風衝地と高山荒原に咲く 高 山 の 植 物 (2−2)  (解説3)

12. チシマアマナ Lloydia serotina ( L .) Rchb.
                         ユリ科

 本州の中部地方以北、北海道から北半球の高山、寒地に広く分布する。属名はイギリスの発見者 E.. Lloyd を記念したもの。チシマアマナ属で、花が枯れても落ちないことでアマナ属と区別される。種小名は遅れて咲く、晩生のという意味。和名は千島列島のウルップ島で発見されて千島甘菜。
13.チシマギキョウCampanula chamissonis Al. Fedr.
                      キキョウ科

 本州の中部地方以北、北海道の高山帯で砂礫地、岩壁に生える。千島、サハリンからカムチャッカなど北太平洋地域、北米アラスカに広く分布する。種小名はドイツの分類学者シャミッソーへの献名。和名は最初の採集地の千島列島による。花冠の内側や裂片の縁に長い軟毛があるので、イワギキョウと容易に区別できる。白花品はシロバナチシマギキョウの名がある。

14. チョウノスケソウ  Dryas octopetala var.
        asiatica (Nakai) Nakai   バラ科

 本州の中部地方と北海道の高山帯の砂礫地や岩のすき間などに生える。属名はギリシャ神話の森の女神。転じてカシの木を指し、葉の形がカシに似ていることによる。種小名は8弁の花びらの数を表し、変種名はアジアのとあるように東北アジアに自生する。葉の幅が狭い基本種はヨーロッパや北米に分布している。和名は日本の植物標本をロシアのマキモウイッチーへ送り続けたプラントハンター、
                         【右へ続く】
15. ツクモグサ  Pulsatilla nipponica
        (Takeda) Ohwi    キンポウゲ科

 属名は花の形を鐘にたとえたもの。種小名のように日本固有種。 長野県絶滅危惧種  特別指定希少野生植物
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【左から続く】
この植物も日本で最初に採集した須川長之助を記念したもの。学名の命名者は中井猛之進。初め品種としたが後に変種に組み替えた。

16. トウヤクリンドウ  Gentiana algida Pall.
                         リンドウ科

 本州の中部山岳、北海道の大雪山系に生じ、アジア北部から北米西部に広く分布する。種小名は寒冷の地を好むという意味。和名は当薬りんどうで、センブリの別名をトウヤクといい、薬用にされることから。むかしから健胃剤や消化剤、駆虫薬などに使ったという。属名は Illyriaの王Gentius に由来している。クモイリンドウやエゾトウヤクリンドウは同種で別名の説と、花がやや大きいので品種とする説がある。
17. ミヤマアズマギク  Erigeron thunbergii
  subsp. glabratus  (A. Gray) H. Hara  キク科

 本州の中部地方以北、北海道の高山、もしくは蛇紋岩地帯などの超塩基性岩地に見られる。千島列島、カムチャッカ、サハリン、中国東北部、シベリアなど東アジアに分布する。属名は灰白毛におおわれて早く花が咲くという意味。種小名はスエーデンの植物学者チュンベリーへの献名。亜種名はほとんど毛がない。和名は深山東菊で、変異があって変種や品種がある。

18. ミヤマオダマキ  Aquilegia flabellata var.
      pumila (Huth.) Kudo   キンポウゲ科

 本州の中部地方から北海道の高山帯に自生し、さらにサハリンなど北へ分布している。属名は曲がった距がワシの爪に似ることから。種小名は扇状の、変種名は低いとか小さいを表している。命名者のKudoは、北方の植物を研究した工藤祐舜のこと。和名は深山に咲くオダマキ(花の形が麻糸を巻き取る苧手巻による)。園芸種のオダマキは本種を改良したものだという。
19. ミヤマシオガマ  Padicularis apodochila
              Maxim. ゴマノハグサ科

 本州の中部地方以北と北海道の日高山脈だけに分布する日本固有種。高山帯の風衝草原にわずか点在する。葉の切れ込みが羽状に全裂し、それぞれがさらに深裂して細かに分かれる。種小名は唇弁に柄がないという意味。白花品はシロバナミヤマシオガマ。和名は深山塩竃。 

20. ミヤマダイコンソウ Geum calthifolium var.
     nipponicum (F. Bolle) Ohwi    バラ科

 本州の中部地方以北、北海道、千島列島に分布する。奈良県大峰山と四国石鎚山にも隔離分布して確認されている。属名は美味。種小名はリュウキンカ属のような葉のという意味。和名は深山に生える大根草で、ミヤマダイコンソウ属 Acomastylis に独立させる説もある。
21. ミヤマムラサキ Eritrichium nipponicum
                 Makino  ムラサキ科

 本州の中部山岳と北海道だけに分布する日本固有種。1884年(明治17)に矢田部良吉と松村任三が戸隠山で発見し、基準標本となっている。砂礫地や岩場に生育する。属名は全草に白毛があることを表している。和名はムラサキに似て、深山に生えるから深山紫だという。より大形で変種とされたエゾルリムラサキが北海道やサハリンに分布する。

22. ムカゴトラノオ Bistorta vivipara ( L .) Dray
                           タデ科

 本州の中部地方以北、北海道、周北極地域に広く分布している。属名は根茎の形から二重にねじれた。種小名がむかごのつくとあるように、和名も花序にむかごをつくり、栄養繁殖をするむかご虎尾。トラの尾のように穂状に花をつける。
23. ムシトリスミレ Pinguicula vulgaris L .
                        タヌキモ科

 四国と本州の中部地方以北、北海道から北半球に広く分布する。葉の粘液で虫を捕らえて消化する食虫植物。信州では、おもに亜高山帯より上の湿った草原や岩上で見られる。和名はスミレに似た花が咲くので虫取すみれ。種小名は普通のという意味だがよくわからない。属名は葉の形状を表している。

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