら、「どっかで
みたことあるなー。」 とその人。 「パチンコやる?」 と、すかさず私。
 それからパチンコ話に花が咲いたが、「性格上あつくなって、出ると、止められない。よほど
出ない限りなくなるまでやっちゃうんで・・。」 そういう人は必ずといっていいほど負けるタイプ
だと思う。 私は 「あんたはまめだ。」 とおばさんたちに感心されるほど、一日のうちでも手
を変え品を変え店を変え長時間遊んでいる。もちろんできることなら昔のように同じ台で1日
中遊びたいけれど今ではそれがかなり難しい。これも時代の流れならばそれなりについてい
かないと・・・・。常連が次々姿を消してゆくが私はいつまで続くかしら?

                       (2004.4.16記)



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