本文へスキップ






平成28年度 研究概要 (第1部門)

H28-1-1
題  目 松本市北方の中新生中期別所層産魚類化石の研究
研究者 小池 伯一
概  要 1990年代に収集した魚類化石は、1200点以上に及びそれらの中で、総論として魚種の判明した魚類13科18属20科を大江・小池(1998)で発表しました。その後同時に産出した多彩な化石の研究発表に追われ、魚類化石全体の見直しと標本の保全が出来ませんでした。今年度はテンバコに雑然と入っているこれらの魚類化石標本を点検し、整理・整頓をする中で同じ体形・化石として残っている部位(頭部・尾部・ウロコ)等を集める事で、全体のボリュームをつかみ比較を可能にすることを目的としました。同時に標本の劣化(ひび割れ・変色等)を防ぐべき処置として、木工用ボンド等を使用して補強を行い、チャック付ビニール袋に入れ外気との遮断を図りました。同じ特徴を持った標本を集めたことによる成果として、例えばタイ形のウロコが意外に多いことや、 アジの体側にあるゼイゴ(ウロコ)を複数発見しました。今回整理・整頓をして分類出来た標本数は1185点です
H28-1-2
題  目 系外惑星および突発天体の観測研究とプラネタリウム番組制作へのフィードバック
研究者 齊藤 秀樹
概  要 長野市立博物館では、多くの来館者に向けて教育普及目的で使われることの多かった天体望遠鏡を用い、天文分野の研究および教育に活用することを検討している。これまで2013 年および2015 年に恒星の明るさが変わる変光星の観測研究を行い、比較的明るい天体に対しては、光度変化を十分観測できることが証明されている。変光星観測の歴史的な歩みの中に、1054 年に超新星爆発を起こしたとされる後のかに星雲がある。当時、昼間でもかなり明るくなったとされるこの超新星の記録が藤原定家の日記「明月記」および中国の文献「宋史」などに残っている。これらの文献から、ごく大雑把に1054 年の超新星の明るさの変化を再現した。1054 年7 月頃、夜中に突如として現れた光は、東の空おうし座あたりに見え、木星ほどの明るさだったという。その後、約1 年でしだいに暗くなった。最も明るい時で23 日間は昼間でも発見できるほど明るかったと記録されている。まさに金星のようだった。そして、約2 年後の1056 年4 月頃には見えなくなってしまったと記録されている。
H28-1-3
題  目 赤石山脈南部、赤石構造帯内で黒瀬川帯構成要素の検討
研究者 坂本 正夫
概  要 赤石山脈南部にある赤石構造帯で、日本列島の外帯に断続的に分布する黒瀬川帯の固有種のフズリナが2ヶ所で確認されたことを元にして、構造帯内の地質の再検討を行った。構造帯内には三波川帯のほか秩父帯、白亜紀層、新第三紀層それに花崗岩体があって複雑な分布をしている。これらの地質の内、どの部分が黒瀬川帯の構成要素に相当するかを検討した。検討するために、地質分布について現地調査や文献調査それに変成岩の変成年代の測定を行った。その結果、2ヶ所のフズリナを含む二畳紀後期の石灰岩体とそれに接する浅海性岩層とともに、三波川帯の一部の礫状砂岩などの地質体、それに二畳紀後期の花崗岩体、前期白亜紀浅海性層である水窪層を黒瀬川帯の構成要素とし、「八重河内レンズ岩体群」と命名した。また、水窪層と同年代で同岩相の戸台層、伊平層も黒瀬川帯に帰属させることにした。
H28-1-4
題  目 圭表による南中高度の観測から地球の公転軌道の離心率を求める
研究者 塩尻市立丘中学校 科学部天文班
概  要 スリットの作る太陽像の位置を観測する装置(圭表儀の一種)を自作して太陽の南中高度の観測を3年間継続して行い、観測結果から地球の軌道の離心率を0.0169 (現代天文学の値0.0167)と精度よく求めた。更に、江戸時代まで使われていた棒の影を利用して太陽の動きを観測する圭表儀 (横梁型)を自作し、これまで使ってきた装置と同時観測を行った。その結果、横梁型圭表儀も高い精度で観測することが可能であることが確かめられた。また、圭表儀から得られた影の長さを使って、江戸時代に用いられたと考えられる最も簡単な方法(祖沖之の法)により冬至の時刻を求めてみた。結果は、現代の暦と比べて数時間の誤差が出た。冬至(12月21日頃)と近日点通過日(1月5日頃) が異なる日であることから、影の長さの変化は冬至を挟んで対称にはならないためと考えられる。今後、祖沖之の法に改良を加えて、より精度よく冬至や夏至を求める方法を考えていきたい。
H28-1-5
題  目 長野・新潟県境付近における前・中期更新世の河川流路の変遷
研究者 清水 岩夫
概  要 大町市木崎湖西岸には,肉眼でも識別可能な月長石を含む木崎流紋岩が分布し,大町市東方の中山山地とその周辺にはいわゆる大峰型溶結凝灰岩が分布する。一方,長野・新潟県境付近には前期更新世の大川層や猿橋層が堆積しており,木崎流紋岩や大峰型溶結凝灰岩が礫として混入する。礫の混入状況を調べることによってその供給経路や時空変遷を明らかにすることが可能ではないかと考え,昨年に続き調査を進めてきた。その結果,大川層堆積の前半ではSE→NW方向の古流向が多く,千曲川東側山地からの供給があったこと,後半にはS→NやSW→NE方向の古流向が卓越し,大規模な網状流河川が発達していたことがわかった。また,上位の猿橋層堆積時には一貫してS→NやSW→NE方向の供給となり礫径も大きくなったこと,堆積の場は幅約5km,南南西から北北東方向へ細長く続く大規模な扇状地であったことなどが明らかになった。
H28-1-6
題  目 サラシナショウマの種内分化は繁殖特性の変化によって引き起こされた? 〜マイクロサテライトマーカーと花形態からのアプローチ
研究者 田路 翼
概  要 サラシナショウマには異なる生態を持ち、 遺伝的にも分化した3つの送粉型(タイプT、U、V)が存在する。タイプT・U・Vは標高別にすみ分け、送粉者がそれぞれマルハナバチ類・チョウ類・アブ類を中心とするなど、生育環境や送粉者に大きな違いがある。このことから、各タイプの繁殖にかかわる形質が分化していることが予測される。そこで各タイプを比較した結果、花の性表現が分化していた。基本的にタイプTは両性個体+雌個体、タイプUは両性個体+雄性両性個体、そしてタイプVは両性個体のみであった。また、種子DNAのSSR解析によって、各タイプの他殖率の推定を行った。その結果、タイプVは主に自殖を行っていることが分かった。また、タイプVは訪花頻度が低く、花サイズが小さかった。これは、自殖植物に一般的に見られる特徴である。以上の結果は、サラシナショウマ3送粉型の間で花の性表現と自殖・他殖といった繁殖様式が分化していることを示す。
H28-1-7
題  目 絶滅危惧種「アツモリソウ」の遺伝子解析に関する研究
研究者 長野県上伊那農業高等学校 バイテク班
概  要 本校バイテク班では絶滅危惧種アツモリソウの苗の培養に成功しているが、培養苗の植え戻しは許可されていない。 培養した苗と野生のアツモリソウが同一であることをDNA解析で示すことを目的として本研究を行った。アツモリソウの葉および培養中のプロトコームからミニスケールの簡易SDS法によりDNA 抽出を行った。DNA解析法としてRAPD(random amplified polymorphic DNA)法を用いたが、結果にスメアがみられ系統間の比較は困難であった。 このことから、抽出されたDNAの純度、RAPD法の反応条件の問題が考えられた。分光光度計等によるDNA量、純度の評価が困難であったため、植物ユニバーサルプライマーを用いたPCRで純度の評価を行った。 その結果、 抽出されたDNAはPCRに十分使用できる純度であると考えられた。このことから、来年度はRAPD法の詳細な条件検討を行い、アツモリソウ系統間のDNA解析を実施したい。
H28-1-8
題  目 チョウにとっての休眠とは?
研究者 松下 陽音
概  要 去年明らかにできなかったモンシロチョウが休眠する第2の条件を究明するとともに,チョウの種類によってちがう越冬の仕方や休眠に入る条件などを究明し,寒い冬をこすための休眠という状態がチョウにとってどういうことなのかを明らかにしたいと考え,この研究を始めた。「気温が30℃ある時は,休眠しない」がモンシロチョウの休眠に関する2つ目の条件だと分かった。つまり,気温が30℃あれば,いくら日照時間が短くても休眠しない。また,さなぎの状態なら,休眠中でも休眠中ではなく羽化に向かっている状態でもマイナス10℃の低温にたえることができるとわかった。つまり,チョウが休眠するのは,冬のきびしい寒さをたえるためだけではないと言える。休眠というのは,エサが少なく子孫を残すのに適していない冬の時期を,代謝を落としてなるべく動かずに,春多くの同じ種と出会う確率を高めるための賢い機能だと言える。
H28-1-9
題  目 日本語版SHOULDER PAIN AND DISABILITY INDEXの開発
研究者 三澤 加代子
概  要 肩関節疾患患者の日常生活動作の調査には、世界的にSPADIが用いられているが日本語に翻訳されていない。本研究の目的はSPADIを翻訳し、肩の痛みを有する患者において日本語版SPADI、Shoulder36 Version1.3(Sh36)、肩関節可動域、上肢筋力、指椎間距離および握力を評価し信頼性、妥当性および反応性を検証することとした。日本語版SPADIの信頼性は、内的整合性の指標のCronbachのα係数が疼痛0.987、障害0.994および合計0.994で、検査−再検査間のICCは疼痛0.987、障害0.995および合計0.995であった。基準関連妥当性はSPADIの疼痛においてSh36の日常生活動作(r=‐0.83)と負の相関を認め、SPADIの障害においては、Sh36の疼痛(r=‐0.75)と日常生活動作(r=‐0.82)で負の相関を認めた。また合計においても、Sh36の疼痛(r=‐0.81)と日常生活動作(r=‐0.94)の領域で負の相関を認めた。以上より、日本語版SPADIの再現性は良好で、SPADIは肩関節疾患に特異的なADL評価として有用である可能性が示された。今後は症例数を増やすとともに反応性について検討をすすめる。
H28-1-10
題  目 維持・緩和療法中のがん患者に対して低負荷の身体活動ががん関連症状、身体機能やQOLに及ぼす影響について
研究者 山鹿 隆義
概  要 がんの患者はがんそのものとがんの治療による影響により、身体活動の量的・質的低下と骨格筋の量が減少する傾向を認める。身体活動量は生命予後や生活の質に影響を与える因子であり、骨格筋量は活動能力に影響すると考えられている。しかし、高齢の進行がん患者の下肢の骨格筋量と立つ・座るなどの基本的動作能力、食事動作やトイレ動作などの日常生活動作能力(以下、ADL)や身体活動量との関連は明らかになっていない。そこで本研究では、入院してリハビリテーションを施行した65歳以上の進行がん患者40名で、これらの関連について加速度計と体組成計を用いて計測し、統計的に解析をした。結果は下肢骨格筋量と基本的動作能力、ADLや歩数とは有意な相関関係を認めなかった。このことから、下肢骨格筋量は身体活動の能力や量に必ずしも影響を与えるわけではなく、筋力などその他の因子が重要である可能性が示唆された。
H28-1-11
題  目 心疾患患者における身体機能の改善は心血管イベント発生率を低下させるか?
研究者 山本 周平
概  要 本研究では、心疾患患における身体機能の改善が心血管イベント発生率を低下させるか否かを明らかにする目的で、研究1)身体機能評価と心血管イベント発生の関係をメタアナリシスで検証し、その後、研究2)3ヵ月間の身体機能の変化と心血管イベント発生の関係を前向きコホート研究で検証した。研究1では、電子データーベースを使用して網羅的探索を行い、全3671論文のうち14論文(7309名)を解析対象とした。その結果、心疾患患者において6分間歩行試験(6MD)が最も使用頻度が高い評価ツールであり、6MD高値のハザード比(HR)の統合値は、冠動脈疾患患者で2.55 (95%信頼区間[CI]: 1.60-4.06)、心不全患者で2.09 (95%CI: 1.59-2.75、P<0.001)であった。また、1m増加毎のHR統合値は、冠動脈疾患患者で1.00 (95%CI: 0.98-0.99)、心不全患者で1.00 (95%CI: 0.98-0.99、P<0.001)であった。なお、冠動脈疾患患者の論文は各1論文しか抽出されなかった。この結果から、心不全患者において6MDは生命予後に強く影響することが示された。この研究1の結果を踏まえて、研究2では現在、心疾患患者の身体機能評価を実施してり、前向きに観察研究を遂行中である。

このページのトップに戻る 
   




過去の研究概要
(リンクしています。)