行政対象暴力とは

行政対象暴力の形態

権限行使要求型

 暴力団関係企業を公共工事の下請業者とするために、元請業者に対する行政機関の指導監督権限を不当に行使させようとするなど、行政機関の有する許認可、指導監督、公金支給等の権限を自己または第三者の有利となるように行使することを要求するものです。

事例 【下請参入を目的とした行政指導の要求】

 会社ゴロらは、市発注の公共工事の元請け企業に押し掛け、対応した部長らに対し、団体の名刺を渡し、「おまえじゃ話にならん。社長を出せ。お前のところは、地元をどう考えとるんや。」などと怒号し、さらに、工事発注元である市担当課長に電話をかけ、「あんたの首ぐらいいつでも切ってやる。地元企業を育成できないようなところへ仕事を回すとは役所として問題がある。」などと脅迫し、下請けに参入するための行政指導を要求した。

例えば要求に応じなかった場合  会話を録音し、暴追センター等に相談。適切な対応をした結果、相手は強要未遂罪で逮捕された。
例えば要求に応じてしまった場合  課長は誰にも相談出来ず困った末、元請け企業を下請するように指導してしまった。その結果、課長はそれをネタに暴力団から金を要求される。そして、現場では不当介入してきた暴力団が傷害事件を起こし、このことが発覚し社会問題となる・・・ 。

金品要求型

 機関誌の購読、物品の購入等名目の如何を問わず、行政機関またはその職員に金品の提供を要求するもの。

事例 【郵便局に因縁をつけて金銭を要求】

 暴力団組員は、郵便局が自己宛の郵便物を受取人不在と取り扱ったことを捉えて、同郵便局営業課長に対し、「俺は組の者だ。今回の件で手数料50万円が入らず、郵便局のせいで損をした。損害賠償しろ。郵便局で払えないのなら個人的に半分出せ。」などと告げ、損害賠償名目で金品を要求した。

例えば要求に応じなかった場合  ただちに暴追センター等に相談。相手は暴力団対策法に基づく中止命令を受けた。
例えば要求に応じてしまった場合  課長は郵便局では支払に応ずることができないため自己負担した。その後暴力団員は何かと課長のところに来ては無理難題を要求するため精神的に疲れてしまう・・・ 。

行政対象暴力の背景

 暴力団等の資金獲得活動は、暴力対策法による規制の強化やバブル崩壊後の経済不況等により困難化してきました。
 このため暴力団等は、新たな資金源の拡大を求め、表社会の事業活動に積極的に進出するようになり、その過程で行政機関に対して、違法または不当な手段により、事業等に参入するための許認可や公共工事等の受注を求めたり、補助金等の交付や機関誌等の購読を要求する動きを強めてきました。

行政対象暴力の背景


行政対象暴力対策の推進

 行政対象暴力を適切に排除するため、行政機関の内部に、組織的に行政対象暴力に対処するための仕組みが整備される一方で、関係機関との連携による未然防止や排除のためのシステム作りが進められています。



1.不当要求の防止に関する要綱等の整備と対策委員会等の設置

 行政対象暴力を排除するため、コンプライアンス条例や不当要求防止対策要綱等が整備されるとともに、不当要求防止対策委員会等の不当要求の処理等に関する組織の設置が進められています。

不当要求の防止に関する要綱等の整備と対策委員会等の設置


2.連絡窓口の設置

 行政対象暴力を未然に防止し、またこれに迅速・的確に対応するため、警察、暴追センターとの連絡窓口が設定されています。


3.不当要求防止責任者の選任

 暴力団対策法に基づ各事業所で選任された不当要求防止責任者に対して、暴追センターでは暴力団等からの不当要求による被害を防止ための責任者講習を行っています。

 

反社会的勢力に対する対応要領
15の原則

問題解決は毅然とした対応と早期相談
 ほとんどの人が、自分は暴力団員等反社会的勢力には関わりがないと思つておられますが、反社会的勢力が世の中に存在する以上、いつ、どこで、何が発端で関わりができるかわかりません。
 住民の皆さんや企業等が、反社会的勢力からの不当要求を受けた場合の対応要領を15項目に整理しました。
 大切なことは、反社会的勢力からアプローチを受けた場合は、一人(一企業)で悩まず、警察、暴追センターや弁護士に早い段階で相談することです。
 Ⅰ 基本的な心構え   
 01 全て組織で対応恐れず、勇気を持って毅然とした対応  02 信念と気迫を持って不当要求には屈しないという対応  03 挑発にのらない冷静な対応
 
 
   
 反社会的勢力は、刑務所へ入る危険を十分認識しながら、資金獲得のために訪れています。必要以上に恐れる必要はありません。毅然とした態度で対応してください。  反社会的勢力は、強い者には弱く、弱い者には限りなく迫ってきます。決して弱みを見せないことです。   反社会的勢力は、挑発してこちらの失言を誘つたり、言葉尻をとらえて徹底的に糾弾し、無理難題を押し付けてくる脅しのプロです。挑発にのらず、冷静に対応してください。 
  Ⅱ 具体的な対応要領   
 1 来訪者のチェックと連絡   2 相手の確認と用件の確認 3 対応場所の選定 
     
  受付係員又は窓口係員は、来訪者に「名刺をいただけますか。」と名刺をもらうか、「皆様に記入していただいております。」と面会簿に氏名等を記載してもらうなど、相手の人数等を把握して、対応責任者に報告し、あらかじめ選定した応接室等に案内する。   落ち着いて、相手の住所、氏名、所属団体名、電話番号等を聞き、用件を確認する。代理人の場合は、委任状の確認を忘れないようにする。   素早く助けを求めることができ、精神的に余裕をもって対応できる場所(自社の応接室)等の管理権の及ぶ場所で対応する。暴力団事務所等には絶対に出向かない。
 4 複数人での対応  5 対応時間の告知   6 言動に注意
     
  関係者以外は同席させず、人数を制限する。相手より優位に立つための手段として、常に相手より多い人数で対応する。また、あらかじめ役割分担を決めておくことも必要です。   対応時間が長いと、相手のペースにはまる危険性が大きくなるため、可能な限り短くする。最初の段階で「何時から用事がありますので、それまでならお話を伺います。」等と告げて対応時間を明確に示す。  反社会的勢力は、厳しく糾弾してきます。不当な要求に対しては「当社の方針としてそのような要求には応じられません。」等と答え、隙を与えないことが肝要です。
 7 書類の作成・署名・押印はしない  8 トップには対応させない  9 即答や約束はしない
     
  反社会的勢力は、「一筆書けば許してやる。」等と詫び状や念書等を書かせたがりますが、後日金品要求の材料などに悪用します。また社会運動に名を借りて署名を集めることもありますので署名や押印は禁物です。  いきなりトップ等の決裁権を持つた者が対応すると、即答を迫られます。次回からの交渉で「前は社長が会つた。お前ではだめだ。社長を出せ。社長が会わない理由を言え。」等と言うのが常套句で、あらかじめ責任者を決めて対応する。  反社会的勢力の対応は、組織的に実施することが大切です。企業の方針の固まらない間が勝負の分かれ目と考えて、執拗にその場で回答を求めてくることから、相手の要求に対する即答や約束は禁物です。
 10 湯茶の接待は不要   11 対応内容の記録化  12 機を失せず警察に通報
     
  湯茶を出すことは、反社会的勢力が居り続けることを容認したことになりかねません。また、湯飲み茶碗等を投げつける等脅しの道具に使用されることがあります。接待は不要です。  電話や面談内容は、犯罪として検挙する場合や中止命令を発出する場合、或いは民事訴訟の証拠としても必要です。その場でメモ、録音、ビデオ撮影をするなど記録化に努めてください。   相手が脅したり暴れたりした場合は、直ちに警察に通報する。不要なトラブルを避け、受傷事故を防止するためには事が大きくなる前の早い段階で、警察や暴追センターに相談することです。